来世で独身貴族ライフ楽しんでたら突然子持ちになりました〜息子は主人公と悪役令息〜

こざかな

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前編

スイカ割り

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「これはスイカだな」
「スイカ?」
「あぁ。甘くて美味いやつだ。しかし、こんなところに自生しているとはな」

じわじわと暑い夏の日。
精霊の湖に遊びに行っていた子供達が、森の中で巨大な球のような実を付けている植物を見つけたと大騒ぎしながら戻ってきた。引っ張られるままにやってきたそこには、見覚えのある立派なスイカがたくさん自生していた。

「レイラ様、去年隣国で果物盗難事件が頻発していませんでしたか?」
「・・・・・・そういえば、そんなことがあったな。結局盗難犯は捕まらなかったが・・・・・・もしかして、盗難犯がここでスイカを食べたってことか? とんだ巻き込まれ事故だぞ」

見つけてはいけない物を見つけてしまった。見てしまった以上、隣国に情報を提供しなければならない。そうなると、王宮にもその旨を報告する必要が出てくる。下手に他国とやりとりすると反逆や売国行為と疑われかねない。また書類地獄になる予感がバシバシするなぁ・・・・・・。

「レイラ、僕達何かやっちゃった?」
「駄目なことしちゃった?」

頭を抱える俺の姿を見て、ユリウスとカーディアスは不安そうに顔を見合わせている。
たまたま遊んでいて見つけてしまったもので俺が困るとは思っていなかったのだろう。ただ、驚かせようとしただけなのに、大事になりそうで二人にとっても予想外の事態。いつものように喧嘩する余裕すらないようだ。

「駄目なことじゃない。むしろお手柄だろう。果物の盗難犯がこの国に逃げ込んでいるということが分かったんだ。農家の人達も警戒できるし、国王陛下も兵を出してくれるかも知れない。大事な果物を守れるんだから、お前達を褒めても怒りはしないさ」

わしゃわしゃと、お手柄な二人の頭を撫でてやると、二人はやっと笑顔を見せた。うん。可愛い可愛い。面倒なことは大人がやればいいんだ。俺、頑張る。

「そうだ、デリス。スイカは一応野菜だぞ」
「え?」


それからは忙しい日々だった。
王宮と隣国に手紙やら報告書やらを送りまくり、調査官とお話しして報告してお話しして報告してお話して報告して・・・・・・

「や、やっと終わったぁぁぁぁ!!」
「お疲れ様です、レイラ様」

デリスが入れてくれたホットティーが疲れた身体と心に沁みるぅ!

「それにしても、自生したとは思えないほど立派なスイカ畑を燃やしてしまわないといけないなんて、もったいないですね」
「仕方ないだろう。スイカは隣のお国の特産品なんだ。下手に放っておけば問題になる可能性もある。子供達が見つけたくらいだ。悪人に見つからないとは限らない」

俺が治めている領地が火種で隣国と揉めるなんて嫌すぎ。だからもったいないけど、あの一帯は燃やすしかない。

「残念ですねぇ。カーディアス様もユリウス様も、スイカを食べるのを楽しみにしていらっしゃいましたのに」
「あぁ、そういえば食べたいって言っていたな。・・・・・・そうだ、燃やす前に食べるか」
「よろしいのですか?」
「調査官達は田舎は嫌だとばかりにみんなさっさと帰っちゃったし、どうせ燃やすんだからちょっとくらい食べても大丈夫だろ。俺もスイカ食べるの久々だし」

たくさん自生していたスイカは、調査官達が調べている間にほとんどが食べ頃をすぎてしまったが、何個か成長が遅かったものが残っていた。
思い立ったが吉日。早速子供達を連れて精霊の湖に向かう・・・・・・が、その前に。

「デリス、訓練用の木剣を一本持ってきてくれ」
「木剣、ですか?」
「あぁ。スイカは高級だからな。こんな機会はないだろうし、食べるのを我慢させていた分、楽しい思い出も作ってやろうと思うんだ」
「はぁ。かしこまりました」

