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【白虎編】
魔物退治と朱雀帝①
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数日が経ち、鳴麗も西の國の生活習慣と与えられた仕事に慣れ初めてくると、それなりに女官達との距離も掴み、日常会話も少しずつ出来るようになってきた。
それでもどこか、女官達はよそよそしく自分の様子を伺っているような気がして、少し肩身が狭い思いをしている。
けれど、白虎に言わせれば『愛人の雌が、その辺をウロチョロと仕事を手伝うなんて、今まで無い事なんだから戸惑うだろう』と笑われたので、鳴麗も納得した。
「お前は、本当に勉強熱心だな。昼寝の時間くらい俺と一緒に寝れば良いだろう」
「私は夜ぐっすりなので大丈夫です。それに白虎様は、私の膝で寝るのが好きだからその間は動けないし、ここぞとばかり勉強できますので楽しいです!」
白虎は忙しい午前の仕事を終え、昼食を皆と取ると決まって、包子を食べたあの東屋で一時間ほど鳴麗の膝を借りて、仮眠するのが最近の日課になっていた。
その間、鳴麗は西の國についての本を読んだり勉学に励んだりして過ごしていた。
膝の上に頭を乗せる白虎の尻尾がゆらゆらと揺れると、その返答に微笑した。
鳴麗は素直で無意味な嘘は付かない。だからと言って、誰かを傷つけるような無神経な言葉を放つような愚か者でもなく、思いやりがある。
「――――お前の膝は安心できる。それに、下から百面相をするお前の顔を眺めるのは傑作だぞ、鳴麗。見ているうちに眠くなるからな」
「あのー、それって褒められてるのか、けなされてるのか分からないです」
鳴麗はプクッと頬を桃饅頭のように膨らませる。その様子も愛らしく、白虎がふと起き上がって膨らんだ頬を掴むと口付けようとした。
端正な白虎の美しい泉のような薄い蒼の瞳と形の良い唇が重なりそうになり、鳴麗の耳がピンと上がり真っ赤になると、アワアワと体が硬直する。
「だ、だめ、白虎様……く、口付けされたらお昼間から『発情』しちゃいますからっっ! とっっっても困りますっ」
「構わん、お前は俺の愛人だ。お前が『月の印』で体が疼いたら、俺が抱き上げて部屋に連れて行き、いくらでも責任を取るぞ」
「えっ、ええっ~~! で、ででででも、お勤めがっっ!!!!」
それに明るいうちから交尾するのは恥ずかしすぎるし、まだ白虎帝にはやらなければならない政務が沢山ある。思わず昼間から『交尾』と大声で口に出しそうになって真っ赤になると、ふと白虎の背後に気配を感じ、その人物に鳴麗は目を丸くした。
「――――白虎帝。昼間からお盛んな事だな。昨日、西の國に向かうと美杏に伝えておいたのだか」
そこには、炎のような真紅の髪を1つに括り美しい火の鳥の模様が描かれた鎧を着た長身の女傑が立っていた。美しく気高い、四聖獣の紅一点で武道に長けた彼女は、数多の霊獣の雌達の憧れでもある。
――――朱雀帝君陵光。
その後方には、何故か蘭玲と翠花が拱手しながら頭を深々と下げている。白虎帝は溜息を付くと、肩越しに元恋人である朱雀帝を一瞥した。
「――――美杏からの知らせは受けている。鳴麗の膝が心地よく、時間を忘れていたようだ」
欠伸をして気怠そうに起き上がる白虎を見ると、朱雀は思わず眉間にシワを寄せる。突然の誉れ高き訪問者に、鳴麗は尻尾をピンと緊張したように立て、慌てて拱手すると頭を下げた。
以前、酔っ払って彼女と対面した事があるが鳴麗は、その時の記憶も曖昧ではっきりと覚えていない。
「お前が新しい白虎帝の愛人だな。玄天上帝は何をお考えなのか……、それにしても黒龍族の雌にしては、体が小さく弱々しい。
