余白怪談

蒼琉璃

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第一話 お手玉

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 私の曽祖母は、大正生まれの人だった。
 士族のお嬢さまだったが、やがて菓子製造工場に勤める曽祖父とお見合い結婚をした。
 終戦後、陸軍中尉だった曽祖父は無事に帰国したものの、結核を患い若くして亡くなってしまう。
 未亡人となった曽祖母は、女手ひとりでタバコ屋を経営し、やがてアパートの大家となって四人の子供を育て上げた。
 私は、曽祖母から戦争の話を一度も聞いたことがない。
 だが、一度だけ怖くて切ない話を聞いたことがある。

「あるとき、空襲で隣の家に爆弾が落ちてね。忘れもしない、女学生のときから仲の良かった芙二子ふじこちゃんの家よ。芙二子ちゃんは逃げ遅れて、爆弾で右手を吹き飛ばされて死んじゃった。本当に悲しくてどうしようもなかった。あれはいつだったか、戦争が終わって仲の良い友達が家に集まったときさ」

 どういう話の流れだったのか、曽祖母は覚えていないようだが、座布団に座り、まるで女学生に戻ったようにお手玉をしていた。
 童心に帰ったように、その場にいた全員が楽しんでいたという。

「お手玉をしていると、目の端に姿がチラチラ見えるのよ。三つ編みをした女の子が、ぼんやりと柱の影からこちらをうかがっているのが分かった。ばぁちゃんは、その子が芙二子ちゃんだ――って思ったの。だから『芙二子ちゃん、そんな所に立ってないで、こっちにおいでなさいよ』と声をかけて、座布団を出してあげたんだよ」

 芙二子ちゃんはゆっくり頷くと、無表情のまま座布団まで音もなく歩み寄り、座った瞬間に消えてしまったという。

「もしかして、あんまり楽しそうにしているもんだから、芙二子ちゃんも一緒に遊びたくなったのかもしれないねぇ」

 もう鬼籍に入った曽祖母だが、今頃はあちらで、親友とお手玉に興じているのかもしれない。

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