そっと推しを見守りたい

藤森フクロウ

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ストーカー、恋する乙女を応援する③



 一方、その頃フェルゼン辺境伯邸。
 ミルクたっぷりのアッサムティーを飲みながら、情報収集もかねて新聞を読んでいた。
 どういうわけか、定期的に王都の新聞がフェルゼン邸にあるのだ。
 流石に毎日というわけではないが、1~2週間に一度でまとめて書棚の近くのラックに置いてある。これのおかげで、王都の情報があくまで市民目線ではあるが手に入る。
 また、どういうわけかフェルゼン邸の横にいつの間にか図書館が増築されている。最初は空っぽだったのに絵本、童話、神話から歴史書、経済学から帝王学、魔導書や錬金術の教本、料理本や雑学本までそれはもうあらゆるジャンルが雑多に入っている。
 アヤネコ最愛の推しことエルストン・ジル・ダルシア。
 彼の知らぬところで、彼を慮る余りに異腹兄の性癖が暴走したなどとは知るはずもない。
 その日、天気が良かった。
 庭では車椅子を押すロヴェルと押されるアリエッタ。エルストンの愛する双子の弟妹の楽しげな声を聴きながらテラスで新聞に目を通す。
 ふと、紙面に『人気絶頂! ロイヤル☆ラヴァーズ・リヴサーラ密着取材!』とどどんと出ていた。そこにはドリルを思わせる縦ロールの少女がマイク片手に飛び跳ねている姿があった。

(………どこかで見たことがある気がするような……?)

 だが、位の低い妃の皇子とはいえ、エルストンの知り合いにこんな膝上15センチはありそうなミニスカートで歌って踊るアイドル系女子はいなかった。
 というより、アイドルなどという職業を新聞に目を通すようになり、俗な情報とともに初めて知ったといっていい。そういった意味でも、新聞は貴重な情報源だった。社交界に出れないエルストンの、平民向けとはいえ鮮度の高い情報を得られる稀少な機会だ。
 一応は思い出そうとするが身分の高さに応じて気位の高いものが多いのは、どの年代も性別問わず変わらない。
 気のせいだろう、とエルストンは次の紙面をめくったのであった。
 次のページには、貴族の間で次々と尻が四分割されるという謎の流行り病があるというニュースだった。
 阿呆な話題が流行っているな、と思わず紅の双眸を半眼にした。
 渦中ど真ん中過ぎて逆に平和な事を、彼はまだ知らない。


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