【R18】月に叢雲、花に風。〜黄泉界編〜

蒼琉璃

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参、波乱の幕開け 茨の鳥籠―其の四―

 まさか、黄泉国から使者が来るとは予想だにしていなかった。あの雷が地表を這うような音を聞いてから、もしかすると冥界での出来事が、こちら側に悪影響を、与えているのかも知れないとは思った事はある。
 しかし、天魔界にあるどの文献を部下に調べさせても、いまだかつて、自発的に冥府の世界が開かれた事など一度もない。死者の魂が黄泉国へと向かう時にのみ、個々の魂によって扉が開くという認識だ。霧雨は重い溜息をついてとうとう頭を抱えてしまった。

「冥府に関する文献自体が少ない。天帝ならばその実態を知っておられるのか……藍雅っ、なんとしても我妻を取り返さねば」
 
 ドン、と霧雨は大理石の机を叩いた。
 普段は冷戦沈着で、物事に動じない霧雨も、幼馴染であり愛妃が人質に取られてしまっては、穏やかではいられない。それに八雷神と名乗った、冥界の美少年が霧雨に要求してきた事は、とんでもないものだった。

『――――失礼致します、第六天魔王様。客人をお連れ致しました』
「客人だと……?」
『何度か、お声掛けさせて貰ったのですが……』

 頭を抱えて考え込んでいた霧雨は、天魔兵の呼び掛けも聞こえず、部下が痺れを切らして、恐る恐る部屋に入って来た事にも全く気付かなかった。主の返事も聞かずに書斎に入るとは、よほどの事だ。
 申し訳なさそうに恭しく頭を垂れる天魔兵の隣には、かつての宿敵であった天界の安倍晴明が立っている。いまだ天魔の中には、天界の神々への憎悪を捨てきれない者もいるので、危険を感じ、文が届くとばかり思っていた。

「そなたは……これは驚いたな、安倍晴明か。自ら降りて来るとは」
「久しいな、霧雨。このように私が堂々と天魔城の門から入り、第六天魔王になったお主に、逢うとは思いもしなかった」
「それは我も同じ事だ。戦場ではなく、こうして天魔城で再会するとは。元より朔が不在の間代理をしていた。それが本職になったまでだ」

 運命とは分からないものだ。
 キョウの都に降り立ち、かつての第六天魔王の器だった朔を用いて、主人の復活を目論んでいた霧雨は、若菜達と敵対していた。
 そして安倍晴明は天界側の神であり、天魔界と敵対していたのだ。
 そんな彼が、今こうして自分を助ける為に訪ねて来ている。間違いなく晴明は、天帝となった朔の使者として来ているはずなのだ。
 かつての第六天魔王が天帝になった事を知っているのは、若菜と、晴明そして後に、二つの世界の均等を崩さないように、唯一信頼する霧雨と伴侶である藍雅に告げられた。ようやく彼はそれを今初めて実感出来た。
 
「本当に。そなたが天魔界に来られたという事は、天帝に我が天魔界の異変が知れたと言う事か。そちらの者、下がって良い」

 天魔兵は返事をすると、その場を後にする。晴明は尻目で兵士が去って行くのを確認すると視線を戻し、言葉を続けた。

「お主の文は天帝に届けられておる。藍雅殿が冥界に囚われてしまったとな。天帝も若菜も大変心配をしておられた。若菜も、自らこちらに降りて、自分も役に立ちたいと嘆いておったぞ。お主らの、結婚の時も立会いたがっていたが」
「そうか。あの娘は昔から優しすぎるからな。我々もお呼びしたかったが」

『神の繭』と呼ばれていた人間の頃から、慈愛の女神になった今でも、彼女は傲る事もなく、優しい性格のまま変わっていないようだ。
 若菜は変わらず遠く離れた友人達を心配し、手を差し伸べようとする。時としてそれが仇となる事もあるのだろうが。ふと彼女の事を思い出して懐かしくなり、霧雨は僅かに笑ったが、再び神妙な顔付きになる。

「それで、霧雨殿。どうして黄泉国の使者が天魔界へとやって来たのだ。何故、藍雅が囚われるような事になったのだ?」
「突然現れた黄泉国の使者が、我に要求してきた事は、到底飲めるような物ではなかった」
「どんな要求なのだ?」
「――――第六天魔王の座を、明け渡せと言う。黄泉国の長が使わす者を第六天魔王にするとな」

