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第19話 生理現象だ。仕方ないんだ...... (ホロ視点)
しおりを挟む俺は昔よりも小さくなってしまった脳味噌をフル回転して考えていた。
警戒していた俺は、更にもう隙間が無いほどにケージの隅に寄り、プディとの距離を取っていた。ケージの、鉄の棒の跡が俺の背中についてしまうかのように。
俺の肉球は汗で湿ってきていた。
プディは真剣な表情をしてこちらを見つめている。
『全部信じろとは言わないわ。あなたが同族じゃないなら、こんな話、信じるはずないもの。まあ普通の猫なら理解することも難しいかもしれないわね。違うと言うなら、アナタは一体ナニモノなの?』
そういいながらプディは小さな腰、短い後ろ足を揺らしながら可愛らしい子猫の様にゆっくりと、俺の側に近寄っていた。
プディの両前足を見ると何故だか俺の胸の奥が、何かがつかえているように熱くなった。
俺はあの足を、見た事がある。
辰也だった頃。
子供だった時。
つい最近、夢で見た。
クウロ。
昔、家で飼っていた。大事だったアイツ。
多指症。
子供の頃に調べたらそう呼ぶらしかった。
だけどプディは違う。初対面での指の本数は普通だった。多指症な訳ではない。
『聞いてるの?』
プディはさらに顔を寄せる。
『俺がナニモノか分からないなら、お前は怖くないのかよ?』
声を上ずらせて話す俺に、呆れたようにため息をつくプディ、小さく欠伸も漏らす。
『恐くないわよ。そんな震えているアナタを見てたら怖くも無くなるわ』
プディは、ざらついた舌で俺の頬を舐めた。
粋がっても俺に勝ち目はない様だ。
『まあ、俺は普通の猫、だと思うぞ? 幸太郎の家に引き取られる前の記憶がしっかりある訳ではないから、確実とは言えないが……』
俺は身体を小さく震わせた後、困った状況に陥っていることに気が付いた。
猛烈にトイレに行きたくなったのだ。
おいおい、俺の小さな膀胱よ、こんな真剣な話をしている時になんなんだ。
『悪い、ちょっと失礼する』
俺が急に機敏に動き出したため、余裕たっぷりだったプディもびっくりしたように、こちらを見て俺の行動を見守り、呆れたように俺から目線を反らした。
俺は猫砂の敷いてある自分のトイレまで歩き猫砂の上をフミフミと歩く。
そしていつものお気に入りのポジションで、用を足し、砂をかけた。
『もう、初対面のレディの前なのよ』
呆れたように呟くプディ。
『ワリ―』
口を緩め苦笑いをする俺。
生理現象だ。仕方ないんだ……。
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