27 / 73
27、反省しない王子
エンリケは公務も執務も放棄してミニスと買い物で散財しまくり、王宮に戻らない。運び込むたびに、一向に減らないどころかどんどんたまる書類にげんなりした騎士達。
フレアが今までやってくれたので、エンリケは最低限にも程がある仕事すらなかった。
いきなりやれと言われてできるはずがない。周囲からやれとプレッシャーを掛けられ、逃げた。婚前旅行として、観光地に視察という名の豪遊をしにいってしまったのだ。
その頃、王宮では怒鳴り声が響いていた。
「エンリケ! エンリケはどこ!? どういうこと!? フレアと婚約破棄したですって? いないならあの女をここに呼びなさい!」
王太后――ゾエ・ブランデルが豊麗な体から怒りをほとばしらせながら、大股でエンリケの離宮を突き進んでいた。
しっかり白粉の叩いた顔ですら隠せないほど、その顔は怒りで真っ赤に染め上がっている。
王太后が忌々しく呼ぶあの女とは、王妃グラニアである。エンリケの生産元だ。
「あの厄病神め……母親が母親なら、子供も子供ね。ブランデルを滅ぼすつもりなの!?」
ゾエにとって、グラニアは悪女であり、王室最大の汚点であった。
これでその子供のエンリケがまだ使い物になればよかったものの、エンリケはそれに続くか、それ以上の駄作だった。
グラニアさえいなければ、ブランデルの腐敗はここまで進まなかっただろう。
ゾエは最初からグラニアを嫌っていた。憎んでいたと言っていい。
ずっと国の為と我慢していた。大事な息子を誑かし、夫が亡くなり、引退して可笑しくもない高齢のゾエに仕事を押し付けてのうのうとしている放埓な女。
あの女はそれに飽き足らず、ゾエとヘンリーが苦労して見つけたフレアにも難癖をつけていた。あの愚かなエンリケをカバーできる程の婚約者を育て上げたのに、それが余計、気に食わなかったのだろう。
エンリケはエンリケで努力すらしないで、優秀な婚約者を僻んで貶していた。
だが、この結婚がブランデルに必要な政略であると、フレアは幼いころから理解していた。粛々と、ただ自分の役目を全うし続けた。
自分が国の歯車だと受け入れ、淡々と。
彼女に一切、エンリケへの情などない。王家に対しても、主従としての立場や義務はあっても、それ以上は――と考えてゾエは首を振って考えを追い出した。
あの聡明な――そして冷徹に凍った双眸を思い出すのが怖かった。
それより愚か者をもっと叱らねばならない。
いくら言っても足りなかった。怒りと失望はいくらでも湧いてきた。
「あの女やエンリケに、フレアの髪一筋分でも思慮があればよかったのに!!」
血を吐くようなゾエの本音は、彼女の侍女と侍従しか聞くことはなかった。
あなたにおすすめの小説
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜
恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」
不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。
結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、
「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。
元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。
独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場!
無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。
記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける!
※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる
物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。
待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。
そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。