もう一つの物語 ー王様の命令は絶対っ!! 番外編ー

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第9話

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 女王にプライドをズタズタにされて、昼休みになってもそれを引きずっている。
 当然食欲なんか起きるわけもなく弁当箱を見つめたまま一人沈んでいた。
 麗矢から事情を聞いている髙橋と山崎は、かける言葉が見つからず口を開くがすぐに閉じる。

「リュー…元気出してあんなの気にすんなよ。」

「ああ、わかってる…………飲み物買って来る。」

 俺を気遣う友人たちを残して教室を出て、当て所なくふらふらと歩いていると人気のない渡り廊下にたどり着いた。
 大きなガラス窓からは校庭がよく見える。遊んでいる人達をただ眺めていた。

 人一倍ゲームの公平を望んでいたのにヒントが貰えなかったことで、こんなにがっかりした自分が情けない。
 その上みんなの前でバカにされて…何やってんだ俺は。

 情けない自分を戒めるかの様に窓に頭をぶつけ、そのまま固まった。

 昼休みももうすぐ終わる…そろそろ教室に戻らないと……

 ふわふわした柔らかい何かが体にぶつかり床に落ちる音がした。

「きゃっ」

 俺の足元にはボブカットの小柄な女の子とノートと教科書とペンケースが落ちていた。
 スマホでも見ていて俺にぶつかったんだろう。
 よく見ると彼女の上履きは三年生のカラーだ。
 ここは二年生のエリアだから三年がいるのは珍しい。
 俺の傍に落ちているノートを拾い彼女に渡しながら声をかけた。

「大丈夫ですか?」

「すみません。私、よく前を見ていなくて…」

 そう言いながら彼女は周りを素早く見回し、差し出したノートではなく俺の手首を掴んで引き寄せ座らせた。

「うわっ!」

「しっ!そのままでいいから聞いて」

 彼女は小声で俺を制した。

「伝言よ。『ヒントを有効に使いなさい。』」

「!……それって!」

「しっ!」

 俺たちの横をちらちら見ながら生徒が数人通る。

「ぶつかってごめんなさい。怪我はないかしら?」

「…はい」

 間違いない。これは女王からの伝言。
 彼女は素早く散らばった物を拾い集めて立ち上がった。

「じゃあね。」

「待って下さい。なんで?俺、そんなの何も聞いてない。」

「聞いているはずよ。私はちゃんと伝えたからね。」

「どうして俺に……」

「…多分、気に入ったからだと思うわ。貴方、あの人に似ているもの。」

 優しく微笑むと彼女は足早に三年のエリアの方へと消えていった。
 すぐに五時間目の予冷が鳴り、急いで教室に戻った。
 中間テストが近いのに頭の中は貰ったヒントの事ばかり考えていて、授業の内容なんかちっとも入ってこない。
 今朝のやり取りを思い出そうとするが、屈辱的にバカにされた事しか出て来ず、俺をイライラさせる。

『伝言』と言って伝えに来たあの先輩の言葉を信じていいのだろうか? 本当に彼女は女王の使いなのか?

 疑問だらけだが他にあてがないから、とりあえずヒントを貰っていると仮定して、あの短いやり取りの中での会話を思い出しながらノートに箇条書きにしていく。

「………………………」

 ノートを読めば読むほど馬鹿にされているだけでヒントなんて欠片も見えないからムカついてくる。

 有効に使えってそんなものがどこにあるんだ。
 何もな………

「そうか、わかったぞ!」

「まだ何も説明していないが、何が分かったんだ?渡辺。」

 先生の冷ややかな声で我に返る。

「すみません。間違えました。」

 くそっ、今度はクラス全員に俺は笑われてしまった。


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