デリスにも想像はできないだろう。この国ではスイカは高級品だ。貴族ならなんなく食べれても、庶民には少々お高い。そんなスイカを楽しみながら食べられる遊び。それこそーー

「「スイカ割り?」」
「そうだ。目隠しをして、他の人に案内してもらいながらスイカを木剣で叩き割るだけだ。簡単だろ?」
「うーん?」

同じ方向に首を傾げるカーディアスとユリウスに、スイカ割りの説明をするが、いまいちピンとこないらしい。
仕方なく、俺が見本を見せる。スイカ割りとか、前世含めて何年ぶりだろう。

「いいか、デリス。俺をちゃんとスイカの方に誘導するんだぞ!」
「かしこまりました」

デリスなら、あの説明でもわかってくれるだろ。ただ、目隠しをする前に見えたデリスの笑顔がどうも胡散臭いのが気になるが・・・・・・。

若干の不安を抱きつつも、地面に刺した木剣を軸にぐるぐると回ってスタート。もう俺にはどこがどっちか分からない。
とりあえず、正面に向かって木剣を構えた。

「もっと前です」
「何歩前とかで言えよ」
「少し右です」
「右だな?」
「あ、間違えました。私から見て右です」
「こら!ちゃんと案内しろよ!」

やっぱりデリスに頼むんじゃなかった・・・・・・!

今回は見本のために子供達は見ているだけにしてしまったため、子供達の手助けは期待できない。
もはやスイカ割りは、デリスと俺の心理戦のようになっていた。

「あと一歩前です。あ、距離を測るので、一度剣を振り上げてください」
「なんで距離を測るのに振り上げる必要があるんだ!?」

文句を言いつつ、俺は素直に剣を振り上げる。デリスとの戦いに疲れた俺は、もうヤケクソだった。

「そのまま、あと三歩前です」
「なんでこのまま? 一、ニ、さ・・・・・・ん?」

言われるがまま、剣を振り上げたまま歩いた三歩目。俺の唇に何かがあたった。柔らかいそれは、何故だか覚えがある。
突然の唇への刺激に呆然としていると、その柔らかいものが動いて、俺の唇を覆った。

「んんーーーー!!??」

慌てて飛び退いて目隠しを取る。目の前にはスイカではなく、デリスがニヤニヤとした笑みを浮かべて立っていた。

「デ、デリス!! お前! な、何を・・・・・・!!」
「レイラぁぁ!!」
「ふぐっ!?」

デリスを問い詰めようとした瞬間、お腹に衝撃が走った。痛みを堪えながら見ると、涙目のカーディアス。その後ろには、悔しそうな表情のユリウス。

「デリスが俺達をレイラを助けられないように魔法で捕まえてきたんだ!! 俺、レイラがデリスに操られてるのを見てるしかできなかった!!」
「は?」
「レイラ、助けられなくてごめんなさい・・・・・・」

どうやら、デリスは俺をスイカに向かわせるつもりはなく、自分の方に向かわせていたらしい。それを邪魔されないように子供達を拘束していたとは・・・・・・

「最近、お二人は私を舐めていらっしゃるようでしたから。お灸を据えようとしただけですよ」

たしかに、最近の二人はデリスの言うことを聞かずに困らせていた。

「でもだからって、スイカ割りが二人のトラウマになったらどうするのさ・・・・・・」
「そこはほら、レイラ様の出番ですよ」
「え?」
「お二人とも、悔しければ私よりも上手くレイラ様を操ってごらんなさい。でないと、レイラ様の唇はずっと私の物ですよ?」
「んなっ!?」
「レイラの唇は・・・・・・!!」
「僕達が守ります!!」

デリスの言葉によって、スイカ割りが俺を操ってキスさせる遊びになったのは言うまでもない・・・・・・。
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