白虎の背中を支えるにはあまりにも非力な雌だな。他の愛人に構わず、お前を目に掛けているそうだが、その物珍しさゆえか?」
炎のような紅い瞳で冷たく見下され、突然敵意を向き出しにされたような皮肉を言われると、鳴麗はショックのあまり、耳がしなるのを感じた。少なくとも他の雌と同じく鳴麗にとっても、朱雀は戦場を駆け抜ける憧れの女性であるのに、胸がズキズキと痛んで体が強張る。
後方の蘭玲と翠花がクスクスと声を殺して笑っているに気が付くと、さらに悲しくなった。
「――――やめろ。下らん戯言を言うなら帰れ」
「短気な男はつまらんな。そうはいかない、今日は個人的な用事で来たわけでは無い。狼族も私をもてなすために待っている」
白虎が睨みつけるが、朱雀は鼻で笑うだけで動揺する事も無かった。白虎は舌打ちすると鳴麗を気にするようにして東屋を二人で出ていった。
朱雀と白虎を見送るようにしていた蘭玲と翠花がちらりと鳴麗を振り向く。
「あーあ、朱雀帝様に目を付けられたらここじゃ生きていけませんわよ。あの方の逆鱗に触れないように、白虎帝様に愛でて貰いませんと」
「立場をわきまえ無いのは愚かな証拠ですわね。女官と共に働けば、白虎帝様の目を引けると思ったのかしら。黒龍族の雌は油断ならないとここの國の霊獣達は言うけれど……どうかしら? ともかく三番目は三番目らしく大人しくしていらして。掟に従えない雌なんて白虎様は直ぐに飽きてしまわれるわよ」
クスクス笑いながら二人が、去っていくと言い返せなかった鳴麗はキュッと唇を噛んで涙が溢れるのを感じた。
初めて誰かに悪意を向けられたショックと、なぜ、好きな白虎様の側にいるために、なぜ無関係な朱雀帝のご機嫌を伺わなければいけないのかという怒り、國のために働くのは彼の気を引くためではないという思いが交差して、ぐちゃぐちゃになっていた。
そして、直ぐに飽きられると言う言葉が鳴麗の心を抉って不安にさせた。
鳴麗はズビビと鼻をすすると両手に拳を作る。
「今日の午後はお部屋のお掃除します!!」
悩んだり、イライラした時はお部屋の掃除をするという事を幼獣の時からしていた鳴麗は涙を拭くと尻尾を振り回しながら、ズンズンと部屋に戻った。
それでもどこか、女官達はよそよそしく自分の様子を伺っているような気がして、少し肩身が狭い思いをしている。
けれど、白虎に言わせれば『愛人の雌が、その辺をウロチョロと仕事を手伝うなんて、今まで無い事なんだから戸惑うだろう』と笑われたので、鳴麗も納得した。
「お前は、本当に勉強熱心だな。昼寝の時間くらい俺と一緒に寝れば良いだろう」
「私は夜ぐっすりなので大丈夫です。それに白虎様は、私の膝で寝るのが好きだからその間は動けないし、ここぞとばかり勉強できますので楽しいです!」
白虎は忙しい午前の仕事を終え、昼食を皆と取ると決まって、包子を食べたあの東屋で一時間ほど鳴麗の膝を借りて、仮眠するのが最近の日課になっていた。
その間、鳴麗は西の國についての本を読んだり勉学に励んだりして過ごしていた。
膝の上に頭を乗せる白虎の尻尾がゆらゆらと揺れると、その返答に微笑した。
鳴麗は素直で無意味な嘘は付かない。だからと言って、誰かを傷つけるような無神経な言葉を放つような愚か者でもなく、思いやりがある。
「――――お前の膝は安心できる。それに、下から百面相をするお前の顔を眺めるのは傑作だぞ、鳴麗。見ているうちに眠くなるからな」
「あのー、それって褒められてるのか、けなされてるのか分からないです」
鳴麗はプクッと頬を桃饅頭のように膨らませる。その様子も愛らしく、白虎がふと起き上がって膨らんだ頬を掴むと口付けようとした。
端正な白虎の美しい泉のような薄い蒼の瞳と形の良い唇が重なりそうになり、鳴麗の耳がピンと上がり真っ赤になると、アワアワと体が硬直する。
