上 下
74 / 131

第74話 パワーを貯めなきゃ。私がココに来た理由(プディ視点)

しおりを挟む



 勢いよく、リビングの扉が開いた。

 慌てた様子で部屋に入ってきた幸太郎。




 ホロが居ない事にもう気がついたのかしら?

 ホロは上手い事、おばあさんやミーちゃんとやらの元に向かう事が出来たのかしら?


 もう少し手を貸す事も出来たかもしれないけど、パワーを貯めるには、自分がした行動と言うよりは、それをした事により、その対象者の変化で、自分がどんな風に思うか、心の葛藤や感情の変化、つまり、大きく悩んだ方が、自分の感情を大きく揺り動かせた方がパワーを多く貯める事ができる。


 今回、ホロは無事、やり遂げる事が出来ればかなりのパワーが貯まるだろうし、成長できている筈。



 幸太郎はスマホを見ながら慌てた様子で、部屋の中をぐるぐると歩いていた。


 てっきり家に入ってすぐ、ホロが居ないと気がつき、探し回ると思っていたが、そんな素振りも見られない。


 落ち着いているとは全然言えないけど、どういう事なのかしら?


 私はそんな幸太郎の様子を見ながら、ソファーの上でデンと一緒に丸くなっていた。


 デンからはまだ規則正しい寝息が聞こえる。

 もうしばらくは眠っているとは思う。





 ホロ、一匹で、この家を出るのは久しぶりだったのよね。

 大丈夫かしら?

 ホロに何かあったら、私も駆けつける必要があるかしら?




 ホロ......。
 あの子は一体、どういう子なのかしら?





 私の星から来た子なのかしら?


 途中で記憶でも無くしてしまったのかしら?






 分からない。







 私にはホロに話して居ない事がある。



 私には目的があった。





 その目的を果たす為、私達は数匹の仲間と、この地に降りた。

 仲間からの連絡は偶に入るが、何せ皆、感情も元々持たない、パワーも少ない。そう言う育ち方をしている。


 連絡を取り合うだけでもそれは容易な事ではなかった。


 星の王、つまり私の父親は莫大なパワーを持っていた。



 生まれた時から感情に乏しかった父は、自分が星で一番強く有らねばならない。そう思っていたのだと思う。


 私の星では代々、私の家系が星の長を引き継ぐ。


 全てを支配する絶対的権力を手にする。



 だけど、全てを支配出来る程、私の家系は元々、産まれもってパワーを持っている訳ではなかった。



 私がこの事を知ったのはある事がきっかけだった。



 私は信じていた、尊敬していた自分の父親が、実はものすごく自分勝手で怖い存在だと知ったんだ。



 その事を知ったのはある事がきっかけだった。


 私が大事に思う存在。



 私をこの星に渡ろう。

 そしてパワーを貯めよう。


 父に対抗するパワーを貯めて、私が心の底から大事に思っているあのコを自由にしたい。



 そして、そのコと、どこかでひっそりと、心から笑って、感情に思い切り正直に、笑って、怒って、泣いて、この星では普通におこなっているそんな生活を。

 私達の国では絶対出来なかったそんな生活を送りたい。


 そう、思っていた。








 ホロに言っていた。


 貴方がパワーを貯める事によってこの世界を救う事になる。


 そんな風に。



 厳密には違う。


 私は嘘つきだ。

 自分の目的を果たす為に、ホロの純粋な気持ちを利用している。





 私の父親は、卑怯な悪モノだ。
 



 本当は弱い。



 だけど周りに力を与えず、与えない様にし、持たせない様にし。

 自分だけが莫大な力を手にする仕組みを作り出してしまった。



 そして、この星を利用する事を父は思いついてしまった。



 父の事を放って置くと言う事はこの星にとっても、すごく危険な行為だ。


 と言ったって、私にはまだ父の力が大きすぎて、何とも言えない。


 ホロが父と繋がっていない。
 そうは言いきれないが、かけてみる必要があった。


 圧倒的な力に対抗するには、それを超える様な力が必要、仲間が必要だったから。



 私には、父を押さえ込み、私達の星を、あのコを救い出す為、少しでも力を貯める必要があったんだ。
 

 
しおりを挟む

処理中です...