復讐も忘れて幸せになりますが、何がいけませんの?

藤森フクロウ

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8、『哀れな婚約者』のメリット


 王家と姻戚となるよりずっと利になると諭すフレアに、父のジョージは迷っていた。
 ずっと比較されていた兄にすら成し得なかった事をジョージはしたかったのだ。それは、凡庸であることを認めたくないジョージの長くの宿願だった。
 ぱっとしないジョージと比べ、妻のクレアに良く似たフレアは天賦の才を持っている。
 ドレスを纏えば淑女、剣を持ち馬に乗れば騎士、魔法を扱わせれば賢者と呼ばれるほど数多の才能を持っていた。外交に出れば、舌を巻く話術と知識で交渉できるし、今すぐにジョージと替わって公爵家を引き継いでも如才なく盛り立てられるだろう。
 その一部でもジョージが持っていれば、ここまで卑屈な男にならなかっただろう。
 トンビが鷹を産むと言われるほど、父と娘でありながら雲泥の差があった。

「し、しかしだな……」

「お父様、率直に申し上げます。もし、エンリケ殿下とアシュトン公爵家が縁続きになりましたら、我が家の財はしゃぶりつくされ王家の失態のあらゆる責任を押し付けられ没落します」

「おい、いくらエンリケ殿下の器量が良くないとはいえそれは言い過ぎだろう。仕方ない、フレアがダメならユリアを嫁がせるか……?」

 諦めの悪いジョージに、フレアは静かに首を振る。
 まだ王妃や国母を輩出するということに拘っていることが透けて見えて、フレアは内心呆れた。
 ユリアはフレアの異母妹だ。
 父にもフレアにも似ていないピンクブロンドとピンクアイの砂糖菓子のような愛らしい令嬢だ。
 アシュトン公爵家の血筋を表すように、髪が赤みがかっているは父譲りだ。フレアは母方ばかりに似ているので、顔立ちも髪や瞳の色も似ていなかった。似ているのは胃腸が強いところくらいだろう――おかげで異国の慣れない食材や水を使った料理にも耐えられた。
 フレアが似てない分、ユリアが愛しく感じるらしい。
 父はその可愛い娘を、そのまま外見通りとっても可愛らしい性格だと思っている。
 だが、フレアの知るユリア・アシュトンは誰に似たのかなかなかに狡猾である。その可憐な外見を理解しているところや、利害をすぐさま計算できる天性の感覚の良さはフレアも気に入っている。
 だがこの父はユリアのペラッペラに薄いところの上っ面しか見えていない。呆れを通り越して憐れである。
 それを指摘したところで怒りだすので、フレアは建設的に話を進めることにした。

「いえ、それは下策かと。王家はエンリケ殿下の行いから出た莫大な慰謝料や賠償金を、必ずアシュトン公爵家にも負担させるでしょう。アシュトン公爵家の爵位を返上し、すべての事業や領地を売り払ってもエンリケ殿下の浮気の慰謝料を払いきることは不可能です。
 エンリケ殿下は我が国の貴族だけでなく、他国の貴婦人や令嬢にまで手を出しています。なかには、ブランデルよりもはるかに大国出身の姫君までおられます。
 中にはエンリケ殿下の仕打ちにわたくしへ同情し、わたくしを慮って慰謝料を減額してくれ、矛を収めてくださった方もいらっしゃいます。
 わたくし以外が新たに婚約者になった時点で、彼らはまた矛を持ち直すでしょう――あくまで、哀れで惨めなフレア・アシュトンに憐憫を持っただけですから」

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