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前編
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「これは全部、パトリー家に送ってください」
「かしこまりました」
「いや、買いすぎだよこれは……」
馬車一台にどれだけ服を詰めるつもりだ……。
デリスによる着せ替え祭りはノリに乗ってしまった店員も巻き込んで、さながらファッションショーのようになってしまった。俺はもうへろへろだ。上から下まで大変だった……。
「何をおっしゃっているのですか。屋敷にあるレイラ様のお召し物が少なすぎるのが問題なのです。侯爵家ともなれば、もっとあっても良いくらいですよ」
「それは女性の場合だろう。それにビレッド地区はド田舎だぞ。めったに夜会もないし、来客だってないっていうのに……」
「王都で流行しているものですから、この辺りでの流行が終わってもビレッド地区なら数年は持ちますしいいんですよ」
「だからって買いすぎ。これだけのお金持ってきてたか?」
「それは大丈夫です。私のポケットマネーで買いましたから」
待て。この服全部でいくらになると思ってるんだ? それをポケットマネーで買った?
俺は信じられず、デリスをガン見した。
「公爵家に雇用されていた時の給金は、それはもうよかったんですよ。特に使い道もなかったので、ずっと貯めていたんです。ようやく使うことができて嬉しいです」
「……そこら辺の商人よりお金持ってるんじゃないの?」
やっぱり凄いわ、うちの執事様は。
「まぁとにかく、ランチにしよ。着替えてただけなのにやたら疲れた」
なんか今日は着替えて食べて着替えてって……着替えてばかりだな。昨日もそうだった気がする。
「なぁ、流石に服はもう良いよな?」
「えぇ。お付き合いいただきありがとうございました」
「そうか。いや、デリスが満足したならよかったよ」
これまでデリスにかけた苦労に比べたら、これくらい平気……いや、連日は無理があるけれども。
「では、お店を予約していますので行きましょうか
「予約?」
「はい。覚えていらっしゃらないかもしれませんが、昔レイラ様が行ってみたいとおっしゃっていたレストランです」
そういえば、アカデミー時代にブームになった店があったな。肉料理が美味しいとかでめちゃくちゃ気になったけど、既にぷよぷよボディだった俺。友人も作っていなかったから行くのを諦めたんだよね。もしかしてあそこかな。
「あそこの角のお店です」
「あ、やっぱりあの店だ」
王都にあるにしては、どこか庶民的な雰囲気の漂うこじんまりとしたレストラン。こっそりと見に来たことがあるその外見はあの時のままで、少しだけ色あせている。流石にあの時ほどの大盛況というわけではないだろうが、そこそこ人気を保っているようだ。
店の中に入ると、半個室のようになっている席に案内された。少し暗い店内で、机の上に置かれたランプがお洒落だ。他の席はロウソクだから、ランプが置かれている席が予約席ってことかな。
「なんか、随分オシャレな感じだな。まだ昼なのに、夜っぽくて新鮮」
「気に入りましたか?」
「……デリスのイケメンのレベルが上がって良いと思う」
「なんですかそれ」
面白そうにくすくすと笑うデリスに、また胸がキュンとした。こんなムードがあるお店でイケメンとご飯って……心臓に悪いぞ。
「お待たせいたしました」
「おおっ……」
注文していないのに運ばれてきた料理は、めちゃくちゃ美味しそうなお肉だ。じゅうじゅうと肉汁が音を立てているけど、服に飛ぶ程じゃないそれは、過去にアカデミーからたくさん貴族のお坊ちゃま達が来た時にみにつけた配慮だろうか。いや、そんなことはどうでもいい。ただただ、美味しそう……!
「なにこれ凄く美味しそう……!」
「ふふっ。ここの一番人気のメニューです。実はこのお肉、ビレッド地区から仕入れたものなんですよ」
「え、マジで!?」
思わず素の言葉が出てしまった。それくらい驚いたんだ。このお店は開店当時からビレッド地区のお肉を仕入れていたらしい。それを知ったデリスが、俺が昔行きたがっていたこともあってこの店を予約してくれたんだとか。
「まさか、ビレッド地区の領主様にご来店いただけるとは思っておりませんでした。侯爵様が入られるには、この店は粗末すぎますし」
「そんなことは気にしない。この店の料理をアカデミーの時から食べて見たかったんだ。やっと食べることができるし、なにより自分の領地のものが使われているなんて嬉しいことはない。これはもう、運命的じゃないか? なぁ、デリス」
そう言ってデリスの方を向くと、もう食べ始めていやがった。
「主人より先に食べ始めるなんて、そんな執事はいないぞ」
「今日は対等で良いと言われましたし、なによりこの肉汁の誘惑には逆らえませんでした」
「おいこら」
確かにめちゃくちゃ美味しいけども! すーぐ調子に乗るんだから、まったく!
