嫌われ ライバル関係だったのに 消えたら執着されてお持ち帰りされた話

やまくる実

文字の大きさ
1 / 7

1.俺は嫌われているらしい【シュウ視点】


 眼球が大きくて綺麗な二重瞼。ブルーのとても綺麗な目だ。

 黙っていれば、そんな風に細めて、怖そうな目で見つめて来なければ誰もが見惚れてしまうだろう。

 眉間にさらに皺を寄せ、厳つい目で俺を見つめてくる。

 キーンという剣が交えるような音が次々と鳴り響く。
 周りでも少し離れたところで生徒達が剣を交えている。

 俺とコイツのように。

 外気温は頬を刺す様に冷たい風が吹いているが、動いているからか気にはならない。

 暢気に考え事をしている場合ではない。
 いつの間に間合いを詰めたのか俺も慌ててアイツの剣に応える。
 親の仇のように鋭い目を向けてくる。
 打つスピードも授業中、練習中だというのに容赦がない。

 剣先が頬を僅かに掠める。練習用の剣のおかげで血液は出ることはない。

 俺も必死に剣を交わし避けながら応える。
 砂埃も立ち上がり視界を遮る。

 こんなに激しい動きをしていたら普通の男なら汗臭さでも漂ってきそうだ。
 実際俺は臭うかもしれない、しかしコイツは見た目も苦しげな表情を浮かべていたとしても、どこか爽やかで男臭さがない。悪意を向けられているだろうにちっともそういう気にはなれない。
 身長は180cmを超えている俺とあまり変わらない。
 体格は筋肉質で、だけど着痩せするようでそんなに筋肉がある様には見えない。
 アイツの金の長髪が揺れる。緊迫した空気のはずが風に揺れているアイツの髪はキラキラしていて綺麗だ。

 だから暢気なことを考えている暇はないと言うのに……。
 俺は苦しながらもアイツの剣を数回交わした後、そのまま剣でアイツの剣を強く押した。
「クッっ」

 アイツは倒れはしなかったものの、苦しそうに片膝をつく。
 勝負はあった様だ。

 もちろん練習用の木刀に近い剣だ。本気で打ち合ったらアザにはなるが当たったとしても大きな傷を負うことはない。

 俺は手を差し出そうとしたが、アイツは反発するように俺の掌を叩き払った後、悔しそうにこちらを見つめて立ち上がった。


 アイツは俺が嫌いなのだそうだ。


 本人からそう聞いた訳ではない。
 そもそもこういった場面以外ではほとんど会話を交わしたことがない。

 だが他の皆にも俺に対して接するかの様に反抗的なのなら、気性の荒い性格なのだろうと納得するのだが、どうもそういう訳ではないらしい。


 どうして嫌われているのか、俺自身には身に覚えがなかった。
 だけど嫌われるであろう理由はある程度予想がついた。

 まあライバルと言ったらそれまでだが、とにかく俺の事が気に食わないのだろう。

 この学院は勇者を育成する学校だった。
 勇者ってどういう事だと思うだろうが、この国には魔物が多く潜んでいる。

 数百年に一度、魔王も生み出されるらしい。
 その時期ははっきりとは決まっておらず、定期的にその年の勇者候補を育成し一番成績の良いものをこの年の勇者とするのだ。
 また次の年の勇者よりも今の年の勇者の方が力を上回るのなら、前年の者が勇者を、続行することもある。


 そして俺とアイツは現在、この年の勇者候補だった。


 勇者になったメリットは魔王がまだ存在していないうちは、定期的に魔物を討伐する仕事以外は衣、食、住に困らないだけの金銭を国から与えられる。
 勇者の任期を終えたものもしっかりとした職が与えられる。

 望めば国の王女を嫁にもらう事も可能になる事もある。
 もちろんお互いが望めばだが……。

 しかもこの学院に通っている間だけは身分の差がない。

 俺は男爵家の次男、アイツは公爵家の三男、本当は対等に話をするなんてありえない二人なのだ。
 


 アイツから嫌われてはいたが俺はアイツを嫌いではなかった。

 何も俺はアイツに初めから嫌われていた訳ではない。
 アイツはだいたい俺以外には誰に対しても親切なのだ。


 まあアイツのプライベートな部分までは知らないが俺が知っている範囲ではそうだった。
 だから出会ったばかりの時はアイツは俺に対しても親切で優しかった。

 俺は無愛想だから人から避けられる事の方が多い。
 そんな中で優しくされたら嫌いになんてなれる訳はない。


 いつの間にこんな関係になってしまったのか……。

 とにかく今は嫌われている、そう実感する度に辛くなる。
 

 まあ、あの時も今と同じでほとんど会話はしていなかったが、だけどあの時と今では俺を見るアイツの目つきが全然違う。

 アイツは俺とは違い、友達が多い様だった。
 数人と言葉を交わしながら笑い合うのをよく見かけたし、簡単に言えば人気者だった。

 逆に俺は生真面目で不器用で、人付き合いは苦手。
 少し言葉を交わせるほどの友人は一人、二人はいるが友達と言って良いかは分からない。

「いい気になるなよ、次は絶対俺が勝つ」

 そう言って立ち上がったアイツ、アルバードが去っていった。

 俺が嫌いな割にはアイツは練習相手にいつも立候補してくる。
 俺はこれ以上、嫌われたくないし関わりたくないのに……。

 勇者候補の俺、筋肉バカの様に思われてそうな俺だが、実は戦いが嫌いだった。


 金銭的な問題や、次男という事で、この学院に入ったのだが、俺は戦う事を仕事にはしたくなかった。
 
感想 0

あなたにおすすめの小説

冒険者の幼馴染と、ずっとその隣にいたい男の話

くろねこや
BL
お前の隣で、一緒に歳をとって生きていくんだと思ってた。 例えお前が誰かと結婚しても、子どもが生まれても。 ◇ 15歳になると神様から魔法が与えられる世界で、たった一人魔法が使えないイスト。 火魔法と氷魔法を授かった幼馴染は冒険者になった。 オレにあるのは畑や動物たちをちょこっと元気にする力だけ…。 ところが、そこへ謎の老婆が現れて…。 え? オレも冒険者になれるの? “古代種様”って何?! ※『横書き』方向に設定してお読みください。 ※『設定 こぼれ話』は情報を追加・修正することがあります。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

「大好きです」と言ったらそのまま食べられそうです

あまさき
BL
『「これからも応援してます」と言おうと思ったら誘拐された』のその後のお話 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ リクエストにお答えしましてその後のお話🔞を書きました。 ⚠︎ ・行為に必要な色んな過程すっ飛ばしてます ・♡有り

愛妾リオネルの幸福

垣崎 奏
BL
愛妾として隠されて生きてきた第六王子リオネルが、隣国に移り大事にされるお話。 ムーンライトノベルズにも掲載しています。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。