22 / 36
伍、再会―其の弐―
須佐之男命が、八種と共に去っていくと、若菜の前に梅澤が立ちはだかった。
「梅澤先輩」
梅澤は獄卒の黒い着物を着こなし、陰陽寮に在籍して居た時よりも、一見更生しているようにも見える。
黄泉国で、獄卒長となった梅澤の短髪は、地獄の炎のように赤く後ろに流され、切れ長の黒い目は、ゾッとするほど冷たく若菜を見下ろしていた。
「西園寺、久し振りだなぁ? お前等には、散々な目に遭わされた」
「梅澤先輩、御免なさい。命を奪うつもりはなかったの。でも、まさか黄泉国で、獄卒になっていただなんて思わなかった」
「ぬるい考えだな、西園寺。んで、謝罪してこの俺に、許しを乞うつもりじゃねぇだろうな?」
命を狙われたのは若菜と朔で、戦うしかなかった。
けれど若菜は、相手に襲われたとしても他人の命を、進んで自らの手で奪う事を良しとしない。
特に慈愛の女神となってからは、朔と共に星と命を生み出す、特別な仕事を手伝うようになった。妖魔も天魔も人間も、ありとあらゆる命に、慈愛の手を差し伸べねばという気持ちになる。
「フン。馬鹿な女だ。存分に出世させて貰ったんでな。まさか、こんなに早く、お前が死んで黄泉の国に下るとは思わなかったが。ここに来てようやく、俺にも運がついてきたわ」
「………」
「お前の自慢の弟は帳簿には載っていないようだな。ふーん、あのクソ生意気な小僧、名は朔だったか? あいつは愛する義姉様を守れなかったようだな。光明のケツを舐めるしか能のない、軟弱な小姓だったよなぁ?」
「さ、朔ちゃんの事を悪く言うのはやめて下さい!」
若菜が、珍しく声を上げて抗議すると、梅澤はゲラゲラと笑った。
梅澤が右手を差し出すと、黒い煙と共に帳簿が現れ、それが意志を持っているかのようにパラパラと捲られる。
「さて、お前の罪状はなんだろう。行き先は、一般死者共が暮らす黄泉国か。それとも極悪人共が暮らす夜見城か。なるほどやはり……八種様の見立て通りだな!」
若菜は再び梅澤の鋭い視線から目を逸らした。彼女の脇では、死者達が黄泉醜女達によって、行き着く場所を分けられ、トボトボと歩いている。
パタンと帳簿を閉じると、梅澤は若菜の髪を掴み、顔を寄せた。
「きゃっ……!」
「お前の名前と生い立ちは記されているが、その罪状は空白だ。たまにこういう、普通でもなく、善人でも悪人でもない、中途半端に見放されたゴミ共が来るんだよ。そんなお前が何故、須佐之男命のお気に入りになっているのか教えて欲しいもんだな。全くただの人間風情が、どんな色を使ったのやら……?」
「い、痛いっ……よっ……梅澤先輩っ。か、神様の寵愛は気紛れだって聞いたよ。ただ神社でお参りをしていたら、須佐之男命様にお声を掛けられただけなのっ。どうしてなのかは、私にも分からないよっ」
咄嗟に出た嘘だが、暴君で気紛れな須佐之男命に、何故か一方的に見初められたのは本当の事だ。
「お前は、木花之佐久夜毘売命の寵愛も受けていると記されているが、女神の恩寵のみなら、迷わずこの場でお前の魂を八つ裂きにしていたのに」
冥府にとって、どれほどの神の寵愛を受けようとも、誰もが等しく訪れる死の輪廻の中では、その恩寵も印籠にはならず、意味をなさないのかもしれない。
伊邪那美に呼ばれた須佐之男命と共に、冥府を降りていなければ、怒り狂った梅澤に拷問をされていたかもしれないと思うと、若菜は青褪めた。
梅澤は、若菜の稲穂の髪から手を離すと、彼女の細い首に片手を掛ける。
このまま、首を絞められるのかと怯えていた若菜だが、温かい感触が蛇のように首に巻きついただけで終わり、梅澤の手がそっと離れる。
恐る恐る首元に視線を落とすと、愛玩動物のように赤い紐が、彼女の首に絡みついていた。
金の鈴がついた首輪だ。
まるで飼い犬や、飼い猫につけるような物をつけられ、困惑した若菜は梅澤の顔を探るように見る。
「梅澤先輩、これはなぁに? まるで猫の首輪みたいで……」
