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異母姉の駆け落ち
しおりを挟むエチェカリーナお母様と違い、三人は貴族への人脈が薄い。
いくら美人でも不作法で下品だと烙印が押されてしまえば、お付き合いのできる層も知れたものになってしまう。
それでも、粘って何とか取り付けたタチアナお異母姉様とクロード様との縁談。
相手は公爵家であり、格上。まさに素晴らしい縁談だったと思うの。
事実、ルビアナ様(義母と呼ぶのもちょっと……)とセシリアは喜んでいた。
ケッテンベル公爵家の次男であるクロード様がこちらへ婿入りだけれど、お父様も元は婿入りだったし。
伯爵様(父親としてちょっと……)は何とか取り付けた縁談の本人、乗り気のルビアナ様、特にポジティブモンスターの気があるセシリアは愚痴や相談を言っても取り合ってくれない状況。
でも、張本人は乗り気でなかった。
業を煮やしたタチアナ様(心の中では姉ではない)は、私を呼びつけて愚痴る日々。
口を開けば、婚約者への不満ばかり。やれ「愛想がない」「鉄面皮なの?」「女心が分からない」「あれなら使用人のほうがマシ」「家柄だけが取り柄」「私はもっと気さくで優しい人がいい」「なんであんなオッサン」※年の差は六つだけ。などと、マシンガンのように顔合わせが終わる度にネチネチと不満を漏らしていました。
私はクロード様をよく知らない。真面目な方なのかな、となんとなくわかる程度。
クッキーを親の仇のようにかみ砕き、肘をテーブルについて顔を苛立ちに歪めるタチアナ様には自分への共感と同意しか必要としていないようだった。
お作法の先生に絶対怒られる食べ方です。
私やセシリアは十二歳も違うから、六歳差のタチアナ様の方に縁談が行くのは自然。むしろ、クロード様に非もなく好みと会わないというだけで破談にしては、慰謝料を払うのはうちだろう。
もとは、タチアナ様に良い縁談をと奔走したからできた御縁。
当然、普段はタチアナ様に激甘なお父様も流石にお許しにならなかった。
結果、家のお金や宝石を盗みクロード様の従僕と駆け落ちなさったタチアナ様。
しかも、その使用人のマルセルだかマルクルだかはケッテンベル家の宝石をいくつか盗んで逃げたそうです。
運がいいのか悪いのか、マルセルはケッテンベル家の外戚だった。そして遠縁でもある、縁故採用。
互いに非がある形だが、やっぱり張本人がこちら側から出てしまっている以上にはマルベリー家が悪い。
かわりの別の娘との縁組となったのは、ひとえに婿入りによるマルベリー家当主というのが美味しいからだろう。
お父様はアレな方だけど、母と残された使用人や領地、資産は立派な財産。祖父母との縁もなくしたくないという貴族的打算もあったのでしょう。
ダニエル様は「セシリアには可哀想だ」と、半年違いの異母妹を庇い私を差し出した。
タチアナのやらかしで、破談になりかけた御縁だもの。針の筵になっておかしくない。
そして、十歳の私はどれくらいぶりか分からないとびきり洒落たピンクのドレスと絹のリボンを付けておめかしをしていざお見合いとなった。
そして冒頭、運命の十歳の出会いです。
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