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第15話 突然の来訪者

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<ホロ《辰也》視点>




 無事にケージに戻り、時間はかかったがデンに鍵をかけてもらった。

 一緒に俺のケージに入って来て、狭いケージの真ん中で、くつろぎ出した時はどうしようかと思ったよ。



 幸太郎がココの所、同じぐらいの時間に出かける事が多いから帰る時間も分かっている。



 ケージに入る前に壁にかかっている時計を見たが、幸太郎が最近帰ってくる時間まで、後30分しかなかった。



 もうこの挑戦も5日目になるのだが、なかなかどうして、家の中の探検も、家をでる方法も、雪の手がかり一つも見つけることはできず、日向ぼっこや、お気に入りのおもちゃでの運動や、デンをからかって遊ぶぐらいしかできない。






 って、これ、幸太郎が居る時にいつもやっている事ではないか?
 






 俺としたことが、これでは何のために幸太郎が居ないうちに行動しているか分からない。












 その時、玄関から音がした。

 ちょっと声の高い女の声が聞こえる。




 注意深く耳を玄関の方向に向け耳をすます。



「お邪魔しまーす。先生の家、結構綺麗にしているのね?」




 リビングのドアの向こうには幸太郎の低めの微かな声と、ハキハキした明るい女性の声が聞こえた。

 



 言っている言葉は遠慮がちだが、このガツガツする大胆な足音は高志と通じるものがあるな。もちろん声の高さが全然違うからな。高志ではないだろうがな。




 女のお客だと?

 幸太郎が?



 幸太郎はボソボソ喋っているのか聞き取りにくいな。




 ゆっくりとドアが開かれ俺の目に飛び込んできたのは、近所の有名私立校の制服を着た可愛い女学生だった。



 染めたように黒い黒髪に包まれ、目はカラコン入れているかのように大きく、だが化粧は控え目、清純美少女と言う感じだ。



 なんか綺麗すぎて、苦手だ。
 本能的にそう思った俺は、いつもより逃げ腰、ケージの、隅の方に寄った。



「きゃーっ! この子たちが言ってたホロちゃんとデン君ね? 可愛すぎる!」



 美少女がすごい勢いで近づいてきた。


「先生、早くケージから出してよ」



 そう、幸太郎は美少女に急かされ、やれやれと肩をすくめながら、ケージに近づき、鍵を開けやがった。




「にゃっ、ニャ(待、待て待て近い近いっ)」



 あっという間に、美少女の胸の中に抱え上げられ涙目状態の俺である。



 恐い。








 幸太郎、こいつ誰だよ? 

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