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1.俺は嫌われているらしい【シュウ視点】
しおりを挟む眼球が大きくて綺麗な二重瞼。ブルーのとても綺麗な目だ。
黙っていれば、そんな風に細めて、怖そうな目で見つめて来なければ誰もが見惚れてしまうだろう。
眉間にさらに皺を寄せ、厳つい目で俺を見つめてくる。
キーンという剣が交えるような音が次々と鳴り響く。
周りでも少し離れたところで生徒達が剣を交えている。
俺とコイツのように。
外気温は頬を刺す様に冷たい風が吹いているが、動いているからか気にはならない。
暢気に考え事をしている場合ではない。
いつの間に間合いを詰めたのか俺も慌ててアイツの剣に応える。
親の仇のように鋭い目を向けてくる。
打つスピードも授業中、練習中だというのに容赦がない。
剣先が頬を僅かに掠める。練習用の剣のおかげで血液は出ることはない。
俺も必死に剣を交わし避けながら応える。
砂埃も立ち上がり視界を遮る。
こんなに激しい動きをしていたら普通の男なら汗臭さでも漂ってきそうだ。
実際俺は臭うかもしれない、しかしコイツは見た目も苦しげな表情を浮かべていたとしても、どこか爽やかで男臭さがない。悪意を向けられているだろうにちっともそういう気にはなれない。
身長は180cmを超えている俺とあまり変わらない。
体格は筋肉質で、だけど着痩せするようでそんなに筋肉がある様には見えない。
アイツの金の長髪が揺れる。緊迫した空気のはずが風に揺れているアイツの髪はキラキラしていて綺麗だ。
だから暢気なことを考えている暇はないと言うのに……。
俺は苦しながらもアイツの剣を数回交わした後、そのまま剣でアイツの剣を強く押した。
「クッっ」
アイツは倒れはしなかったものの、苦しそうに片膝をつく。
勝負はあった様だ。
もちろん練習用の木刀に近い剣だ。本気で打ち合ったらアザにはなるが当たったとしても大きな傷を負うことはない。
俺は手を差し出そうとしたが、アイツは反発するように俺の掌を叩き払った後、悔しそうにこちらを見つめて立ち上がった。
アイツは俺が嫌いなのだそうだ。
本人からそう聞いた訳ではない。
そもそもこういった場面以外ではほとんど会話を交わしたことがない。
だが他の皆にも俺に対して接するかの様に反抗的なのなら、気性の荒い性格なのだろうと納得するのだが、どうもそういう訳ではないらしい。
どうして嫌われているのか、俺自身には身に覚えがなかった。
だけど嫌われるであろう理由はある程度予想がついた。
まあライバルと言ったらそれまでだが、とにかく俺の事が気に食わないのだろう。
この学院は勇者を育成する学校だった。
勇者ってどういう事だと思うだろうが、この国には魔物が多く潜んでいる。
数百年に一度、魔王も生み出されるらしい。
その時期ははっきりとは決まっておらず、定期的にその年の勇者候補を育成し一番成績の良いものをこの年の勇者とするのだ。
また次の年の勇者よりも今の年の勇者の方が力を上回るのなら、前年の者が勇者を、続行することもある。
そして俺とアイツは現在、この年の勇者候補だった。
勇者になったメリットは魔王がまだ存在していないうちは、定期的に魔物を討伐する仕事以外は衣、食、住に困らないだけの金銭を国から与えられる。
勇者の任期を終えたものもしっかりとした職が与えられる。
望めば国の王女を嫁にもらう事も可能になる事もある。
もちろんお互いが望めばだが……。
しかもこの学院に通っている間だけは身分の差がない。
俺は男爵家の次男、アイツは公爵家の三男、本当は対等に話をするなんてありえない二人なのだ。
アイツから嫌われてはいたが俺はアイツを嫌いではなかった。
何も俺はアイツに初めから嫌われていた訳ではない。
アイツはだいたい俺以外には誰に対しても親切なのだ。
まあアイツのプライベートな部分までは知らないが俺が知っている範囲ではそうだった。
だから出会ったばかりの時はアイツは俺に対しても親切で優しかった。
俺は無愛想だから人から避けられる事の方が多い。
そんな中で優しくされたら嫌いになんてなれる訳はない。
いつの間にこんな関係になってしまったのか……。
とにかく今は嫌われている、そう実感する度に辛くなる。
まあ、あの時も今と同じでほとんど会話はしていなかったが、だけどあの時と今では俺を見るアイツの目つきが全然違う。
アイツは俺とは違い、友達が多い様だった。
数人と言葉を交わしながら笑い合うのをよく見かけたし、簡単に言えば人気者だった。
逆に俺は生真面目で不器用で、人付き合いは苦手。
少し言葉を交わせるほどの友人は一人、二人はいるが友達と言って良いかは分からない。
「いい気になるなよ、次は絶対俺が勝つ」
そう言って立ち上がったアイツ、アルバードが去っていった。
俺が嫌いな割にはアイツは練習相手にいつも立候補してくる。
俺はこれ以上、嫌われたくないし関わりたくないのに……。
勇者候補の俺、筋肉バカの様に思われてそうな俺だが、実は戦いが嫌いだった。
金銭的な問題や、次男という事で、この学院に入ったのだが、俺は戦う事を仕事にはしたくなかった。
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