 思わぬ要求に、晴明は目を見開いた。死者の国の者が、天魔界を支配し属国にすると言うのか。天帝が思うよりも、こちらは大変な事が起こっているようだ。

「お主は、第六天魔王の玉座を明け渡す代わりに、人質を解放するとでも言われたのか? 何故、最愛の妻を差し出したのだ」
「我が軍は天界との戦で弱体化し、今だ立て直しが出来ておらん。冥界の使者の八雷神という者。神々と同じかそれ以上に力を持っているように見受けられた。我がそやつを仕留めても、その男の背後には、大勢の冥界の軍が率いている」

 天魔兵が、冥界軍に歯向かうには、まだ不十分だと言う事だったのだろうか。魔王として天魔界を護る為に苦渋の選択をしたのだろう。多くの天魔達の命を背負っている彼が、愛する妻の為とはいえ、軽率な決断は下せない。次にどんな手を使って来るのか、予想は出来ないが、戦略を練らなければならないだろう。
 ほとんど感情を表に表す事のない霧雨が、酷くやつれた様子でいるのは、間違いなく最愛の妃が、黄泉国へ連れて行かれたせいだろう。
 その苦悩が、晴明にひしひしと伝わる。

「天帝が自ら黄泉国に関わる事は出来ぬ。黄泉の世界が、均等を崩さぬ限りはな。だから私がこうして訪れたのだ」
「それは百も承知だ。ともかく、万策尽きてしまい、朔に助けを求めたのだ」
「黄泉国への扉は完全に閉じておるのか?」

 天魔界と人間が住む娑婆世界は、重い扉で塞がれている。それと同じように冥界と天魔界を繋ぐ境界線は地中深くあり、目視は出来ない。それが、八雷神が訪れてから、雷鳴が轟いていた場所、あの辺境の地に大きな真っ黒な穴が開いたという。
 恐らく、冥界と天魔を繋ぐ境界線なのだろうと言われた。偵察隊が降りたが、そのままいくら経っても彼らは、戻って来なかった。
 ともかく、被害を防ぐ為に天魔兵には、無闇やたらに近付かないようにと申し付けている。

「恐らく、境界線と思われるような巨大な穴は現れた。しかし偵察隊はいまだに戻らない。まさか、黄泉国へ向かうつもりか?」
「そのまさかだ。藍雅殿を私が連れて帰ろう。知っておるか? 天魔より早く死ぬ人間には、黄泉国の文献が伝わっておったのだ。黄泉国に取り込まれない方法、そして逃げる術もな」

 天帝の加護もある、と言う晴明の言葉を霧雨は頼もしく思ったものの、心配した。神々も含め、そこは生きている者が知らない世界だ。

「一度、天帝に話されてはどうか」
「我が君の手を煩わせるのは気が引ける。仮にも私は、陰陽師の神だ。それに死者に化ける事は造作もないのでな」

 あまり感情を表に出さない晴明だが、そう言うと口端で笑みを浮かべる。

 ✤✤✤

 冥界、冥府、黄泉国と呼ばれる死者の国は、人間の生活する世界や天魔の世界と、そうそう変わるものではない。地上や天国よりも薄暗く、天魔界の赤紫の空とは異なっていて、青白く空が光っている。寒々しく感じる色の中で、血のように赤い川が流れていた。
 死者達は、『自然の摂理』で転生するまで生者と変わらず生活を営んでいるが、善人ばかりが死の世界に訪れるわけではない。
 悪人はそれぞれが信じる地獄に行き、善人はそれぞれが信じる『死後の世界』へと分けられる。さらに冥府も天国の数だけ、それぞれの冥府があるのだ。

「つまんないなぁ。ほーんと、お前クソ雑魚メンタルじゃん。娑婆世界にんげんかいでは、魔少年とか言われてたんでしょ。たまにはさぁ、この八種様を楽しませたいって気になんないわけ。俺の話聞いてんの?」

 飴玉を舐めていた八種は、ガリガリと噛み砕くと、市松人形のように綺麗な黒髪を肩まで伸ばした美少年の腹を、勢い良く蹴った。
 蹴り上げられた事で、彼は口から胃液を吐き出す。八種は、光を失った目で見上げる隻眼の美少年の頭を、ブーツで踏み付ける。

「ぐっ……うっ、はぁっ……はぁ」
「八種様、また法眼を呼びましょうか」

 八種に声を掛けたのは、黄泉国にいる鬼の一人だった。醜女しこめ醜男しこおと呼ばれるような者達だが、彼らは元は人間の小悪党で、獄卒になった者共だ。
 いわゆる鬼の総称で、特別醜い者ではない。梅澤は赤髪の短い髪に、額から小さな角を生やし、黒の着物を身に着けた目付きの悪い男である。

