巻き添えで異世界召喚されたおれは、最強騎士団に拾われる

こざかな

文字の大きさ
69 / 78
番外編

その狼の愛は止まることを知らない 3

「タカトはまだ寝てろよ」

疲れてるだろと言って、疲れさせた張本人は毛布から飛び出ていたおれの頭をひと撫ですると、ロイと一緒に自室に戻ってしまった。
騎士団の朝は早い。今日は久々にゆっくり一緒にいられると思っていただけに、残念な気持ちが大きい。さっきまで温かったベッドが、段々冷たくなっていくように感じられてちょっと寂しい気持ちもある。ロイも急用だったみたいだから誰も悪くはないんだけど、もう少しいちゃいちゃしたかったなぁ……っておれ、ちょっと面倒くさい?
二度寝する気にもなれず、広くなってしまったベッドの上でもぞもぞしていると、部屋のドアがノックされた。今日は誰かと会う約束はしてないんだけど……しかもこんなに早い時間に。
おれは少し緊張しながら、相手が名乗るのを待った。

「タカト~、起きてる~?」
「えっ、クー!?」

クーロは昨日からカーネリアン家に三日間勉強やら社交界デビューのための準備やらでお泊りに行っているはず。どうしてこんなに朝早くに宿舎にいるんだ?

「えへへ、忘れ物しちゃったんだ~! また戻らなきゃいけないんだけど、タカトにも会いたくて……オウカさんが、今ならまだ起きてるかもって言ってたから、来ちゃった!」

部屋に招き入れたクーロは、恥ずかしがっているのかモジモジしながらおれに抱き着いてきた。なるほど、オウカとロイに会ったんだな。ということはもしかして、ロイがオウカを急かしていたのは、クーロが来るからなのか?

「オウカとロイは他になんか言ってた?」
「ん~? 勉強頑張ってて偉いねって言ってくれた!」
「そっか~」

ぺかーって眩い笑顔のクーロの頭をわしゃわしゃと撫でると、尻尾が元気よく左右に振られる。癒しだ……
オウカ達はクーロにはさっきの話をまだするつもりはないようだ。近々するとは思うけれど、先にカーネリアン家と相談するつもりなんだろう。クーロが自分のことよりも、カーネリアン家や竜の牙のことを気にかけてしまうことは分かっている。

「あ、そうだ! タカトにお手紙だよ!」
「手紙?」
「うん! かあ様からのお手紙!」
「え」

「はい、どうぞ!」と質の良い子供用の礼服の内ポケットから取り出して渡されたのは、小さめ封筒。受け取って宛名を見れば、一度だけ聞いたことがある名前が。

「クー、かあ様ってもしかして……」
「オウカさんのお母さんだよ?」
「だよねー……」

クーロに託したということは、誰に知られることなく手紙を届けたかったということだ。素直で責任感が強いクーロなら、おれに届けてほしいと言えば確実に届ける。けれど、クーロは嘘が苦手だから、他の人には内緒だと言われても手紙について聞かれれば動揺してしまう。そのことも考慮して、わざわざ内ポケットに入る小さい便箋に書いたのだ。
そこまでして、おれに届けたかった手紙の内容はいったい……
ちょっとした恐怖を感じながら、おれは便箋を開いた。


☆☆☆☆☆


無事に忘れ物を持ったクーロは、再び馬車に乗ってカーネリアン家に戻っていった。あの手紙を読んだ手前、二度寝をする気にもなれなかったおれは、オウカと一緒にクーロを見送った。オウカは、クーロと一緒に現れたおれを見て、少し申し訳なさそうな顔をしていた。クーロをおれが起きていることを伝えたために、おれが身体を休められなかったのではないかと心配しているのだろう。
クーロが戻ってきたことはオウカも知らなかったんだろうし、無邪気におれのことを聞かれたんだろうな。身内になったことで更にクーロに弱くなったオウカのことだ。上手く誤魔化すこともできなかったに違いない。どちらにせよ、クーロは手紙のためにおれに会いに来ていたはず。だから、これくらいで気に病む必要はないのに。意外とそういうの気にするタイプなんだよなぁ、この狼は。
けれど、尻尾が下がり気味のその背中を叩いて気にするなと目で伝えれば、すぐに尻尾も気持ちも上向きになる。チョロくて可愛いと思います。

「ねぇ、オウカ。明後日、クーロを迎えに行くんだよね?」
「あ? おう。明後日の朝、迎えに行くつもりだ。子犬に渡した親父への手紙の返事も聞かなきゃいけないからな」

走り去る馬車の窓から手を振っているクーロに手を振り返しながら尋ねれば、不思議そうな声ながらも答えてくれた。
親父……ラシュドに宛てた手紙をクーロに渡していたが、その内容はクーロの今後についてのことなのだろう。今日のクーロは手紙の配達員だな。

「それがどうかしたか?」
「クーロを迎えに行くとき、おれも連れて行ってほしいんだけど……」
「……なんかあったのか?」

おれは、無言であの手紙をオウカに差し出した。

「母さんからの手紙?」
「クーロに、おれに渡すように頼んでたみたい。わざわざ上着の内ポケットに入れさせて。でも、おれ一人じゃどうにもできないからさ。多分、おれがオウカには話すことも想定済みなんだと思うけどね」
「まぁ、そうだろうな。俺を遠さずに回りくどい手を使ったのは、ダレスティアとロイにはあまり知られたくなかったからだろうさ。母さんのことだから警戒するだけ損だと思うが……本当に行くのか?」
「うん。いつかはお話ししなきゃと思ってはいたし……せっかくお呼ばれしたんだからね」

オウカの手に収まると、さらに小さく見えるカーネリアン夫人からの手紙。それは、お茶会への招待状だった。
感想 111

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。