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前編
39 前編完結
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「いやぁ王都で食べるよりも新鮮で美味しいな。なにより料理人の腕もいい。レイラが羨ましいな。婚約者になったんだから俺もここに住もうかなぁ」
「ローレン様にお褒めいただけて光栄ですわ。厨房の者達にもぜひお伝えさせてくださいませ」
「ぜひ伝えてくれ。それと、俺のことはジェイスでいいよ。ローレンは家の名前だし、俺はレイラの未来の夫なんだから」
「まぁ!」
「仮だ! 婚約はしてもまだ結婚するって決まったわけじゃない!」
次々と運ばれてくるいつもより圧倒的に多い料理を笑顔でぺろっと食べ続けているジェイスは、口を開けば婚約者という単語を言わずにはいられない呪いにでもかかっているようだ。
俺がカーディアスとすやすや寝ている間に屋敷中を散策していたジェイスは、出会う使用人全員に俺の婚約者だと言ってまわったらしい。そのせいで厨房の料理人たちにも庭師たちにもジェイスは俺の婚約者だと周知されてしまった。しかも重要な「仮」が抜けているせいで、俺はそのうち結婚するのだとみんなにお祝いされる始末だ。
「説明が面倒だから別にいいじゃないか。婚約者って事実は間違ってないんだから」
「子供たちがそこを重要視してるんだよ。そんなこと言ってたら認めてもらえないだろ。せっかくしぶしぶ納得してくれてたのに」
「俺もあそこまで拒否されるとは思わなかったよ。レイラのことだから嫌われてはいないだろうと思っていたけれど、想像以上に愛されていて驚いた。いくら良好な関係とは言っても、養子が養父の結婚にまであれほど反応するとは思わないだろ?」
「……けれど本当のところ、父としては認められていないと思う。カーディとはもう二年も一緒にいるけれど、一度しか父と呼んでもらったことはないし」
両親を不遇な事故で亡くしてから二年。もう二年だし、まだ二年だ。このビレッド地区に来てからは彼の心の傷を癒すことに注力してきた。貴族社会から離れたことを良いことに、これまでとはまるっきり違う生活をさせた。王都に戻ったときに困らないように勉強は必要だったけれど、好きなことを好きなだけさせて毎日楽しいと思えるように。それも、俺を父と思えない要因かもしれない。
「正直、これまで親っていうより親戚のおじさんとして接してきた自覚はあるから、今更父と言って欲しいだなんて思ってないんだけどさ……この前初めて父さんって呼ばれたとき、嬉しいって思ったんだよ。ほんと、今更なんだけどもっと父親っぽくあればよかったかなって……」
「レイラはちゃんと父親だよ。俺が驚いたくらいだぜ? お前はあの公爵家で育ったとは思えないくらい庶民的な子育てしてんだなって」
「え?」
「好きなことを好きなときに好きなだけ。勉学は最低限必要だけれど本人の向上心ややる気に任せる教育方針なんて、貴族では俺の家くらいだと思ってたぜ。貴族の中の貴族である公爵家がそんな教育方針だったわけがないし、お前がアイツらのことを考えて自分で決めたんだろ?」
でもそれは傷ついていたカーディアスに必要だった心のケアの一環だ。放任的とも言える。それは親らしいとは言えない。
「あのライアー家の跡取り息子。俺になんて言ったと思う?」
「カーディアス?」
「ああ。『俺が大人になってライアー家を取り戻したら、レイラをお前から奪ってやるんだからな!』って言ったんだぜ? まぁ、びっしょびしょに泣きわめいてたから子供の可愛い癇癪みたいだったけど、大人になったら略奪するって宣言するって凄いよな。流石パトリック家の親戚筋だと思ったよ」
「いや、それは単に子供がお母さんと結婚するって言ってるようなものだろう?」
「お前本当に分かってねぇの? あれは本気の本気。絶対将来お前のことを襲う男の目だったね」
ジェイスは呆れたようにステーキの最後の一切れを口に入れた。
いやいや、あの天使のような子がそんな目をするわけないだろ? お前の目は節穴か?
