来世で独身貴族ライフ楽しんでたら突然子持ちになりました〜息子は主人公と悪役令息〜

こざかな

文字の大きさ
19 / 49
前編

18

しおりを挟む
「パトリー侯爵家当主、レイラ様。ご到着です」

俺の名前が呼ばれると、扉の向こう側の空気が揺れた。ザワザワと、音の波が大きくなる。

「あの『公爵家の恥』がパーティに参加するだって?」
「レイラ・パトリックは公爵家から追い出されて領地の僻地に追いやられたって聞きましたけど」
「レイラ様は見目麗しいパトリック公爵家に似合わない、とても醜いお姿だとお聞きしましたわ」
「あの陰気な豚が来るだって? 気分が悪くなるじゃないか」

扉の向こうから聞こえてくるのは、レイラ・パトリックに対する悪口ばかりだ。今はパトリックじゃなくてパトリーだっての。

「お気になさらずに。貴方は堂々としていらっしゃればよいのです」
「分かってる。今笑ってる奴らは、俺の本当の姿を知らない。今度はこっちが、アイツらの見る目の無さを笑ってやるだけだ」
「それでこそ、レイラ様です」

デリスに背中を軽く押されると同時に、扉が開かれた。押された勢いのまま、一歩踏み出す。途端突き刺さる視線、視線、視線。

シン……と静まりかえった大広間。これはかなり、精神的に来る。

「あら、レイラじゃない。久しぶりね」
「……フィリア姉上」

時間が止まったかと思うほどの静まりようとなった空間を物ともせずに歩み寄ってくる、俺をビレッド地区に送った張本人。パトリック公爵家の次期当主である、フィリア・パトリック。

元々豪胆な人だとは思っていたけれど、ここまで空気を気にしない人だとは思わなかったな……。今はそのお陰で助かったけれど。

「貴方が小さかった頃を思い出すわね。あのまま成長していれば、もっと早くにこの顔を見れたかもしれないと思うと悔しいわ」
「……あまり驚かれないのですね」
「貴方の幼少期を知っていれば、簡単に想像できたことよ。まぁ、ここまで完璧に仕上げてくるとは思わなかったけれど」

フィリアは俺の顎をつかむと、右に左にと品定めするかのように見てくる。うぇ、今、首がごきって鳴った。

「あら、あんなにぽよぽよだったお腹に腹筋まで……。デリス、よくやったわ」
「お褒めいただき、光栄です」
「この出来なら、手紙を再三無視したことも許してあげる」
「やはり、デリスに手紙を送ってきていたのは姉上でしたか」

俺はデリスの作品か! っていうような内容の会話に口をはさむ。

顔だけではなく、お腹を撫でさすられ、腰を掴まれ……本当にやりたい放題のフィリアに心を無にすることにした。周りは、フィリアがいるから近付いてこれないみたいだし、丁度いいや。

ちなみに何故デリスがいるのかというと、俺の地位ならパーティに侍従を連れていくことも許されていることもあり、側にいてもらっている。デリスは顔が良いから、周りからあれこれ言われることも少ないだろうしな。

「いくら行き遅れで田舎に引っ込んだからといっても、侯爵の地位を持つ限りは社交界から逃げられないわよ。いつかはライアー家の子もパトリー家から出て貴方一人になるんだし」
「あ」

俺は思わず声を出してしまった。不自然に固まった俺を鋭い目つきで見るフィリアと、俺の後ろでため息を吐いたデリス。ごめんなさい。完全に俺のミスだ!

「なに?」
「えっと……すいません。報告を忘れていました」
「だから、なにを?」
「……実は、孤児院から一人、子どもを引き取りました。水の精霊王の寵愛を受けた、カーディアスと同じような年の男の子です……」
「……なるほど。息子が増えた、と」
「はい……」
「しかもその子は、水の精霊王の契約者」
「そうです……」
「……レイラ」
「はい……っ!?」

ガシッと、手を掴まれた。そして、骨が音を立てるほど握りしめられる。い、痛い……!
あまりの痛みに思わず涙目になった俺を、瞳孔が開いた目で見つめながらフィリアは微笑んだ。

「後で、詳しく、聞かせなさい」
「はぃ……」

フィリア姉上、マジで怖いぃ……‼
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

処理中です...