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17 1000年前と同じ… ー ラリー・トゥー・フェイブ ー (改)
しおりを挟む偽物の勇者を排除したというのに、なんてことだ………
「…………召喚の儀式をやめよ。」
「はっ、ははー! 皆のもの、ラリー殿下のご命令だ。儀式をやめよ。」
命令が下ると糸の切れた人形のように次々に神官達が床に倒れた。
「ラリー殿下、この後はいかがいたしましょう。」
行き場のない怒りで拳を固く握りしめて、地面に向かってつぶやいた。
「…選ばれし12人は………全員揃っている。」
「! ラリー殿下それは本当でございますか!!」
「選ばれし12人がいるのに魔法陣が反応しないという事は、神子がすでに召喚されているということだろう。」
「はっ!ではあの方が!!」
「…そうだ…」
わかっていた………だが認めたくなかった。
あれが神子などと思いたくはなかった。
神よ………まさか…本当にあれが神子だというのか?!
貴方は何という試練を私に与えるのだ!
あれが神子では密契の儀式をしたとしても、王位を授けては貰えないではないか。
「ラリー殿下。」
「!」
私に挨拶もなしに声をかけてきたのは、選ばれし12人の一人、大魔道士 エイプ・フリーレル。
魔法の才能に恵まれ若くして大魔道士の地位に上り詰めた、明るい黄緑色の髪の下級貴族。
本来なら私と口を聞くことも出来ない身分………この馴れ馴れしさ、勇者に選ばれてなければ首をはねているところだ。
「こちらにいらしたんですね。お探ししました。お話したいことがあります。」
「………何用だ。」
「今回の神子様の件、私なりに古い文献を調べましたら1000年前にも今回と同じように男の神子様が召喚された事例を見つけました。」
「なに!」
「もちろん、男の神子様の対処の方法もこの本に書いてあります。今の神子様は不完全な状態なので『聖なる乙女の儀式』を行えば、選ばれし12人の勇者と密契の儀式も出来て、王位を授けられるようになります。」
「何だと、それは本当なのか。その本をよこせ!」
パラパラとめくって読むが、言葉が古くてとても読みにくい。
なんとか読むと、確かに男が神子になっていると書いてある。
「素晴らしいことに男の神子様は普通の神子様より祝福の力が数倍強いとも書いてあります。私達はなんて幸せなんでしょうか。ラリー殿下、今夜『聖なる乙女の儀式』を行う許可を下さい。」
「今夜だと?駄目だ。神官達の魔力は新しい儀式を行うほど残っていないだろう。」
エイプ・フリーレルは祭壇の周りでぐったりしている神官達を眺めニッコリと笑った。
「確かに神官達は無理ですが、この儀式は私一人で執り行えます。」
「! お前一人で出来るだと?」
「ええ、私しか出来ないといった方が正しいでしょう。」
魔法に関してはこやつの右に出るものはいない。その自信たっぷりな顔が鼻につく。
「良いだろう。やってみせよ。」
「有難うございます。これからすぐに準備に取り掛かります。」
頭をさげると一陣の風が吹き、エイプ・フリーレルの姿は消えていた。
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