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第113話 おさまれ俺の心臓よ(幸太郎視点)

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 比奈ちゃんと雪さんの二人を見送って、リビングまで戻ってきた俺は、扉を閉めた後、思わずその扉に寄りかかった。 

 つ、疲れた。 

 窓から少しだけ見える青空が眩しい。 

 まだまだ外は明るい。そんなに時間は立っていないという事だ。

 なのに、すごく長い時間だった気がする。 

 疲れた。 

 俺の頭はどうなってしまったというのだ。 


 ちょっとしたことなのに比奈ちゃんの反応が気になって仕方がなかったんだ。

 俺が雪さんの事を気になっていると誤解されるのも嫌だったし、自分が動揺しすぎている事がおかしいとは思っていた。


 だけど、色々分析して考える余裕もない。
 もう心臓がどうかなりそうだった。

 取り敢えず二人が帰って、俺の心の平穏は戻ってきた。

 ゆっくり高なった心音を落ち着かせ様とドアに寄りかかったまま深呼吸をしていたら、デンが俺の側まで歩いてきて俺の足をペロペロと舐めた。 


 俺はその場に座り込み、俺の目の前で寛ぎだしたデンの頭を撫でた。


 デンの黒い頭に自分の顔を埋める様に軽く乗っける。



 俺はごちゃごちゃ考える事が苦手だ。
 

 それは疲れるからだ。
 あまり色々な事に期待しない方が良いと思っている所があるのかも知れない。

 どうしてそういう考え方なのかは家庭環境もあるのかもしれない。

 俺は少し冷めきった家庭環境で育ったから。

 独り立ちして、俺の家族はデンだけだと思っていた。

 だけどそこにホロが増えた。

 俺はもうそれだけで幸せだと思っていた。





 デンはフワフワで癒される。 
 油断をするとすぐに獣臭くなるが、もう、その匂いさえも俺にとっては癒しだ。 

 俺が部屋の掃除したからというもあるだろうが、なんだがまだ甘い香りが残っている気がする。 

 雪さんは結局、本当にホロが目当てだったという事だな。 


 なんだか俺、俺にその気があるみたいに勘違いしてちょっと痛い奴だったな。 


 比奈ちゃん。 


 なんか途中、すごい色っぽい声、出したよな? 


 


 聞えていたけど聞いていないふりをするのに苦労したよ。 

 俺はあの声を聞いた後、よからぬ妄想が頭を支配してどうしようかと思ったんだ。

 顔を余計にまともに見れなくなった。

 でも最後に覗き込まれて、知っていたつもりだったけど、可愛すぎてびっくりしたんだ。

 プックリした唇が俺を誘っている様にも見えてどうしようかと思ったんだ。
 


 デン? あんな声を出させてお前は比奈ちゃんに一体何をしたんだ? 


 


 そう思いながらデンの頭の上に置いていた自分の顔を上げて少ししゃがみ込みデンと目線を合わせた。 


  ハッハッハッといつも通りのデンの息遣い、何も考えていない呑気なデンの顔だ。 

 不意打ちでベロベロっとデンに舐めまわされた。 

 
 ホロが少し離れた所でニャ―と鳴きこちらを見ている。 

 大きな欠伸をしている。 


 
 そう言えばなんだかホロを見て違和感があるんだが、その違和感が何なのか分からない。 

 少しだけずきずきと頭が痛んだ。 


 
 だけど疲れたけど、また明日から(明日来るかは分からないけど)比奈ちゃんがプディちゃんを連れてココに来る。 


 またあの穏やかな日常が戻ってくる。 

 まあ比奈ちゃんを意識する前みたいに比奈ちゃんの事を普通に見れるかは分からないけど......。




 デンが居てホロが居てプディちゃんが居て比奈ちゃんが居て 、たまに雪さんがいて

 何気ない日常だけど穏やかなあの日々がこれからずっとずっと続くんだと 


 
 そう思っていた。
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