「……決めた。俺もこっちに引っ越すわ」
「はぁ⁉︎」
「まぁっ! ジェイス様もこのお屋敷に?」
「ちょっとターニャ⁉︎」
「いや、流石にそれは公爵様に睨まれそうだから、お隣さんからかな」
「そんなこと許されるわけないだろう! お前は騎士団長になるんだろ⁉︎」
そうだ。ジェイスは騎士団長になる未来が決まっている。こんなド田舎に来るわけにはいかないはずだ。というかこないで欲しい!
「確かに騎士団長になる話はいただいているが、それはまだ先の話だ。親父もまだ元気だし団長の座を降りるつもりはまったくないからな。お前にはまだ渡さんぞ! とか言って面倒くさいったらない。それに以前からこの地区の警備強化の話は上がってたんだ。俺も王都はあんまり好きじゃないし、ここの食材も気に入った! だから何の問題もないぞ」
よろしくな! と満面の笑みで宣うコイツの顔を殴り飛ばしたい。
ふつふつと湧きあがる怒りのままに殴らなかったことを数年後後悔することになるとは思いもせず、俺は心の中で盛大に叫んだのだった。
どうしてこうなった‼︎‼︎‼︎‼︎
前編 完
※
こんにちは、こざかなです。
来世で独身貴族ライフを読んでいただき、ありがとうございます!
前話からかなり時間が経ってしまい、大変お待たせして申し訳ございません……!
今年中になんとか前編を完結することができました。
この前編ではあまり子供達とのあれこれを書くことはできず、デリスとのあれこれしか入れることができず、物足りないなと思われた方も少なくないと思います。
後編ではゲーム本編の時間軸となり、成長したカーディアスとユリウス、そして少しだけ仲を深めたジェイスと、より積極的になったデリスとのあれこれをより書きたいと思っております。
一応レイラはビッチではありません(重要)が、流されやすいので気が付いたら旦那様が何人も……ということになってしまいました(笑)
それでは本年はありがとうございました!
また来年も、よろしくお願いいたします!
良いお年を!!
「ローレン様にお褒めいただけて光栄ですわ。厨房の者達にもぜひお伝えさせてくださいませ」
「ぜひ伝えてくれ。それと、俺のことはジェイスでいいよ。ローレンは家の名前だし、俺はレイラの未来の夫なんだから」
「まぁ!」
「仮だ! 婚約はしてもまだ結婚するって決まったわけじゃない!」
次々と運ばれてくるいつもより圧倒的に多い料理を笑顔でぺろっと食べ続けているジェイスは、口を開けば婚約者という単語を言わずにはいられない呪いにでもかかっているようだ。
俺がカーディアスとすやすや寝ている間に屋敷中を散策していたジェイスは、出会う使用人全員に俺の婚約者だと言ってまわったらしい。そのせいで厨房の料理人たちにも庭師たちにもジェイスは俺の婚約者だと周知されてしまった。しかも重要な「仮」が抜けているせいで、俺はそのうち結婚するのだとみんなにお祝いされる始末だ。
「説明が面倒だから別にいいじゃないか。婚約者って事実は間違ってないんだから」
「子供たちがそこを重要視してるんだよ。そんなこと言ってたら認めてもらえないだろ。せっかくしぶしぶ納得してくれてたのに」
「俺もあそこまで拒否されるとは思わなかったよ。レイラのことだから嫌われてはいないだろうと思っていたけれど、想像以上に愛されていて驚いた。いくら良好な関係とは言っても、養子が養父の結婚にまであれほど反応するとは思わないだろ?」
「……けれど本当のところ、父としては認められていないと思う。カーディとはもう二年も一緒にいるけれど、一度しか父と呼んでもらったことはないし」
両親を不遇な事故で亡くしてから二年。もう二年だし、まだ二年だ。このビレッド地区に来てからは彼の心の傷を癒すことに注力してきた。貴族社会から離れたことを良いことに、これまでとはまるっきり違う生活をさせた。王都に戻ったときに困らないように勉強は必要だったけれど、好きなことを好きなだけさせて毎日楽しいと思えるように。それも、俺を父と思えない要因かもしれない。