「あーね。梅澤うめざわくん。法眼はさ、喜んで鬼蝶ちゃんの事をハメて拷問しちゃうから、楽しいんだけど、最後は四肢がバラバラになるまでぶっ壊すから、後始末が大変なんだって。ほーんとさぁ、裏切りの代償て怖いよねぇ?」
「…………」

 足を乗せていた八種は、顔を上げた鬼蝶の顎を掴むとニヤニヤと笑いながら見た。自分と同じ隻眼の美少年は、生前の鬼蝶と劣らず嗜虐的で、残酷な性格をしている。
 似た者同士だからこそ、鬼蝶には八種の考えが良く分かった。他人を拷問する事が何よりも楽しみなのだ。
 人間も妖魔も、種族関係なく死ねば、誰もが冥界入りをする。
 人間から天狗へと、変化した鬼蝶は黄泉国を通らず、鞍馬天狗という妖怪になった。
 蔵馬天狗の総大将であった鬼一法眼は、鬼蝶の恩人だ。鬼蝶は彼の小姓であり、愛人でもあった。その法眼を初めて出来た欲しい物の為に裏切り、殺したのが遠い昔のように思える。
 手に入れたい物の為にキョウの都を支配し、混乱させて、暴虐の限りを尽くして、挙句の果てには、地獄で拷問を受けているのだからお笑いだ。
 しかし、地獄に落ちたからといって、誰しもが拷問を受けるわけではない。ここは地上や善行を行った者が行く冥界とは、くらべものにならないくらいに治安が悪く、恐ろしいまでの弱肉強食の世界だ。
 大きな永久監獄の中で、頭の良い悪人だけが生き残る術を持つ。
 八種はどうやら、この黄泉国を納める者の息子だという。

「ふふ……裏切られるのは許し難いよねぇ……分かるなぁ。でも法眼様も僕を裏切ったじゃない。別に僕は構わないよぉ? 死ぬほど痛いけど、我慢すりゃあ復活出来るし。若菜が側に居ない方が辛いからぁ……僕の囚われの蝶がいない世界なんて、肥溜めだ」

 ゲラゲラと笑って、蝶の刺繍か施された眼帯を愛しそうに撫でた。機転が利く狡賢い鬼蝶ならば、この地獄でも頭角を現しただろうが、若菜が居ない世界に興味がない。幾度となく拷問され、狂気に染まったボロボロの姿で彼は八種を嘲笑う。
 法眼は昔のように、死者の国でゴロツキを纏め、気に入った男女を囲って自分を崇めるような組織を作っているようだが、もう彼には興味はない。
 
「うわ、きも……! まーた、始まった。興が削がれたわ。浄化♡」
「がぁぁあ!!」

 八種は、自分の両腕を抱きしめると体に纏う雷を鬼蝶に放ち、感電する様子を楽しむと牢屋を後にする。彼の肉体が燃え尽きても、明日にはまた元通りの美しい鬼蝶として復活するのだ。
 そんな玩具が、何百、何千と彼の城にはいて、全員の生い立ちから悪行、最期に至るまで覚えている。
 鼻歌交じりに長い廊下を歩く美少年は、ふと肩越しに妖艶な笑みを浮かべると、尋ねた。

「あのさぁ、梅澤くん。キミ、生前は鬼蝶が居た陰陽寮に居たんだよね? 鬼蝶がいう若菜ってどんな女だったのさ」
「西園寺若菜の事ですか? 異国の血を引いていて……」

 唯一の女性陰陽師見習い、南蛮の血を引く娘として陰陽寮に連れて来られた。南蛮人の混血である事と、女である事で、周りには冷遇されていたが、陰陽師としての実力は持っているようだった。
 弟とは腹違いなのか、全く似ても似つかない容姿で、勤勉家だった。素行の悪かった梅澤とは接点もほぼないような優等生。器量は悪くなかったし、性格も善人だったろう。
 小悪党の梅澤でも、若菜のような女が、残虐な鬼蝶を愛するとは思えない。
 妬まれた末に、彼女を乱暴するようにと頼まれたが、未遂に終わり、やがて若菜を殺す事を持ち掛けられて失敗した。梅澤の最期は、舎弟と共に若菜達に返り討ちにされ死ぬという、小悪党らしい最期だった。

「いいね、興奮してきたぁ。鬼蝶が恋い焦がれてる片思いの女を犯すのって最高に楽しいと思わない? 想像するだけで興奮しちゃうわ。今日はどの女とやろうかな」
「八種様、貴方様のお気に入りの女を数人用意しておきます」

 小悪党から、成り上がりの獄卒の長となった梅澤は、悪趣味な主人の背中を見て笑った。
 
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