来世で独身貴族ライフ楽しんでたら突然子持ちになりました〜息子は主人公と悪役令息〜

こざかな

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前編

9

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※ちょっとエッチな描写があります!


――――パンッ

「また外れた……。あとちょっとなのになぁ」
「あの、父さん。もういいですから……」
「あのな、カーディ。俺、負けず嫌いなんだよ。このままだと負けた気分になるから嫌だ」
「でも、もうかなりつぎ込んでますし」
「だからこそ諦められないんですよ、この人は」
「げっ、デリス……!お前見てるだけじゃなかったのか」
「あまりにも涙ぐましいお姿に黙っていられませんでした」
「おい」

もはや十何発目になるか分からない玉を打とうとしたところで、背後からデリスが現れた。白々しい態度にイラっとするが、カーディアスが見ているし人目もあるため我慢する。
と、デリスが不意に俺が持っていた銃を取り上げてきた。

「おい、返せ」
「レイラ様にお任せしていてはいつまでかかるか分かりません。代わりに私がお取りします」
「嫌だ!あれは俺の獲物!」
「レイラ様、祭りの雰囲気にあてられたのか子どもっぽくなられましたね」
「うるさい!とにかく、あれは俺が取って俺がカーディにあげる!これは譲れないからな!」
「ほぅ……それはそれは」

デリスがカーディアスを見る。いつも通りの笑顔なのに、どこかピリッとした空気を感じる。カーディアスもデリスをムッとした顔で睨みつけている。何故かジャガーと子猫が対峙しているように見える。

え、何があった?

「では、私はお手伝いだけさせていただきます。どちらにしろ、それなりに時間を使ってしまっていることは事実ですので」

そう言って見せてきた懐中時計にはここに来てから30分も経った時刻が刻まれていた。この湖はそこそこ広い。一周するのにも時間がかかる。早めの出てきたとはいえ、これからゆっくり出店を見て周るにしてもギリギリの時間だ。確かにこのままゴネていても仕方ない。

「分かった」
「では、銃を持って構えてください」

デリスに言われた通りに銃を構える。すると背後に周りこんだデリスが俺に覆いかぶさってきた。そのまま唇が耳朶に触れそうなほど近くで囁いてくる。

「上半身を前のめりに……そうです。そして、手を伸ばして銃を持ったまま片手を伸ばしてください」
「うっ……っこの体勢、キツいんだが。それにこんなに銃を近づけたらズルになるんじゃ……」
「お遊びなんですから、これくらいは大丈夫ですよ。ほら、台に腰をつけてもっと身体を倒して……」
「ひぅッ」

台に片手をついてはいるが、後ろから背中に覆いかぶさるようにして銃を持つ俺の腕を支えているデリスが密着してきて体勢が段々きつくなる。息苦しさまで感じる始末だ。

「も、むりっ、早くぅ……!」
「っ!?……まったく、あなたという人は…………」

――――パンッ

これまでと同じく軽い破裂音で発射されたコルクは、しかし重みのある音でぬいぐるみの額に命中し、ようやく長い戦いに幕が下りたのだった。

「取れたのは嬉しいさ。でもなんか不完全燃焼なんだけど」
「終わりよければ全て良しですよ。こんなお遊びにも負けず嫌いを発揮するなんて、レイラ様には絶対にギャンブルをさせないようにしないといけませんね」
「人をギャンブラーみたいに言うなよ……。それにしても、これなんのぬいぐるみなんだ?」

全体的に白くてモフモフの毛の手触りがいいソレは、丸いお腹に猫というか狐というか、よく分からない顔をしている。めちゃくちゃ可愛いかと言われればそうじゃないけど、どこか愛嬌がある顔だ。それを両手で握りしめて抱えているカーディアスは、ぬいぐるみの微妙な可愛らしさがプラスして、より愛らしさを増している。誘拐されないようにしなきゃ。

「なんの生き物か知らずに取ろうと思ったのですか?」
「カーディが欲しがっただけだからな」
「ふむ……まぁいいでしょう」

何だその意味深な間は。カーディアスはさっきよりもデリスを凄い目で睨みつけてるし。マジで何があったの?

「これはラディスという魔物です。魔物ですが、温厚な性格で人を襲うことはほぼ皆無。主食も草や木の枝という人畜無害っぷり。さらにはどこか憎めない愛嬌のある顔をしているため、それなりに人気のある魔物です」
「魔物なのに扱いがパンダかよ」

カーディアスが抱えるソレをもう一度見る。段々パンダに見えてきた……。

「それにしても、カーディアス様がそのようなぬいぐるみを欲しがるとは意外でしたね」
「そうだな。少し驚いたが、可愛いからいいだろ。しかし、なんでソレがよかったんだ?」
「えっと……」

途端に、恥ずかしがるようにモジモジとし始めるカーディアス。その頬も少し赤い。どうしたんだろうか。

「……てたから、です」
「ん?」
「初めて会った時のレイラさんに似てたから……」

真っ赤に染まった顔で言われた言葉に、俺は思わずソレを見つめた。

「確かに、似ている気がしますね。このお腹とか特に」
「今もとても素敵だけど、この時もこのラディス?に似てちょっと可愛かったんです……」
「えぇ……」

可愛いとか言われてもあんまり響かない。メイドたちが顔を顰めるほどの真ん丸ボディだった俺が、可愛い?百歩譲ってラディスは可愛いだろうが、その時の俺が可愛いとかないない。見苦しいだけだろ。

「昔のレイラ様の身なりにも、それなりに清潔感を心掛けていましたので、少なくとも汚らしいという印象はなかったかと」
「典型的なお坊ちゃま体型ってことでしょ……」
「ふむ、見れば見るほど懐かしいあの頃のレイラ様に似ていますね。私も一つ自分用に取るとしましょう」
「いらんだろそんなの……って、アイツもう行ったのか」

俺に似てるからって理由で取ろうとするなよ……。
図らずも再び親子水入らずの時間になったのだが、カーディアスは周りの視線が気になるのかぬいぐるみに顔を半分埋めるようにして下を向いてしまっている。
別に、男の子がぬいぐるみを抱えていることがおかしくて見ているんじゃないのにな。どちらかというと、可愛い天使のような子がぬいぐるみを抱きしめているっていう貴重なシーンに心を浄化させているだけだ。逆に邪な思いを抱いたのなら即刻しかるべき脅……対処をするが。

しかし、このまま下を向いたままでは祭りに来た意味がない。仕方がない。ここはあえて、予想外の質問でもしてみよう。

「なぁ、カーディ。もう父さんって言ってくれないのか?」
「……もう気分じゃないので」
「そうか……でも、言ってくれて嬉しかった。ありがとな」
「っ!……はい」

お、気分が上がってきたな。あまり色々言っても意味がないし、これくらいにしとくか。ちょっと気分が上がればあとは問題ない。

「……本当に時々なら、父さんって言ってあげなくもないです」
「っ!?」

驚いて目を向けると、少し意地悪く笑ったカーディアスが俺と手を繋いできた。

「レイラさんは父さん以上の存在なんです。だから、本当に時々ですからね!」
「あ、あぁ……」

にこっとほほ笑んだカーディアスに返す言葉もなく、俺は少し心を遠くに飛ばしながら、繋いだ手の子どもながらの温かさを感じていた。

子どもの成長って速いんだな……。流石悪役令息。この歳で既に人の操り方を分かってる!
でも、絶対に破滅の道には進ませないからな!




※作者「エッチな描写とは言ったが、エッチしているとは言っていません()」
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