「正直、これまで親っていうより親戚のおじさんとして接してきた自覚はあるから、今更父と言って欲しいだなんて思ってないんだけどさ……この前初めて父さんって呼ばれたとき、嬉しいって思ったんだよ。ほんと、今更なんだけどもっと父親っぽくあればよかったかなって……」
「レイラはちゃんと父親だよ。俺が驚いたくらいだぜ? お前はあの公爵家で育ったとは思えないくらい庶民的な子育てしてんだなって」
「え?」
「好きなことを好きなときに好きなだけ。勉学は最低限必要だけれど本人の向上心ややる気に任せる教育方針なんて、貴族では俺の家くらいだと思ってたぜ。貴族の中の貴族である公爵家がそんな教育方針だったわけがないし、お前がアイツらのことを考えて自分で決めたんだろ?」
でもそれは傷ついていたカーディアスに必要だった心のケアの一環だ。放任的とも言える。それは親らしいとは言えない。
「あのライアー家の跡取り息子。俺になんて言ったと思う?」
「カーディアス?」
「ああ。『俺が大人になってライアー家を取り戻したら、レイラをお前から奪ってやるんだからな!』って言ったんだぜ? まぁ、びっしょびしょに泣きわめいてたから子供の可愛い癇癪みたいだったけど、大人になったら略奪するって宣言するって凄いよな。流石パトリック家の親戚筋だと思ったよ」
「いや、それは単に子供がお母さんと結婚するって言ってるようなものだろう?」
「お前本当に分かってねぇの? あれは本気の本気。絶対将来お前のことを襲う男の目だったね」
ジェイスは呆れたようにステーキの最後の一切れを口に入れた。
いやいや、あの天使のような子がそんな目をするわけないだろ? お前の目は節穴か?
「……決めた。俺もこっちに引っ越すわ」
「はぁ⁉︎」
「まぁっ! ジェイス様もこのお屋敷に?」
「ちょっとターニャ⁉︎」
「いや、流石にそれは公爵様に睨まれそうだから、お隣さんからかな」
「そんなこと許されるわけないだろう! お前は騎士団長になるんだろ⁉︎」
そうだ。ジェイスは騎士団長になる未来が決まっている。こんなド田舎に来るわけにはいかないはずだ。というかこないで欲しい!
「確かに騎士団長になる話はいただいているが、それはまだ先の話だ。親父もまだ元気だし団長の座を降りるつもりはまったくないからな。お前にはまだ渡さんぞ! とか言って面倒くさいったらない。それに以前からこの地区の警備強化の話は上がってたんだ。俺も王都はあんまり好きじゃないし、ここの食材も気に入った! だから何の問題もないぞ」
よろしくな! と満面の笑みで宣うコイツの顔を殴り飛ばしたい。
ふつふつと湧きあがる怒りのままに殴らなかったことを数年後後悔することになるとは思いもせず、俺は心の中で盛大に叫んだのだった。
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※
こんにちは、こざかなです。
来世で独身貴族ライフを読んでいただき、ありがとうございます!
前話からかなり時間が経ってしまい、大変お待たせして申し訳ございません……!
今年中になんとか前編を完結することができました。
この前編ではあまり子供達とのあれこれを書くことはできず、デリスとのあれこれしか入れることができず、物足りないなと思われた方も少なくないと思います。
後編ではゲーム本編の時間軸となり、成長したカーディアスとユリウス、そして少しだけ仲を深めたジェイスと、より積極的になったデリスとのあれこれをより書きたいと思っております。
一応レイラはビッチではありません(重要)が、流されやすいので気が付いたら旦那様が何人も……ということになってしまいました(笑)
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また来年も、よろしくお願いいたします!
良いお年を!!
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