「須佐之男命が、冥帝であらせられる、伊邪那美様にお会いして、お前を回収しに来るかは知らねぇが、寿命の尽きた死者には変わりない。今日からお前は、夜見城の牢獄支給係だ。その首輪はその印。覚えておけ」
「夜見城の牢獄支給係?」
「何処に居ても、その鈴の音が無様に鳴り響く。せいぜい罪人共や獄卒共に罵られながら、下女として、休みなく食事や酒を運べ。ここにはやんごとなき天魔様も、客人としているんだからな。俺の顔に泥を塗らないように失礼のねぇようにしろ」
「天魔様……?」
神々を除き、生きている者の魂は天秤に乗せられ、行き着く場所を決められるという。
それによって、生活する場所や行動範囲を決められてしまうらしい。彼曰く、行き場所が記されていない空白の死者、中途半端な魂は獄卒の支配下に置かれる。
(私は正体を隠して、死を偽装しているから、そこが空白になっているのかな……? それとも女神だから記されていないのかな。ともかく、禍津日神様は約束を守ってくれたんだね)
悪人ではないが、善人でもないので、獄卒達に仕置きをされる事はないが、魂の行き場所がない彼等は、見放された者として、管理する者が必要になるのだろう。ある意味奴隷のような身分階級だと若菜は思った。
けれど、この待遇は若菜にとっては好都合なのかもしれない。梅澤が、先程口にしていた『やんごとなき天魔様』とは、おそらく藍雅の事だろう。
「そんな天魔が、この黄泉国に客人としているだなんて。あの、もしかして、神様も寿命が尽きるとこの場所に下るの?」
晴明があの場所を通れば、必ず出逢っているだろう彼の事を、一度も罵る様子もない梅澤に違和感があり、若菜は遠回しに尋ねてみる。最終的に、彼を死に至らしめた一手を撃ったのは晴明で、最も憎んでいるであろう相手の筈だ。
「さぁな? お前が知りてぇのは半神の安倍晴明の事だろう? 教える訳ねぇだろ、バーカ」
「っ……」
梅澤は若菜の眼前まで顔を近付け、嘲笑するように囁く。若菜が目を逸らし、怯えた様子を見せれば見せるほど、彼は喜んでしまうようだ。
少なくとも藍雅は、冥宮ではなく罪人達が下る、黄泉国の地獄の何処かに客人として監禁されているようだ。彼の言動からしても、客人として饗されている事は分かるが、黄泉国の食事を口にしているのかもしれないと思うと、心配で若菜は居ても立ってもいられなかった。
「梅澤先輩。それが私の仕事だというなら、頑張るよ」
「ハッ、返事だけは大層ご立派な事だ。あーー、そうそう西園寺、言い忘れていたが、その赤い首輪はな、お前が俺の専属の支給係という意味だ。獄卒長様という御主人様なんて誰もが羨む。俺の顔に泥を塗らないように、しっかりやりな」
梅澤がニヤニヤ笑うと、若菜の心にずっしりと重石が伸し掛かるようだった。梅澤は錫杖を鳴らすと、若菜の手首を掴んで夜見城へと向かう。
薄暗い白夜の下で、赤い紐の首輪はよく目立ち、深々とキョウの都に似た黄泉国の死者達は、頭を垂れた。夜見城へと続く入り口は、城下町になっている。
人間の死者、下等妖魔、下等天魔がいる場所のようで、先程の黄泉国より貧しい人々が、普通に生活をしているようだった。
不思議なのは、あれだけ敵対していた妖魔天魔が、人間と黄泉国ではお互い敵対せずにいる事だろう。下等妖魔と呼ばれる者達も、生気のない動物のように、ただそこを彷徨うだけの存在になっていて、無害のようだ。
若菜が動く度にチリン、チリンと響く鈴の音にも、彼等は反応しない。
「言っておくが、その首輪を外して逃げ出そうとすれば、ギリギリとお前の首を締め付けるぞ、西園寺。そんな事をすりゃあ、須佐之男命が、お前と認識出来ないほど俺に折檻されると覚えときな」
「は、はい……」
坂道はやがて地下へと続き、巨大な石垣の城壁が見えてくる。死者の嘆きの声が、低く響き渡ると若菜は背筋が寒くなった。何十という層が積み重なる城、これが夜見城と呼ばれる、地獄の牢獄なんだろうか。
ここで、現世で数え切れない悪事を働いた者達が閉じ込められ、獄卒達によって、責められながら罪を償っていると思うと、若菜は恐ろしくなってしまった。
