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第11話
しおりを挟む渋々歩き出すと下の方から大きな音が鳴り響く。
『ぐううううう~~~~っ!』
「なに今の音。」
「俺の腹の音……」
クラウンゲームのことが気になって、寝坊したために朝飯を食べそこねたんだ。
「あはは、じゃあ軽く何か食べよっか。」
俺の手を引いて飲食を出店しているクラスまで連れて行ってくれた。
「俺、席を取りに行ってくる、ご飯買ったらプラカードの所に来てよ❤」
「わかった。」
俺は目の前で焦げたソースのいい香りを出している焼きそば屋に吸い寄せられる。まだオープンしたてで並んでいる客はおらず焼きたてをすぐに買えた。飲食店の前はフードコートのようになっていて、食べ物を購入した客が座って食べられるようにと机と椅子が置いてある。
だが、そこには麗矢の姿はなくピンクのプラカードだけがテーブルについている。
どうしたのかと見廻すと息を弾ませた麗矢が俺の好きな緑茶のペットボトルを二つ手に持って戻ってきた。
「おまたせ~~❤」
このお茶が売っているのは階下の自販機だけだ。
こういうさりげない気配りが出来るところが女子にモテるんだろうな。
軽く礼を言い、お茶代を渡すと早速焼きそばに箸を付けた。
麗矢ペットポトルを手の中で転がして遊んでいる。
「………ねー、リュー。」
「うん?」
「……なんで急にクラウンゲーム頑張ることにしたの?」
麗矢の言葉に驚いて焼きそばを喉に詰まらせそうになった。
「なっ!なんだよ。急に別にいいだろ。」
俺は慌ててお茶で焼きそばを流し込む。
「だって、襟章欲しいって言えば普通に貰えるじゃん。」
これだからモテる男は~~。
「あのな、お前は簡単に貰えるだろうけど俺みたいにモテない奴は普通は貰えないんだぞ。襟章なんて普段使っているものだしな。」
「ふ~ん、でもさ、なんで欲しいの?」
「え、襟章ってさ。心臓に一番近い所で三年間、その人の心臓の音を聞いていた物だろ?その人の分身みたいからさ。思い出に欲しいなって……」
我ながら女々しいと思うけど、本当にそう思った。
「そんなにその人の……」
「あー、麗矢だぁー❤美咲達も一緒していーい?」
大きな声で話しかけてきたのは麗矢の元取り巻きの女の子三人組だ。
隣の席から椅子を持ってきて当然のように麗矢の両脇に座り、4人用のテーブルは窮屈になった。
そんなことに構わず美咲は頬杖をついて私可愛いでしょ❤をアピールしている。
彼女が取り巻きをやっていた時にこのポーズを数え切れないほど見たことを思い出した。
「ここで何してるのぉ?」
どう見ても俺が焼きそばを食べて、二人でお茶しているところだろう。
「二人で休憩しているんだよ。」
「あー、そうなんだぁ。美咲ねぇ、麗矢の写真めっちゃ買ったよー♥」
「私も買ったわ」
「私も!一位になってね♥」
「うん、有難う。」
すると腕を絡ませてぎゅうぎゅうと麗矢の腕に胸を押し付けて
「だからさ♥CMなんて良いじゃない?ねーえ、このあと美咲達と一緒に回ろうよ❤」
その『一緒に回る』の中に俺は入ってないだろう。今までもそうだったからな。
この前の麗矢が好きな人がいると宣言してから離れていったはずなのに、いつまでも好きな子と付き合わないから誘惑しに来たというところか……
自分の気持ちを落ち着かせるために俺は周りに気付かれないように一つだけ深く呼吸をした。
そう言えばあの頃も良くムカムカしていたっけ、今思えば麗矢のことを好きだったからムカついていたんだな。
さっさとここから離れよう。
女の子とイチャついているの見たくなくて食べるスピードを上げた。
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