巻き添えで異世界召喚されたおれは、最強騎士団に拾われる

こざかな

文字の大きさ
73 / 78
番外編

その狼の愛は止まることを知らない 7

ガタゴトガタゴトと揺れる馬車の中。おれはオウカと向かい合って座って、思ったより腰に来る振動に耐えていた。

「大丈夫か?」
「まだ、大丈夫……」

大丈夫と言ったものの、かなり振動が酷い。いくら成長したとはいえ、クーロが乗ったら吹っ飛びそうだ。

「悪い。まさかほとんどの馬車を修理に出しているとは思わなかったんだ。カーネリアン家の馬車も騎士団の移動に使っているらしくてな」
「それは仕方ないよ。むしろ、これまであまり修理してなかった方が問題あったと思う……」

そう口では言いつつも、正直お尻が痛い……。振動と、跳ねて落下してぶつけまくっていることで、おれのお尻が大変なことになっている気がする。変な意味ではなく。
騎士達は体幹がしっかりしてるから、あんまり振動も気にしたことがなかったらしい。乗る前にこれまで車輪の辺りしか点検と修理をしてこなかったと聞いたときに、簡単に大丈夫だなんて言わなければよかった。なんでほとんどの馬車が一斉に修理に出されたのかを不思議に思うべきだった。乗る直前に気まずそうにおれから目を逸らすオウカに、嫌な予感はしてたんだ。
でも、これほど乗り心地が悪いとは思わなかった!

「うわぁっ!」

一番酷い揺れがおれを襲った。馬車の屋根から下がっていた紐を掴んでいた手が外れ、あ、と思った時には弾んだ身体が前方に向かって跳んでいった。

「うおっ!? だ、大丈夫か?」
「いてて……ん?」

俺は向かいに座っていたオウカの胸元に飛び込んでいたらしい。衝撃に備えて瞑ってしまっていた目を開ければ、目の前には着崩した団服から覗く逞しい胸筋が。良質な筋肉が持つ柔らかさに、思わずその胸についていた手を動かしてしまった。

「おお~、柔らかい……!!」
「お、おいタカト!? お前変なとこ触るんじゃねぇ!!」

一言で表すなら、むちっとしている。ほどよい柔らかさに弾力。これはクセになりそうな感覚……!
オウカの上に倒れ込むような体勢になっていたのをいいことに、馬乗りになったまま胸を揉んでいたら、無理やり引き離されて椅子に座らされた。

「っ、このッ! 好き勝手触りやがって!」
「いいじゃん! オウカだっていつも、おれの胸触ってるじゃんー!」
「うっ……そ、それとこれとは話が違うだろ!」
「けちっ!」

真っ赤になったオウカが耳と尻尾を忙しなく動かして警戒する姿を楽しみつつ、その魅力的な筋肉をもう一度触りたいなと隙を狙うおれ。
カーネリアン邸に着くまで、その攻防は続いたのだった。

「お帰りなさいませ、坊ちゃん。そしてタカト様。本日はようこそ、いらっしゃいました」
「うおおぉぉぉ~~……」

執事さんに出迎えられて馬車から降りた目の前には、語彙力が無くなるほどにとても立派な西洋風のお屋敷。これでも小さいほうだと言われてしまえば、ダレスティアの家はいったいどれだけ大きいのか気になってくる。多分声も出ないほどの大豪邸なんだろうなぁ。

「坊ちゃんはもう止めてくれって言っただろ……はぁ」
「おや、お疲れですか? まぁ、これだけのボロ馬車ですから、疲れてしまうのも無理はないですねぇ」
「いや……はぁ」

そう頷く執事さんは、オウカが疲れた顔をしている理由を馬車のせいだと思ったようだ。オウカは、もうそれでいいと遠い目をして馬車の修理を頼んでいた。

「そう簡単に直せるとは思えませんにで、騎士団の宿舎にお帰りの際はカーネリアン家の馬車をお使いください。ほとんど旦那様が王宮に持って行ってしまわれましたが、三台は残してありますので」
「ああ、助かる。親父は今どこにいる? また訓練場か?」
「旦那様はただいま執務室にいらっしゃいますよ」
「執務室?」

オウカは、驚いたというよりは胡乱気に執事さんを振り返った。そんなにラシュドは書類処理が苦手なのか。

「珍しいな」
「何しろ書類が溜まりに溜まっておりまして……奥様から雷が落ちたのです」
「なるほどなぁ。タカト、俺は親父に会ってくる」
「あ、おれも挨拶に行くよ」
「いや、大丈夫だ。後で母さんのところに行くだろうから、先に母さんのところに行っててくれ」
「それはいいですね。ちょうど奥様は庭園でお茶をされているところです。以前からタカト様にお会いしたがっていらしたので、ぜひ」

事前におれが行くことは伝えてはいたが、どうやって夫人に会おうかと悩んでいたのが嘘みたいだ。オウカの一言があったとはいえ、びっくりするほど簡単に会えることになってしまった。

「じゃあ、タカトを頼むぞ。タカト、また後でな」
「あ、うん」

おれの頭をひと撫ですると、オウカは足早に邸宅の中に入っていった。
おれは子供じゃないんだけど?
怒ればいいのか喜べばいいのか分からない複雑な心情が顔に出ていたのかもしれない。執事さんは「仲良しですな」と微笑むと歩きだした。
それにしても、オウカが躊躇いもなくおれを預けていくってことは、この執事さんはとても信頼できる人なんだろうなぁ。それとも、自分の家だから安心しているとか?

「クーロ様がとても楽しそうにタカト様のお話をされますので、奥様がタカト様に大変ご興味を持たれておりまして……。かく言う私も、お会いできればと願っておりました」
「あはは……すいません。期待通りではなかったでしょう」
「ははっ、何をおっしゃられます。クーロ様がご自慢されるお気持ちがよく分かりました。これでも人を見る目は自信があるのですよ」

執事さんは足を止めると、おれを振り返り穏やかに微笑んだ。本当に、おれはそれほど期待されるような人間じゃないんだけどなぁ……。クーロはいったいおれのことを何て話してるんだ? 

「あぁ、失礼。申し遅れました。私は執事長を務めさせていただいております、ミシュラと申します」
「あ、これはご丁寧に……。おれは、鷹人です。ご存知かと思いますが……」
「ええ。旦那様から伺っております。いつか、本当の髪色も拝見したいものです」
「オウカの髪の方が綺麗だと思いますが……次回お会いするときにでも、ぜひ」

そう言うと、ミシュラさんの目がキラっと輝いたように見えた。でもそれも一瞬で、「嬉しいですねぇ」とにっこりと微笑みが返された。え、気のせい?

「こちらの扉の先が、庭園に続くテラスになります。庭園のガゼポにて、奥様がお茶をなさっておいでです。ここから先は、私から三歩の距離から離れずに続いてください」
「え、わ、分かりました」

ミシュラさんからの謎の指示……離れるなってことは、貴重な花とかがあるのかな?
おれが頷いたことを確認したミシュラさんは、扉を開けた。瞬間、おれは謎の指示の意味を理解した。
この庭園全体に、魔法がかけられている……
感想 111

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。