✤✤✤
黄泉国で、極悪人が隔離されたこの城は夜見城と呼ばれており、最上階に君臨する城主は、先程の美少年、伊邪那美が産み落とした、八雷神の八種のようだった。
八百万の黄泉国は、夜見城、そして善人や、一般的な死者のみが生活をする黄泉国、その先にこの黄泉国を統治する、冥帝の伊邪那美が住む冥宮に続いていると教えられた。
若菜が識別されてしまった、見捨てられた者達の役割はこうだ。
罪人の中でも弱く、愚かで、罪の数だけ拷問の年季を開けるのを待つ者達、そんな彼等の為に拷問後の掃除、下の世話から食事を作り、配給という大変な仕事をこなす、小間使いだ。
「あの、梅澤先輩。普通に生活している罪人もいるの?」
「刑期を終え、次の転生の時まで居着く死者は、城下町に大勢いる。だが極悪人の中には、八種様に気に入られて、この城で自由に組織を作っている者もいるぞ。まぁ、八種様の玩具にされている者もいるが。俺みてぇにな。頭の良い悪人は、どんな世界に来ても生き抜く処世術があるんだよ」
獄卒達の監視下の元で、勝手に彼等に存在を位置づけられ、馬車馬のように働かされる事を思うと、見捨てられた魂と呼ばれる人達は、極悪人の償いよりも、大変な境遇かもしれない。
梅澤は、罪人から才能を見出され、獄卒を纏める頭にまで上り詰めた男だった。優遇措置としてかなり大きな個室を、八種から与えられている。
連れて来られた梅澤の私室は、キョウの都でもなかなかお目にかかれない立派な場所だった。
「今じゃ俺も、罪人共を看守し拷問のお勤め係だ」
黄金の屏風には、死者を責める獄卒の鬼が描かれている。若菜は陰陽師の時も接した事はないが、梅澤からはいわゆる藩の下部組織、極道と言われるような人間の雰囲気が漂っている。
悪人を看守するのは悪人である方が、良心の呵責に苛まれなくて済むのだろうか。
彼の部下も、下座に控えて正座をしているが、陰陽寮にいた舎弟ではない。
「西園寺、お前の服はこれだ。その気味の悪い南蛮の髪色に、その服を着ていれば、嫌でも俺の下女だと分かる。ギャンギャン泣いて、根を上げるのが楽しみだな。もたもたしてねぇでさっさと、ご主人様の前で着替えな!」
「こ、これを……着るの? こんな格好……恥ずかしいです」
上座で閻魔大王のように胡座を組み、煙管を蒸しながら梅澤は正座する若菜を、冷たく見下ろした。
目の前に置かれた着物は、襟と帯が赤く、黒い膝丈までの浴衣だった。問題はそれがレースのように透けており、臀部の付け根まで、そして前は若菜の下着が見られるほど、切れ目が入っている。
薄い黒の生地には艶やかな桃色、白、黄色の混じった華と蝶が描かれていて、下着はいやらしい黒の紐だ。大事な箇所は花弁を最低限隠せるくらいの、布地で覆われ赤面してしまう。
月読尊が泣いて喜びそうな透けたレースの黒の南蛮のタイツは、膝の甲まである。そして、赤い蝶々の髪留めまで丁寧に用意されていた。
「その格好で牢獄給仕をやれ。きっとお前は獄卒長に媚びて、股を開いている薄汚い給仕だと蔑まれるぞ。なんせ俺は、罪人共に恨まれているからなぁ。西園寺、俺に晩酌をする時は陰陽寮に居た時と同じ、巫女服に着替えろ。その方が無様さが際立つ」
梅澤は、ふぅと煙を吐き出した。
ともかく梅澤は、彼女の事を逆恨みしていて、若菜を辱めたいのだろう。格好はともかく、梅澤の機嫌を取りつつ藍雅の所まで辿り着き、晴明の居場所を探るのが若菜の目的なので、下手に逆らうのは得策ではない。
幸い、上下とも大事な部分はどちらも隠れているので、なんとかなりそうだ。
「は、はい」
「全裸になって回ってみろ」
これまで若菜は、とんでもない目に遭ってきたが、やはり最愛の二人の夫や、眷属以外の前で肌を晒すのは抵抗がある。巫女服の帯を取り、禍津日神から貰った鈴を大事に置く。
「さすが、あの光明を色を使って側近まで上り詰めた事はあるな。脱ぐ事に抵抗はねぇみたいだ」
「っ……そ、そんな事はないよっ。それにちゃんと陰陽師として私は……」
