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41、暴露
しおりを挟む追い出したなんて心外である。ユリアは喜んで嫁いでいったし、嫁入り道具はフレア用にあったものをいくつか用立てした。王族に嫁いで行ける程の物を持たせ、好みの旦那様をゲットしたラブラブ凱旋と言って欲しいくらいだ。
確かに急ごしらえではあったが、両家や当人に間では納得済みである。
ケイネスは勝手な事を言っているが、ユリアだって結婚願望はあった。今までジョージの持ってくる縁談が悪すぎて頷かなかっただけだ。
元娼婦の母と言われようが、ユリアは立派な公爵令嬢なのだ。しかし、欲に釣られやすい節穴が選んでは、まともな相手は用意されない。
賢いユリアは、フレアにまともな人を紹介してほしくてずっと『可愛い妹』でいてくれたのだから、フレアは『妹思いの姉』として筋を通した。
フレアはフレアなりにユリアを可愛がっているから、手を尽くしたのに酷い言い草である。
「おかしくなくってよ? アシュトン公爵家の娘が、婚約者が決まらないことが妙なくらいよ。ちゃんとユリアも納得して嫁いでいったわ――少々急になったけど、お相手は素敵と喜んでいたし、どうしてもエンリケ殿下との縁談を持ちあがらせたくなかったのね」
フレアがあっさりとそういうと、苦虫を噛み潰したような顔になるケイネス。
余程ユリアを公爵家に引き留めたかったのか。昔からケイネスはフレアには冷たいが、ユリアには甘かった。
その理由は知っているが――まだこの男はバレていないつもりらしい。
「この……減らず口を……お前のせいで、どれだけあの人が苦しんでいると……」
聞こえていないつもりなのか、怨嗟のような低音で唸るケイネス。恨みがましい目が炯炯と光っている。
フレアは心底軽蔑するようにケイネスを一瞥し、顔も見たくないとばかりに扇を広げた。
もう少し黙っていようと思ったが、気が変わった。
「お断りです。卿とグラニア王妃の気色悪い願望の為に、何故わたくしが犠牲にならねばならぬのやら」
フレアの言葉に、どす黒く染まっていたケイネスの顔が驚愕に震え、一気に青褪める。
その目が、何故それをと言っていた。
「知らないと思っていましたの? お粗末ですこと」
フレアは王子妃教育と王太子教育両方を詰め込まれていたので、王宮に寝泊まりすることも多かった。
グラニアの虐めで下女の真似事をさせられたことだってある。
だから、色々と情報網が広いのだ。
王子の浮気相手のレディ――メイドからデビュタント前のご令嬢、人妻や未亡人までかなりストライクゾーンが広かったことや、官僚の汚職、大臣のヅラ事情から、王の秘密の恋人や、王妃のたくさんの愛人たちに、王太后の持病まで腐るほどあった。中には、フレアだと分かっていて、色々と告げ口をしに来る人だっていた。
エンリケの異性へのだらしなさは、間違いなくグラニア譲りである。
「知っていますわよ? お祖父様――先代当主様に接見禁止されているというのに、未だに王妃と未練がましく通じ、密会を重ねていることを。挙句、子供まで作ったことや、髪色などが伯父様に似ていて、慌てて隠したことも」
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