40 / 73
40、ケイネス・アシュトン
「聞きたいことが有る。エンリケ殿下との婚約が無くなったのは事実か?」
「あら、流石に田舎にも届きまして?」
否定しないフレアに、ケイネスは怒鳴りつけてきた。こういう嫌なところはジョージにそっくりである。
「何を考えている!? 相手は王族だぞ?」
「敬うべきモノもないハリボテに尽くすのは飽きましたの」
「王家を何だと思っている!?」
「わたくしに流れる薄いシェリダン公国王族の血を盾にすることでしか、国交すらできない無能。自国語しか使えない王妃と王子は、国内の公務すらまともにできてはいないではないですか」
「それを支えるのがお前だろう!」
フレアの言葉に被せるようなケイネスの怒号。その上から目線に呆れる。
少しだけ、貴族当主の座を間借りしているだけで随分偉そうになったものだ。子爵風情が、王家と公爵家の婚約破棄について何か言える立場ではない。
そもそも、フレアは精一杯尽力したが、それに調子づいて放蕩をしたのはエンリケだ。そして、イビリの一環でそれを助長させたのはグラニアだ。
そして真実の愛だのと言う、くだらない妄言でフレアとの関係を断ち切った。
マザコン殿下のことなので、プロムナードで婚約破棄をした理由に予想がつく。かつてのヘンリーとグラニアの真似をしたかっただけだ。そして、ミニスはその時の一番のお気に入りの女だっただけ。
だから、フレアにとってこの婚約破棄は想定内というか、計画通りなのである。
エンリケに複数の女性との関係があることは知っていた。中には一線を超えた女性もいることだって知っていた。あれほど口を酸っぱくして注意したのに、どうやら右から左へ素通りしていたようだ。
エンリケの女癖の悪さはずっと前から問題視されているし、当然ケイネスだって知っているはずだ。それを知っていて、よく言うものである。
「あら嫌ですわ。ケイネス伯父様ったら、何をそんなに怒っていらっしゃるの? わたくし、アシュトン公爵家の品格を保つために手を尽くしましたのよ? この婚約が流れようとも、我が家は名誉も財も傷つかず、失わないように準備は整えていましたの」
貴族たちも、市井の民たちもフレアに同情している。
ザルのように女にだらしないエンリケの過去の所業は、裁判の時に読み上げられている。
婚約破棄を発端に起こった浮気の清算は、王家の最大のスキャンダルと化していた。フレアは周囲に口止めをしていないし、フレアを思って口をつぐんでいた貴族たちは少なくない。ここぞとばかりにエンリケの酷さをあちこちで囀っている。
裁判所の傍聴席は常に満員で、その席を取ろうと貴賤や老若男女問わず画策をしていると聞く。
皆が王家の特大の醜聞を、娯楽として、あるものは燻った復讐心を満たすために来ている。
「だが、何故ユリアを追い出した?! お前の妹だろう! 異母だからと言って、まだ幼いあの子がどうして! 結婚は早すぎる!」
幼いと言われて呆れる。ユリアはもう十六歳の立派な淑女だ。婚約は勿論、少し早いものの結婚だって不自然でない。
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜
恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」
不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。
結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、
「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。
元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。
独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場!
無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。
記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける!
※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる
物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。
待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。
そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。