挑発に乗ってはいけないと思い直し、若菜は目を伏せたまま、するすると一糸纏わぬ姿になる。
性愛の女神の力を封じていても、その裸体は美しい。透き通るような肌に淡く桃色に色付く乳輪、なだらかな腰にふっくらとした太腿、そして幼子のような無毛の花弁を両腕で隠す仕草をすると、それだけで清らかで官能的に見える。
梅澤が、醜く恐ろしいと思っていた稲穂の髪も、陽のない黄泉国の元で金糸のように輝いている。
命の源、性愛の女神は原始の魅力に溢れていた。他者の精気を吸収すればするほど力は増し、彼女は望む望まないと限らず、魅惑的に美しく輝いてしまう。
先程まで、辟易するほど悪口を叩いていた梅澤だったが、煙管を持ったまま若菜に魅入っていた。
――――毛先から足の指まで、この女は美しい。
陰陽寮に在籍していた時は、南蛮の血を引く混血の女は、遊女と比べてどうせ締まりが悪いだろう、それとも光明がハマるほど、尻の穴の方は良いのか等と、仲間内で下品な会話をしていた。
それなのに、間近で見た若菜は言葉を失うほど美しく、何故か彼女を崇めたくなるような神々しさを感じた。若菜がいじらしく頬を染め、項垂れながら一回転をする様子まで、目が離せなかった。
まるで、品定めをされているようだと若菜は震えていたが、梅澤は黙ったまま一回転する彼女を見ると、ハッとして顔を赤くし正気を取り戻し、唇を噛む。
「っ……もういい。早くそれに着替えて、さっさと仕事を始めろ」
それに、全裸の若菜から香る、花のような淡い匂いに飲み込まれそうになった。そういえば、陰陽寮で若菜とすれ違った時、僅かに花の香りを感じたが、今感じたそれは比ではないほど濃厚な物だ。
あの時よりも強く、本能的に心惹かれるような危険な香り。
死んだ直後はあれほど憎々しげに若菜達の事を思っていたのに、その感情がズタズタに切り裂かれて、若菜に対して、妙な興味が沸いてしまう。
「梅澤先輩……?」
咳払いをする妙な態度の梅澤に、若菜は不思議そうに首を傾げたものの、慌てて用意された服に着替える。最後に鈴を帯びにつけ、用意された赤い蝶の髪飾りを着けた。
赤い鼻緒がついた黒い下駄に履き替えると、梅澤の部下の巨体の黄泉醜男がのっそりと立ち上がる。彼等は頭である梅澤よりも、鬼に近い格好をしていて、若菜について来るように言った。
梅澤は、若菜に動揺を気取られないように、いつもの如く煙管の灰を落とし、景気良くパンパンと手を叩く。
「さぁ、飯の時間だ。下女下男共、餌を運ぶ時間だぞ!」
梅澤の柏手と声は、夜見城の牢獄中に響き渡る。
若菜が彼等に連れて来られたのは大きな台所で、配給口の石段には凄まじい数の盆が並べられていた。盆の上には、大きな白い鉢が乗っていて、残飯のような食事が入っている。
黄泉国では、これが当たり前なのかもしれないが、その匂いといい見た目といい、食欲をそそるような物ではなかった。
「ちょっとあんた邪魔だよ、とっとと盆を取って配給しな!」
「あっ、すみません」
梅澤の部下は、若菜をここに誘導したきりで仕事の説明もなく、彼女を置いて、去ってしまった。
戸惑う若菜を急かすように、後ろからやって来た中年の女が盆を掠め取っていく。死者達は全員、服装は異なるものの、首輪の色や形で、同じ仲間として分類されているようだった。
「とりあえず、皆についていけばいいのかな」
若菜が立ち尽くしていると、不意にトントンと肩を叩かれた。驚いて振り向けばそこには、化粧をした長身の男性が立っていた。
「あんた、泰也様の新しい支給係? あらやだなーに、その格好。罪人恩赦で、性処理でもさせるつもりなのかしらねぇ?」
「ち、違いますっ……これは梅……獄卒長に命じられて配給係を」
「あら、そーなの? ともかくここで突っ立てても仕方ないわ。あんた、獄卒長の鵜飼なら、もっと上の極悪人の配給よ。アタシもそうだからついて来なさいよ」
蒼い首輪を身に着けた銀髪の男性はそう言うと、若菜にウィンクする。
「は、はい。ありがとうございます」
「アタシ、カグツチ。カグちゃんって呼んでね♡」
