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しおりを挟む「フローレス!ちょっと待って頂戴。この服買ったのは良いけれど動きにくいわ」
「だから言っただろう、ソフィア。ここのリボンとここのフリルをつけるなんてデザイナーのセンスが悪いって……」
そう言ってフローレス_私の護衛である_がかわいげな少女を表すためのリボンを持っているナイフでプツリと切ってしまう。
「そこ切ったら、この服の意味がないでしょ!もう、元の服と変わらなくなっちゃった」
そう言って恨めしそうに切り取られたリボンを見る。めんどくさそうにため息を吐かれたが正しい反応だと思うんだけど。
「新しい町に行ってから考えればいい……いくぞ姫様」
姫様__そう言われ自分が次の町へと向かわないといけないことを再確認させられる。
「そうね、新しい服には出会えるから……足早に向かおう」
__『水の都・sea candy』
水の都sea candy_シーキャンディ_は名の通りというのか。
ソウル_魔力の総称_で浮いているのかキャンディのように丸まった美しい水がそこらを漂っており、触れても割れることは無くふよふよと浮き続けているようだ。
この町全体に漂っているので地から出ているソウルで維持をしているのだとわかる。
この町はなかなかソウルが強いようだ。
「この町はすごいわねえ、町全体にソウルがみなぎってる!栄えてるのも納得だわ」
「確かに。この町の王様にご挨拶する前に少しくらい街を見て回ってもいいかもな」
そういってフローレスは財布の中身を確認して少しのコインを取り出した。
「ま、使えるのはこれくらいかな」
「え!それだけじゃあ服は買えないんじゃ……」
「リボンをちぎっただけなんだから裁縫道具を買って縫い付ければいい。もっと適正な場所につけてやる」
「確かに…じゃあ裁縫屋さん?あ、布屋さん…?」
「いいや、ジュエリー屋がいい。上質で丈夫な糸はジュエリー屋のアクセビーズの糸がいいんだ」
「そ、そうなんだ……全く分からないからフローレスに任せるわ」
そういうとフローレスは足をすすめる。初めてきた町だから分からないと思うのだけど、場所がわかるのだろうか。そう思いついてゆく。
__が着いたのは食事のできる場所。ジャンキーな食事が並ぶ店である。結構入り組んだところにあったが程よい油の香りが漂っていたので探すのには時間がかからなかった。
「お腹空いてたの?」
「当たり前だろ、この前食べたジャーキーごときで腹が膨れると思うな」
ああ、あの時のことを根に持たれているのはとても分かった。
__というのもつい先日のことで、町も動物も微塵も見つからず、とりあえず持っていた非常食のジャーキーを食べさせてあげたのだがしょっぱすぎて不服そうであった。
しょっぱくして水分をたくさん取らせる作戦なんだと思うよ。っとフォローしたがずっと顔は眉が寄ったままだった。相当美味しくなかったらしい。
__ジャンキーな食事を見るフローレスは楽しそうだ。あまり城では見れないものばかりだから興味深いのかも。
そろそろ私たちの番になり、小柄だが朗らかそうな店員に注文しようと「この店の勧めを…」とフローレスが発したところで大柄な男に邪魔をされる、
といっても縦横大きいだけで、見た目だけならばフローレスより頼りなさそうだが…
「待て待て、誰の許可を得て営業してるんだ。まだ支払いを済ませてないんだから営業しちゃいけないだろ?子どもじゃないんだからさあ……分かるよな。早くしな」
「い、いえだから……支払うためには営業しないとお金が無いと何回言えばいいんだ……」
うーん、あまり良い状況ではなさそうだ。いざこざが分かりやすすぎる問題である。
どうにか手助けをしたいがここはお店の中で、他のお客さんがいるからどうにか店の外へ連れていきたいところではあるのだが……
と、思っていると大柄な男の肩に手が添えられる。よく見るとその手の出所はフローレスだ。
顔を見ると怒っているのか目が死んでいる。それはもう、新鮮でなくなってしまった魚のように…問題は起こさないで!お願い!と思うがその思いもむなしくフローレスはナイフを取り出して大柄な男に対して殺意を剥きだしていた。
順番を抜かれたことに怒ってるのか食べたいお店がで食べられなくなるからか、はたまた人助けか…
「順番を抜かして注文しようとするな!後ろにも並んでるだろ!刺すぞ!」
そっちか!といつもと変わらないフローレスに安心しながらいや、そっちか!という気持ちの何回も繰り返しで拍子抜けする。気が付いた時には大柄な男はひいひい言いながら逃げていた。一緒にフローレスの言葉に怯えたお客さんも。
追っ払ったのは良いけど、注意しなければ!と思い話しかける。
「フローレス!お店の中でナイフを抜いちゃだめよ。せめて外でにしないと」
「アイツが悪い!俺が注文しようとした瞬間なんて余計立ち悪い。俺は腹が減ったからこの店に来たんだぞ!抜かされるためじゃあない」
とぷんぷん怒っている。この前のジャーキー、それほど嫌だったのかと反省した。もうあのジャーキーは私のおやつで食べきっておこう……
「ごめんよ、旅のお方……面倒な奴から助けてもらっちゃってさ」
「ああ、いや順番を抜かすのが悪いんだ。こちらこそ他に並んでいた客を追い払ってしまってすまない。先ほど並んでいた客分は払おう」
「いいよ!貴方は店の恩人さ。食べたいのを頼んでくれよ、正直このまま店を続けられる自信もないからさ…食材を使い切っておきたいんだ」
