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22話 希望のアリシア

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眩い光に驚いてリアムは目を覚ました。荒手の目覚ましとして今度使ってみるかと呑気なことしか考えられなくなるほど自分自身に今私は困惑していた。


「起こしちゃいました?」


リアムになんて声を掛ければいいのか分からなくて適当に言葉を選んでしまう。


「ええ、あまりにも眩しかったから」


そりゃ、私も言いたいことは同じだ。いわゆる守護神とやらしか使えないような力を私は彼の目の前で自分にとっても初めてなのにお披露目したのだから、どちらも疑いたくなる。 


「どこにそんな力を隠してたんですか?」


当たり前の質問が返ってきたが私には打つ手も言うこともない。だって、勝手にそうなったんだから。言い訳するわけにもいかないだろう。


「分からないんです」


「まあ、言いたいことは分かります。あの王城の衛兵がきて、私を起こそうとしていた」


そうだ。彼は心が読めるのだからそうしてもらえれば早いに決まっている。私は首を縦に振って一生懸命に同意した。


「そして、どうにかなれと願ったらこんな奥地まで飛んだと、合ってます?」


「そうなんです。どこか遠くへと願ったら、全く知らない場所にいました。」


本当に言うことはそれしかない。だって知らない間に光が身を包んで意識が戻ればこんな所にいたのだから。


「ちなみにここは国内一の観光地である、アリシアという地です」


遠いところと願ったが誰が観光地に連れていけと願ったのか。あんな窮地でそんな余裕を持っている私は煩悩の塊そのものではないか。にしても、彼は私の力についてあまりにも疑ってこなかった。


「どこか隠れられそうなところは…?」


「私は、この地でも顔はバレてるでしょうからね。こう、しますか?」


そう言うと彼はトレードマークのように長いその美しい髪を近くに落ちていたガラス片で切った。ストン、とその長い銀が私の前でひらりと舞い、落ちた。衝撃で声が出ない。


「大丈夫。すぐ伸びますよ?」


そういう話では無い。彼の天然さで一気に私は緊張がほぐれて微笑してしまった。


「何を笑ってるんですか。そんな可笑しいですか?」


彼は少し怒った素振りをみせたが、おどけていただけだったので安心した。私もそう思えばこのドレスでは目立ちすぎるだろう。どこか手を施せないかと悩んでいると、リアムがそっと手を差し出してきた。やっぱり、私はこういうところに惹かれてしまうのだろう。

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