「梅澤先輩」
梅澤は獄卒の黒い着物を着こなし、陰陽寮に在籍して居た時よりも、一見更生しているようにも見える。
黄泉国で、獄卒長となった梅澤の短髪は、地獄の炎のように赤く後ろに流され、切れ長の黒い目は、ゾッとするほど冷たく若菜を見下ろしていた。
「西園寺、久し振りだなぁ? お前等には、散々な目に遭わされた」
「梅澤先輩、御免なさい。命を奪うつもりはなかったの。でも、まさか黄泉国で、獄卒になっていただなんて思わなかった」
「ぬるい考えだな、西園寺。んで、謝罪してこの俺に、許しを乞うつもりじゃねぇだろうな?」
命を狙われたのは若菜と朔で、戦うしかなかった。
けれど若菜は、相手に襲われたとしても他人の命を、進んで自らの手で奪う事を良しとしない。
特に慈愛の女神となってからは、朔と共に星と命を生み出す、特別な仕事を手伝うようになった。妖魔も天魔も人間も、ありとあらゆる命に、慈愛の手を差し伸べねばという気持ちになる。
「フン。馬鹿な女だ。存分に出世させて貰ったんでな。まさか、こんなに早く、お前が死んで黄泉の国に下るとは思わなかったが。ここに来てようやく、俺にも運がついてきたわ」
「………」
「お前の自慢の弟は帳簿には載っていないようだな。ふーん、あのクソ生意気な小僧、名は朔だったか? あいつは愛する義姉様を守れなかったようだな。光明のケツを舐めるしか能のない、軟弱な小姓だったよなぁ?」
「さ、朔ちゃんの事を悪く言うのはやめて下さい!」
若菜が、珍しく声を上げて抗議すると、梅澤はゲラゲラと笑った。
梅澤が右手を差し出すと、黒い煙と共に帳簿が現れ、それが意志を持っているかのようにパラパラと捲られる。
「さて、お前の罪状はなんだろう。行き先は、一般死者共が暮らす黄泉国か。それとも極悪人共が暮らす夜見城か。なるほどやはり……八種様の見立て通りだな!」
若菜は再び梅澤の鋭い視線から目を逸らした。彼女の脇では、死者達が黄泉醜女達によって、行き着く場所を分けられ、トボトボと歩いている。
パタンと帳簿を閉じると、梅澤は若菜の髪を掴み、顔を寄せた。
「きゃっ……!」
「お前の名前と生い立ちは記されているが、その罪状は空白だ。たまにこういう、普通でもなく、善人でも悪人でもない、中途半端に見放されたゴミ共が来るんだよ。そんなお前が何故、須佐之男命のお気に入りになっているのか教えて欲しいもんだな。全くただの人間風情が、どんな色を使ったのやら……?」
「い、痛いっ……よっ……梅澤先輩っ。か、神様の寵愛は気紛れだって聞いたよ。ただ神社でお参りをしていたら、須佐之男命様にお声を掛けられただけなのっ。どうしてなのかは、私にも分からないよっ」
咄嗟に出た嘘だが、暴君で気紛れな須佐之男命に、何故か一方的に見初められたのは本当の事だ。
「お前は、木花之佐久夜毘売命の寵愛も受けていると記されているが、女神の恩寵のみなら、迷わずこの場でお前の魂を八つ裂きにしていたのに」
冥府にとって、どれほどの神の寵愛を受けようとも、誰もが等しく訪れる死の輪廻の中では、その恩寵も印籠にはならず、意味をなさないのかもしれない。
伊邪那美に呼ばれた須佐之男命と共に、冥府を降りていなければ、怒り狂った梅澤に拷問をされていたかもしれないと思うと、若菜は青褪めた。
梅澤は、若菜の稲穂の髪から手を離すと、彼女の細い首に片手を掛ける。
このまま、首を絞められるのかと怯えていた若菜だが、温かい感触が蛇のように首に巻きついただけで終わり、梅澤の手がそっと離れる。
恐る恐る首元に視線を落とすと、愛玩動物のように赤い紐が、彼女の首に絡みついていた。
金の鈴がついた首輪だ。
まるで飼い犬や、飼い猫につけるような物をつけられ、困惑した若菜は梅澤の顔を探るように見る。
「梅澤先輩、これはなぁに? まるで猫の首輪みたいで……」
「須佐之男命が、冥帝であらせられる、伊邪那美様にお会いして、お前を回収しに来るかは知らねぇが、寿命の尽きた死者には変わりない。今日からお前は、夜見城の牢獄支給係だ。その首輪はその印。覚えておけ」
