復讐も忘れて幸せになりますが、何がいけませんの?

藤森フクロウ

文字の大きさ
41 / 73

41、暴露

しおりを挟む


 追い出したなんて心外である。ユリアは喜んで嫁いでいったし、嫁入り道具はフレア用にあったものをいくつか用立てした。王族に嫁いで行ける程の物を持たせ、好みの旦那様をゲットしたラブラブ凱旋と言って欲しいくらいだ。
 確かに急ごしらえではあったが、両家や当人に間では納得済みである。
 ケイネスは勝手な事を言っているが、ユリアだって結婚願望はあった。今までジョージの持ってくる縁談が悪すぎて頷かなかっただけだ。
 元娼婦の母と言われようが、ユリアは立派な公爵令嬢なのだ。しかし、欲に釣られやすい節穴が選んでは、まともな相手は用意されない。
 賢いユリアは、フレアにまともな人を紹介してほしくてずっと『可愛い妹』でいてくれたのだから、フレアは『妹思いの姉』として筋を通した。
 フレアはフレアなりにユリアを可愛がっているから、手を尽くしたのに酷い言い草である。

「おかしくなくってよ? アシュトン公爵家の娘が、婚約者が決まらないことが妙なくらいよ。ちゃんとユリアも納得して嫁いでいったわ――少々急になったけど、お相手は素敵と喜んでいたし、どうしてもエンリケ殿下との縁談を持ちあがらせたくなかったのね」

 フレアがあっさりとそういうと、苦虫を噛み潰したような顔になるケイネス。
 余程ユリアを公爵家に引き留めたかったのか。昔からケイネスはフレアには冷たいが、ユリアには甘かった。
 その理由は知っているが――まだこの男はバレていないつもりらしい。

「この……減らず口を……お前のせいで、どれだけあの人が苦しんでいると……」

 聞こえていないつもりなのか、怨嗟のような低音で唸るケイネス。恨みがましい目が炯炯と光っている。
 フレアは心底軽蔑するようにケイネスを一瞥し、顔も見たくないとばかりに扇を広げた。
 もう少し黙っていようと思ったが、気が変わった。

「お断りです。卿とグラニア王妃の気色悪い願望の為に、何故わたくしが犠牲にならねばならぬのやら」

 フレアの言葉に、どす黒く染まっていたケイネスの顔が驚愕に震え、一気に青褪める。
 その目が、何故それをと言っていた。

「知らないと思っていましたの? お粗末ですこと」

 フレアは王子妃教育と王太子教育両方を詰め込まれていたので、王宮に寝泊まりすることも多かった。
 グラニアの虐めで下女の真似事をさせられたことだってある。
 だから、色々と情報網が広いのだ。
 王子の浮気相手のレディ――メイドからデビュタント前のご令嬢、人妻や未亡人までかなりストライクゾーンが広かったことや、官僚の汚職、大臣のヅラ事情から、王の秘密の恋人や、王妃のたくさんの愛人たちに、王太后の持病まで腐るほどあった。中には、フレアだと分かっていて、色々と告げ口をしに来る人だっていた。
 エンリケの異性へのだらしなさは、間違いなくグラニア譲りである。

「知っていますわよ? お祖父様――先代当主様に接見禁止されているというのに、未だに王妃と未練がましく通じ、密会を重ねていることを。挙句、子供まで作ったことや、髪色などが伯父様に似ていて、慌てて隠したことも」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

処理中です...