「だ、だめ、白虎様……く、口付けされたらお昼間から『発情』しちゃいますからっっ! とっっっても困りますっ」
「構わん、お前は俺の愛人だ。お前が『月の印』で体が疼いたら、俺が抱き上げて部屋に連れて行き、いくらでも責任を取るぞ」
「えっ、ええっ~~! で、ででででも、お勤めがっっ!!!!」
それに明るいうちから交尾するのは恥ずかしすぎるし、まだ白虎帝にはやらなければならない政務が沢山ある。思わず昼間から『交尾』と大声で口に出しそうになって真っ赤になると、ふと白虎の背後に気配を感じ、その人物に鳴麗は目を丸くした。
「――――白虎帝。昼間からお盛んな事だな。昨日、西の國に向かうと美杏に伝えておいたのだか」
そこには、炎のような真紅の髪を1つに括り美しい火の鳥の模様が描かれた鎧を着た長身の女傑が立っていた。美しく気高い、四聖獣の紅一点で武道に長けた彼女は、数多の霊獣の雌達の憧れでもある。
――――朱雀帝君陵光。
その後方には、何故か蘭玲と翠花が拱手しながら頭を深々と下げている。白虎帝は溜息を付くと、肩越しに元恋人である朱雀帝を一瞥した。
「――――美杏からの知らせは受けている。鳴麗の膝が心地よく、時間を忘れていたようだ」
欠伸をして気怠そうに起き上がる白虎を見ると、朱雀は思わず眉間にシワを寄せる。突然の誉れ高き訪問者に、鳴麗は尻尾をピンと緊張したように立て、慌てて拱手すると頭を下げた。
以前、酔っ払って彼女と対面した事があるが鳴麗は、その時の記憶も曖昧ではっきりと覚えていない。
「お前が新しい白虎帝の愛人だな。玄天上帝は何をお考えなのか……、それにしても黒龍族の雌にしては、体が小さく弱々しい。
白虎の背中を支えるにはあまりにも非力な雌だな。他の愛人に構わず、お前を目に掛けているそうだが、その物珍しさゆえか?」
炎のような紅い瞳で冷たく見下され、突然敵意を向き出しにされたような皮肉を言われると、鳴麗はショックのあまり、耳がしなるのを感じた。少なくとも他の雌と同じく鳴麗にとっても、朱雀は戦場を駆け抜ける憧れの女性であるのに、胸がズキズキと痛んで体が強張る。
後方の蘭玲と翠花がクスクスと声を殺して笑っているに気が付くと、さらに悲しくなった。
「――――やめろ。下らん戯言を言うなら帰れ」
「短気な男はつまらんな。そうはいかない、今日は個人的な用事で来たわけでは無い。狼族も私をもてなすために待っている」
白虎が睨みつけるが、朱雀は鼻で笑うだけで動揺する事も無かった。白虎は舌打ちすると鳴麗を気にするようにして東屋を二人で出ていった。
朱雀と白虎を見送るようにしていた蘭玲と翠花がちらりと鳴麗を振り向く。
「あーあ、朱雀帝様に目を付けられたらここじゃ生きていけませんわよ。あの方の逆鱗に触れないように、白虎帝様に愛でて貰いませんと」
「立場をわきまえ無いのは愚かな証拠ですわね。女官と共に働けば、白虎帝様の目を引けると思ったのかしら。黒龍族の雌は油断ならないとここの國の霊獣達は言うけれど……どうかしら? ともかく三番目は三番目らしく大人しくしていらして。掟に従えない雌なんて白虎様は直ぐに飽きてしまわれるわよ」
クスクス笑いながら二人が、去っていくと言い返せなかった鳴麗はキュッと唇を噛んで涙が溢れるのを感じた。
初めて誰かに悪意を向けられたショックと、なぜ、好きな白虎様の側にいるために、なぜ無関係な朱雀帝のご機嫌を伺わなければいけないのかという怒り、國のために働くのは彼の気を引くためではないという思いが交差して、ぐちゃぐちゃになっていた。
そして、直ぐに飽きられると言う言葉が鳴麗の心を抉って不安にさせた。
鳴麗はズビビと鼻をすすると両手に拳を作る。
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