「夜見城の牢獄支給係?」
「何処に居ても、その鈴の音が無様に鳴り響く。せいぜい罪人共や獄卒共に罵られながら、下女として、休みなく食事や酒を運べ。ここにはやんごとなき天魔様も、客人としているんだからな。俺の顔に泥を塗らないように失礼のねぇようにしろ」
「天魔様……?」
神々を除き、生きている者の魂は天秤に乗せられ、行き着く場所を決められるという。
それによって、生活する場所や行動範囲を決められてしまうらしい。彼曰く、行き場所が記されていない空白の死者、中途半端な魂は獄卒の支配下に置かれる。
(私は正体を隠して、死を偽装しているから、そこが空白になっているのかな……? それとも女神だから記されていないのかな。ともかく、禍津日神様は約束を守ってくれたんだね)
悪人ではないが、善人でもないので、獄卒達に仕置きをされる事はないが、魂の行き場所がない彼等は、見放された者として、管理する者が必要になるのだろう。ある意味奴隷のような身分階級だと若菜は思った。
けれど、この待遇は若菜にとっては好都合なのかもしれない。梅澤が、先程口にしていた『やんごとなき天魔様』とは、おそらく藍雅の事だろう。
「そんな天魔が、この黄泉国に客人としているだなんて。あの、もしかして、神様も寿命が尽きるとこの場所に下るの?」
晴明があの場所を通れば、必ず出逢っているだろう彼の事を、一度も罵る様子もない梅澤に違和感があり、若菜は遠回しに尋ねてみる。最終的に、彼を死に至らしめた一手を撃ったのは晴明で、最も憎んでいるであろう相手の筈だ。
「さぁな? お前が知りてぇのは半神の安倍晴明の事だろう? 教える訳ねぇだろ、バーカ」
「っ……」
梅澤は若菜の眼前まで顔を近付け、嘲笑するように囁く。若菜が目を逸らし、怯えた様子を見せれば見せるほど、彼は喜んでしまうようだ。
少なくとも藍雅は、冥宮ではなく罪人達が下る、黄泉国の地獄の何処かに客人として監禁されているようだ。彼の言動からしても、客人として饗されている事は分かるが、黄泉国の食事を口にしているのかもしれないと思うと、心配で若菜は居ても立ってもいられなかった。
「梅澤先輩。それが私の仕事だというなら、頑張るよ」
「ハッ、返事だけは大層ご立派な事だ。あーー、そうそう西園寺、言い忘れていたが、その赤い首輪はな、お前が俺の専属の支給係という意味だ。獄卒長様という御主人様なんて誰もが羨む。俺の顔に泥を塗らないように、しっかりやりな」
梅澤がニヤニヤ笑うと、若菜の心にずっしりと重石が伸し掛かるようだった。梅澤は錫杖を鳴らすと、若菜の手首を掴んで夜見城へと向かう。
薄暗い白夜の下で、赤い紐の首輪はよく目立ち、深々とキョウの都に似た黄泉国の死者達は、頭を垂れた。夜見城へと続く入り口は、城下町になっている。
人間の死者、下等妖魔、下等天魔がいる場所のようで、先程の黄泉国より貧しい人々が、普通に生活をしているようだった。
不思議なのは、あれだけ敵対していた妖魔天魔が、人間と黄泉国ではお互い敵対せずにいる事だろう。下等妖魔と呼ばれる者達も、生気のない動物のように、ただそこを彷徨うだけの存在になっていて、無害のようだ。
若菜が動く度にチリン、チリンと響く鈴の音にも、彼等は反応しない。
「言っておくが、その首輪を外して逃げ出そうとすれば、ギリギリとお前の首を締め付けるぞ、西園寺。そんな事をすりゃあ、須佐之男命が、お前と認識出来ないほど俺に折檻されると覚えときな」
「は、はい……」
坂道はやがて地下へと続き、巨大な石垣の城壁が見えてくる。死者の嘆きの声が、低く響き渡ると若菜は背筋が寒くなった。何十という層が積み重なる城、これが夜見城と呼ばれる、地獄の牢獄なんだろうか。
ここで、現世で数え切れない悪事を働いた者達が閉じ込められ、獄卒達によって、責められながら罪を償っていると思うと、若菜は恐ろしくなってしまった。
✤✤✤
黄泉国で、極悪人が隔離されたこの城は夜見城と呼ばれており、最上階に君臨する城主は、先程の美少年、伊邪那美が産み落とした、八雷神の八種のようだった。
