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第4話 高齢者の移動 危な気な足取り
しおりを挟む茂は、ある駅まで歩いていた。
腰は曲がっており、薄毛を隠す帽子を目深にかぶり、キャリーバックを引く危なげな歩き方の老人は人目を引いた。
駅、近くまでタクシーに乗ったが、行き先を聞かれ駅の名前を言うと茂は高齢で連れもいないという事で運転手に不審がられてしまった。
誤魔化す為、駅から五分ほど前の所で下してもらった茂であった。
乗る時の足取りが怪しかったからか家出老人と思われたのか……まあ、あながち間違ってはいないが……。
茂、本人は軽やかな足取りと思っている。
だが周りからしたら少しよろけたりと、かなり危ない足取りで駅までの道のりを歩いている茂だった。
そんな茂なのだが、道端にゴミが落ちていることが我慢ならない。
地面に落ちているゴミを見つけては拾い上げゴミ箱に捨てる。
そのたびに危うく転びそうになる。
周りが声を変えるまでは至らないが、危なっかしくて仕方ない状況だった。
それでも茂はそれを繰り返しながらなんとか駅に着き、駅構内の窓口までたどり着いた。
周りは心配そうに茂を見守るが、表情が険しい茂に誰も話しかけることはなかった。
壁に寄りかかりながら茂は古い手紙の住所を見せ「ここに行きたいんじゃけど、どれに乗ったらええやろ?」と若い駅員に尋ねる。
暇そうにしていた若い駅員は窓口から茂の手紙の住所を覗き込みパソコンの画面を見ながら調べてくれている様子だった。
「はいはい、切符は二千五百円ですよ、乗り口は三番乗り場です。乗換案内のレシートを出しますね。お一人で大丈夫ですか?」と駅員は早口だが笑顔で親切に教えてくれた。
「ありがとう、虫眼鏡もあるし、大丈夫。これから娘の所に行くんです」
そう笑顔で返す茂である。
年を取ると嘘を自然につけるようになってきたものだ、そう思った茂は少し罪悪感を持ちながらも目的を遂行するためだと力強くうなずき窓口を後にした。
その後、茂は売店まで歩き列に並ぶ。
自分の順番になりスルメとコーヒーを手に取り店員に渡した。
「三百五十円です」売店員は若い女性だった。
愛想はなく無表情でお釣りを渡された茂の眉間の皺はまた深くなった。
昔は愛嬌があるおばちゃんが居たのにな。
もう辞めたんかいな。
危なっかし気に腰を曲げ茂は、そんなことを考え購入したものを荷物にしまった。
大きなキャリーバックをフラフラと運びながら歩く老人は目を引くのか通りすがる人々が皆振り返った。
気にしないで足を進め茂は先ほど言われた乗り場までたどり着く。
色々迷いながら足を動かした為、結構な時間が経ってしまっていたが、すぐに乗れる時刻と遅めの時刻の二枚、乗換案内のレシートを駅員が出していてくれていたため、余裕で間に合うことが出来た。
もう秋だというのに昨日降った雨のせいなのか湿気が多く、また寒がりな茂が服を着こみ過ぎたからか茂の額に多量の汗が浮かんだ。
そういう些細なことが積み重なり残り少ない茂の体力を奪っていった。
茂はなんとか影かかった場所まで足を進め、空いていた椅子に腰かける。
先ほど買ったコーヒーはもう温くなってしまった。
その時ざわついた声が駅内に響き渡り思わず茂は振り返った。
そこには一人の女性であるお年寄りを囲み駅員が声をかけているようだった。
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