「かしこまりました」
「いや、買いすぎだよこれは……」
馬車一台にどれだけ服を詰めるつもりだ……。
デリスによる着せ替え祭りはノリに乗ってしまった店員も巻き込んで、さながらファッションショーのようになってしまった。俺はもうへろへろだ。上から下まで大変だった……。
「何をおっしゃっているのですか。屋敷にあるレイラ様のお召し物が少なすぎるのが問題なのです。侯爵家ともなれば、もっとあっても良いくらいですよ」
「それは女性の場合だろう。それにビレッド地区はド田舎だぞ。めったに夜会もないし、来客だってないっていうのに……」
「王都で流行しているものですから、この辺りでの流行が終わってもビレッド地区なら数年は持ちますしいいんですよ」
「だからって買いすぎ。これだけのお金持ってきてたか?」
「それは大丈夫です。私のポケットマネーで買いましたから」
待て。この服全部でいくらになると思ってるんだ? それをポケットマネーで買った?
俺は信じられず、デリスをガン見した。
「公爵家に雇用されていた時の給金は、それはもうよかったんですよ。特に使い道もなかったので、ずっと貯めていたんです。ようやく使うことができて嬉しいです」
「……そこら辺の商人よりお金持ってるんじゃないの?」
やっぱり凄いわ、うちの執事様は。
「まぁとにかく、ランチにしよ。着替えてただけなのにやたら疲れた」
なんか今日は着替えて食べて着替えてって……着替えてばかりだな。昨日もそうだった気がする。
「なぁ、流石に服はもう良いよな?」
「えぇ。お付き合いいただきありがとうございました」
「そうか。いや、デリスが満足したならよかったよ」
これまでデリスにかけた苦労に比べたら、これくらい平気……いや、連日は無理があるけれども。
「では、お店を予約していますので行きましょうか
「予約?」
「はい。覚えていらっしゃらないかもしれませんが、昔レイラ様が行ってみたいとおっしゃっていたレストランです」
そういえば、アカデミー時代にブームになった店があったな。肉料理が美味しいとかでめちゃくちゃ気になったけど、既にぷよぷよボディだった俺。友人も作っていなかったから行くのを諦めたんだよね。もしかしてあそこかな。
「あそこの角のお店です」
「あ、やっぱりあの店だ」
王都にあるにしては、どこか庶民的な雰囲気の漂うこじんまりとしたレストラン。こっそりと見に来たことがあるその外見はあの時のままで、少しだけ色あせている。流石にあの時ほどの大盛況というわけではないだろうが、そこそこ人気を保っているようだ。
店の中に入ると、半個室のようになっている席に案内された。少し暗い店内で、机の上に置かれたランプがお洒落だ。他の席はロウソクだから、ランプが置かれている席が予約席ってことかな。
「なんか、随分オシャレな感じだな。まだ昼なのに、夜っぽくて新鮮」
「気に入りましたか?」
「……デリスのイケメンのレベルが上がって良いと思う」
「なんですかそれ」
面白そうにくすくすと笑うデリスに、また胸がキュンとした。こんなムードがあるお店でイケメンとご飯って……心臓に悪いぞ。
「お待たせいたしました」
「おおっ……」
注文していないのに運ばれてきた料理は、めちゃくちゃ美味しそうなお肉だ。じゅうじゅうと肉汁が音を立てているけど、服に飛ぶ程じゃないそれは、過去にアカデミーからたくさん貴族のお坊ちゃま達が来た時にみにつけた配慮だろうか。いや、そんなことはどうでもいい。ただただ、美味しそう……!
「なにこれ凄く美味しそう……!」
「ふふっ。ここの一番人気のメニューです。実はこのお肉、ビレッド地区から仕入れたものなんですよ」
「え、マジで!?」
思わず素の言葉が出てしまった。それくらい驚いたんだ。このお店は開店当時からビレッド地区のお肉を仕入れていたらしい。それを知ったデリスが、俺が昔行きたがっていたこともあってこの店を予約してくれたんだとか。
「まさか、ビレッド地区の領主様にご来店いただけるとは思っておりませんでした。侯爵様が入られるには、この店は粗末すぎますし」
「そんなことは気にしない。この店の料理をアカデミーの時から食べて見たかったんだ。やっと食べることができるし、なにより自分の領地のものが使われているなんて嬉しいことはない。これはもう、運命的じゃないか? なぁ、デリス」
そう言ってデリスの方を向くと、もう食べ始めていやがった。
「主人より先に食べ始めるなんて、そんな執事はいないぞ」
「今日は対等で良いと言われましたし、なによりこの肉汁の誘惑には逆らえませんでした」
「おいこら」
確かにめちゃくちゃ美味しいけども! すーぐ調子に乗るんだから、まったく!
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