八百万の黄泉国は、夜見城、そして善人や、一般的な死者のみが生活をする黄泉国、その先にこの黄泉国を統治する、冥帝の伊邪那美が住む冥宮に続いていると教えられた。
若菜が識別されてしまった、見捨てられた者達の役割はこうだ。
罪人の中でも弱く、愚かで、罪の数だけ拷問の年季を開けるのを待つ者達、そんな彼等の為に拷問後の掃除、下の世話から食事を作り、配給という大変な仕事をこなす、小間使いだ。
「あの、梅澤先輩。普通に生活している罪人もいるの?」
「刑期を終え、次の転生の時まで居着く死者は、城下町に大勢いる。だが極悪人の中には、八種様に気に入られて、この城で自由に組織を作っている者もいるぞ。まぁ、八種様の玩具にされている者もいるが。俺みてぇにな。頭の良い悪人は、どんな世界に来ても生き抜く処世術があるんだよ」
獄卒達の監視下の元で、勝手に彼等に存在を位置づけられ、馬車馬のように働かされる事を思うと、見捨てられた魂と呼ばれる人達は、極悪人の償いよりも、大変な境遇かもしれない。
梅澤は、罪人から才能を見出され、獄卒を纏める頭にまで上り詰めた男だった。優遇措置としてかなり大きな個室を、八種から与えられている。
連れて来られた梅澤の私室は、キョウの都でもなかなかお目にかかれない立派な場所だった。
「今じゃ俺も、罪人共を看守し拷問のお勤め係だ」
黄金の屏風には、死者を責める獄卒の鬼が描かれている。若菜は陰陽師の時も接した事はないが、梅澤からはいわゆる藩の下部組織、極道と言われるような人間の雰囲気が漂っている。
悪人を看守するのは悪人である方が、良心の呵責に苛まれなくて済むのだろうか。
彼の部下も、下座に控えて正座をしているが、陰陽寮にいた舎弟ではない。
「西園寺、お前の服はこれだ。その気味の悪い南蛮の髪色に、その服を着ていれば、嫌でも俺の下女だと分かる。ギャンギャン泣いて、根を上げるのが楽しみだな。もたもたしてねぇでさっさと、ご主人様の前で着替えな!」
「こ、これを……着るの? こんな格好……恥ずかしいです」
上座で閻魔大王のように胡座を組み、煙管を蒸しながら梅澤は正座する若菜を、冷たく見下ろした。
目の前に置かれた着物は、襟と帯が赤く、黒い膝丈までの浴衣だった。問題はそれがレースのように透けており、臀部の付け根まで、そして前は若菜の下着が見られるほど、切れ目が入っている。
薄い黒の生地には艶やかな桃色、白、黄色の混じった華と蝶が描かれていて、下着はいやらしい黒の紐だ。大事な箇所は花弁を最低限隠せるくらいの、布地で覆われ赤面してしまう。
月読尊が泣いて喜びそうな透けたレースの黒の南蛮のタイツは、膝の甲まである。そして、赤い蝶々の髪留めまで丁寧に用意されていた。
「その格好で牢獄給仕をやれ。きっとお前は獄卒長に媚びて、股を開いている薄汚い給仕だと蔑まれるぞ。なんせ俺は、罪人共に恨まれているからなぁ。西園寺、俺に晩酌をする時は陰陽寮に居た時と同じ、巫女服に着替えろ。その方が無様さが際立つ」
梅澤は、ふぅと煙を吐き出した。
ともかく梅澤は、彼女の事を逆恨みしていて、若菜を辱めたいのだろう。格好はともかく、梅澤の機嫌を取りつつ藍雅の所まで辿り着き、晴明の居場所を探るのが若菜の目的なので、下手に逆らうのは得策ではない。
幸い、上下とも大事な部分はどちらも隠れているので、なんとかなりそうだ。
「は、はい」
「全裸になって回ってみろ」
これまで若菜は、とんでもない目に遭ってきたが、やはり最愛の二人の夫や、眷属以外の前で肌を晒すのは抵抗がある。巫女服の帯を取り、禍津日神から貰った鈴を大事に置く。
「さすが、あの光明を色を使って側近まで上り詰めた事はあるな。脱ぐ事に抵抗はねぇみたいだ」
「っ……そ、そんな事はないよっ。それにちゃんと陰陽師として私は……」
挑発に乗ってはいけないと思い直し、若菜は目を伏せたまま、するすると一糸纏わぬ姿になる。