「……それはさっきの男のせいか?なら今から追いかけて痛い目を見させてやってもいい。この店は人気店のようだったからな、あんな男のせいでつぶれたら客も悲しむだろう?」
朗らかな店員__もとい店主は笑顔ながらも悲しそうな顔で詳細を話してくれる。
「……そう簡単な問題でもないんだよ、お客さんは旅のお方のようだから知らないとは思うんだけれどね。この町では出店していると_ガーゴイルという女_に高額な出店料を払わないと店の運営ができないんだ」
「あら、じゃあさっきの男はそのガーゴイルという女の手下?どう見ても女性ではなかったモノね」
「そんな迷惑なルールがあるのか?王はどう見ているんだ」
「王は黙認だよ。たしかガーゴイルが裏世界からの者で、まあまあ顔が広いらしい。その顔の広さを生かしてこの町を、裏世界から守ってもらっているとか……いう噂だけれど真偽は分からないね」
_裏世界。魔物が生まれる原因だと言われている所か。そこの場所出身となると確かに一筋縄では行かなそうだ。
「うーん、それだったら王様に直接聞いた方が早そうね。お食事いただいたら行きましょうか」
そういうと店主は目を真ん丸にさせる。なにか気まずいことでも言っただろうか。
「王様に挨拶なんて出来やしないよ。一般市民とは時間が合わないといつも断られるんだから。旅のお方なら余計さ」
「あら、王様ってそういう方だったかしら、余計お話ししなきゃいけないわ。大丈夫よ、私たちを無下にはできないはずだからね」
そう言ってにこりを笑うと店主は不思議そうな顔をしたが、フローレスが「あ!この店のおすすめを頼む。たくさん!」と元気よく注文すると笑顔で食事を作りに行ってくれた。お勧めでフローレスの食べれない辛いものが出てきたらどうするつもりなのだろう。
____城へ
_先ほどの店で腹ごしらえをした。美味な食事に満足したフローレスと私は城へと向かっう。
城の門の前には二人の護衛だけのようだ。どちらかと話をつければ大丈夫かな。
「こんにちは、私たちシュガーレスに会いたいのだけれど…」
そう話しかけると鼻で笑われる。この城の品性がわかるな、こりゃ。
「一般市民がシュガーレス王と話そうなんて身分が高いぞ。王家の者は皆忙しいんだ。さっさと帰りな」
そう一人が言うと二人がゲラゲラと笑った。見た目がみすぼらしいように見えるのだろうか…リボンをとったままだからか…?
「一般市民なんて何を言ってるんだか。この城の物は人を見る目がないものばかりなのか?いや、人を見る気が無いのか。仕方がない奴らめ」
そうフローレスが発すると手に持っている槍をこちらに向けてきた。面倒な事になる前にしずめなければ……と思っていたがフローレスが言葉を発したためその思いは行動できなかった。
「槍を向けるとはいい度胸だな!こちらのお方はクラック王国のソフィア姫であるぞ!
事前に連絡を取らなかったこちらにも非があるとはいえ、隣国の姫君の顔ぐらい覚えておくべきではないか?一度や二度ならずこちらの町のものと顔を合したことがあるはずだが」
そう言うと二人の護衛は私の顔を見て顔面が蒼白になる、連絡をとっては悪いところを隠されてしまうだろうと連絡を取らなかったが……正しそうだ。
「し、失礼しました!ただいま王様へご連絡いたします」
「あら、忙しい王様のお時間を割いていただけるなんて嬉しい限りねフローレス」
「ああ、なんてったって忙しいんだからな。そこでお茶でもしておくか?」
護衛達が連絡をしに行ったようだ。まったく、見た目で判断するような町とは……隣国にとんでもない町があったものだ。
____
しばらくして高貴な、上質な服に身を包んだ男が出てきた。お迎えするように……ということだと思うが、急ぎ過ぎて紙が乱れているのはお伝えした方がいいだろうか。
「こんにちは、ご連絡もなしにお邪魔してしまって申し訳ないわ。そんなに急がなくて大丈夫ですわ」
「いえいえ、うちの城のものが失礼な態度をとったと聞きまして……いてもたってもおられなかっただけですのでお許しください。こう言っては何ですが彼らはまだうちが雇って日が浅く……大変失礼しました」
「そういう問題ではなかったけれどな。とりあえず王に会わせていただこうか」
そうフローレスが入ろうとするとフローレスは足止めをされる。
「申し訳ないのですが、王に会われる方は姫様のみにしていただけないでしょうか……?護衛様は隣のお部屋には案内いたしますので……」
そう言われ正直納得はしなかったがお相手様が言うなら仕方ない。自分で自分の身は守れるし了承するか。
「大丈夫よ、フローレス。終ったら隣の部屋へ向かうわ。貴方がすべきことは問題を起こさないことよ。大人しくしておいてね」
そういうと何か言いたげなフローレスがこちらを見てくる。正直一緒に行きたい気持ちは山々だがそれを断って会ってもらえなくなってしまったらここまで来た意味がない。
「……そちらに護衛は?いるならうちの姫様の身が危ない可能性もあるんじゃないか?」
そう最後の抵抗をしようとフローレスが問いかけると出てきた男は自信満々に答える。
「そう言われると思いまして、王からの伝言なのですが『私の護衛も同じ部屋に送る。酒でも出しておいてくれ』と伝えられております。もしよろしければお話していただければいかがでしょうか」
不服そうな顔をしながらフローレスは分かった、と呟いて部屋へ案内してくれるメイドの後ろをついていった。私も行くか。
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