性愛の女神の力を封じていても、その裸体は美しい。透き通るような肌に淡く桃色に色付く乳輪、なだらかな腰にふっくらとした太腿、そして幼子のような無毛の花弁を両腕で隠す仕草をすると、それだけで清らかで官能的に見える。
梅澤が、醜く恐ろしいと思っていた稲穂の髪も、陽のない黄泉国の元で金糸のように輝いている。
命の源、性愛の女神は原始の魅力に溢れていた。他者の精気を吸収すればするほど力は増し、彼女は望む望まないと限らず、魅惑的に美しく輝いてしまう。
先程まで、辟易するほど悪口を叩いていた梅澤だったが、煙管を持ったまま若菜に魅入っていた。
――――毛先から足の指まで、この女は美しい。
陰陽寮に在籍していた時は、南蛮の血を引く混血の女は、遊女と比べてどうせ締まりが悪いだろう、それとも光明がハマるほど、尻の穴の方は良いのか等と、仲間内で下品な会話をしていた。
それなのに、間近で見た若菜は言葉を失うほど美しく、何故か彼女を崇めたくなるような神々しさを感じた。若菜がいじらしく頬を染め、項垂れながら一回転をする様子まで、目が離せなかった。
まるで、品定めをされているようだと若菜は震えていたが、梅澤は黙ったまま一回転する彼女を見ると、ハッとして顔を赤くし正気を取り戻し、唇を噛む。
「っ……もういい。早くそれに着替えて、さっさと仕事を始めろ」
それに、全裸の若菜から香る、花のような淡い匂いに飲み込まれそうになった。そういえば、陰陽寮で若菜とすれ違った時、僅かに花の香りを感じたが、今感じたそれは比ではないほど濃厚な物だ。
あの時よりも強く、本能的に心惹かれるような危険な香り。
死んだ直後はあれほど憎々しげに若菜達の事を思っていたのに、その感情がズタズタに切り裂かれて、若菜に対して、妙な興味が沸いてしまう。
「梅澤先輩……?」
咳払いをする妙な態度の梅澤に、若菜は不思議そうに首を傾げたものの、慌てて用意された服に着替える。最後に鈴を帯びにつけ、用意された赤い蝶の髪飾りを着けた。
赤い鼻緒がついた黒い下駄に履き替えると、梅澤の部下の巨体の黄泉醜男がのっそりと立ち上がる。彼等は頭である梅澤よりも、鬼に近い格好をしていて、若菜について来るように言った。
梅澤は、若菜に動揺を気取られないように、いつもの如く煙管の灰を落とし、景気良くパンパンと手を叩く。
「さぁ、飯の時間だ。下女下男共、餌を運ぶ時間だぞ!」
梅澤の柏手と声は、夜見城の牢獄中に響き渡る。
若菜が彼等に連れて来られたのは大きな台所で、配給口の石段には凄まじい数の盆が並べられていた。盆の上には、大きな白い鉢が乗っていて、残飯のような食事が入っている。
黄泉国では、これが当たり前なのかもしれないが、その匂いといい見た目といい、食欲をそそるような物ではなかった。
「ちょっとあんた邪魔だよ、とっとと盆を取って配給しな!」
「あっ、すみません」
梅澤の部下は、若菜をここに誘導したきりで仕事の説明もなく、彼女を置いて、去ってしまった。
戸惑う若菜を急かすように、後ろからやって来た中年の女が盆を掠め取っていく。死者達は全員、服装は異なるものの、首輪の色や形で、同じ仲間として分類されているようだった。
「とりあえず、皆についていけばいいのかな」
若菜が立ち尽くしていると、不意にトントンと肩を叩かれた。驚いて振り向けばそこには、化粧をした長身の男性が立っていた。
「あんた、泰也様の新しい支給係? あらやだなーに、その格好。罪人恩赦で、性処理でもさせるつもりなのかしらねぇ?」
「ち、違いますっ……これは梅……獄卒長に命じられて配給係を」
「あら、そーなの? ともかくここで突っ立てても仕方ないわ。あんた、獄卒長の鵜飼なら、もっと上の極悪人の配給よ。アタシもそうだからついて来なさいよ」
蒼い首輪を身に着けた銀髪の男性はそう言うと、若菜にウィンクする。
「は、はい。ありがとうございます」
「アタシ、カグツチ。カグちゃんって呼んでね♡」
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。