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1章

6話 潜入と融和

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隠蔽のスキルと魔法を駆使して限りなく気配を殺したイザはラミアの里に忍び込んだ。

洞窟の中は結構入り組んでいてかなり広い。途中広場のようなところもあり更に奥に続いている。
(内部は思ったよりもかなり広いな。色々調べるにしても結構骨が折れそうだな)

広場少し行った通路に大穴が空いている。
(うわっ!あぶない!薄暗いから見落とすとこだった。侵入者をはめる罠ってところか)
穴をうまくやり過ごしてイザは更に奥へと足を運んだ。

最奥付近で重装備のラミア数人が集まっている場所を見つけた。
ラミアの戦士たちのようだ。

何やら話しているようだ。
「くそっ!また一人やられた…!」
「これでもう何人目だ…」
「幸い重傷者や死人はまだ出ていない!こちらの手勢が減らされる前に何としてもサンドワームを討伐するぞ!!」
「はっ!!」

どうやら洞窟内にサンドワームが出現していて、その対応を話し合っていたようだ。
(なるほど、サンドワームを倒すことが出来たらラミア族とも話すきっかけを作れるかもしれないな。もうすこし詳しい話が聞けるといいが)

あちこちで聞き耳を立てた情報によるとサンドワームは土の中に生息する魔物なので目が見えず魔力に反応して攻撃してくるらしい、そして土属性なので火属性しか扱えないラミアでは相性が悪いらしく苦戦している様子。
(だからあんなに重装備なのか)

「魔力に寄ってくるか…んじゃ魔力を高めたら俺を襲ってくるかもしれないな。…ん?魔力を高めるってどうやるんだ?んー、俺魔法は少しは練習したけど魔力自体の扱い方なんてまだ練習してないからなぁ…」
「とりあえずラミアさん達を巻き込まないようにするために一度あの大きな広場まで戻って色々試してみるか」

広場に着いたイザは隠蔽を解いて魔法を発動させる際に集中している要領で、体に意識を集中させた。
(魔力の扱い方は詳しくわからないけど魔法を発動するときは魔力を使っているんだろうし、こうすればきっと…)

すると地響きが近づいてくるのが聞こえる。
そしてラミアたちもその音に釣られて広場に集まってきた。
「人間!ここで何をしている!見張り者どもはどうした!」
(やべっ!サンドワームよりも先にラミアさん達に見つかった…これは面倒なことになりそう…)
「答えよ人間!!」
「いや、これにはちょっと訳がありまして」
「我らの洞窟に無断で侵入することにどんなわけがあるというのだ!返答次第ではただでは置かんぞ!!」
(当然その反応になりますよねー。さてどうしたものか…地響きはもうすぐそこまで来てる…)

(ラミアさん達はこちらを警戒してサンドワームに対して意識がおろそかになってるし、ここは彼女らを守るために一旦距離を取らなければ)
イザがそう思っていた時、地響きが真下でやんだ。
(やばっ!もうすぐそこまで来てた!これは手段を選んでらんないな!)

「ちょっとごめんね」
そういうと風の魔法でラミアたちを通路に吹き戻した。

「くっ!おのれ人間め!」
ラミアが怒鳴ったその瞬間サンドワームがイザの足元から飛び出してきた。
「なっ!(あの人間我々を助けたというのか…!?)」

(うわー思ったよりでかいな)
イザはサンドワームが飛び出してくる瞬間、風の魔法で宙に浮き攻撃をかわしていた。
「さて、試してみるか」

そういうとイザは右手に雷魔法を集中させた。
それをみてラミアは叫んだ。
「貴様!馬鹿か!?サンドワームは体表に土砂を纏っている!雷が通るわけなかろう!死にたくなければ引け!人間!」

「まぁみててよ、あっちで有名な国民的アニメの戦い方を参考にこうやって…」
そういうと左手に水の魔法を集中させた。

「人間が2属性?しかも同時…だと!?いや…浮いているのは風魔法か!3属性・・!いやそんなこと…!こいつ一体何者…」
ラミアたちは驚いている。

左手に集約させた水魔法を上にはなって広場全体に水びたしにした。
濡れることを嫌ってかサンドワームはすぐに地面へもぐろうとした。
しかしイザは間髪入れずに手に集約させていた雷魔法をサンドワームに向けて解き放った。
「いくら土を纏っていたとしても濡れていたら電気を通すだろ?」
『グヲオオオオオオオオ』
サンドワームは断末魔をあげて黒焦げになった。
「これで倒せたかな?」

ラミアたちはあっけにとられている。
ハッとして我に返ったラミアたちはサンドワーム以上の脅威と判断してイザに武器を突きつけた。
ラミアたちの武器を持つ手は震えていた。
(雷が聞きにくいサンドワームを雷属性で一撃だなんてこいつなんて魔力量…やばい…こいつは化物だ…)
イザは両手をあげて敵意がないことを示す。

しかしラミアの戦士長らしきものはイザを警戒している。
「おっ!お前はいったい何者だ!我らを殲滅しにきた冒険者か!?」
「そう言われてもなぁ。俺に敵意は在りませんって」
「人間の言葉なぞ信用できるか!」
「戦士長武器を納めなさい」
奥から声が聞こえてきた

「族長!しかし!」
奥から少し小柄なラミアが現れた。
小柄だが堂々としていて、不思議な力も感じられる。
「我々はその御仁に助けられた。そうですね?そんなお方に矛を向けることは私が許しません。人間のお方も魔力を納めていただけると助かります。」
「わかり…ました」
(なんとかこの場は落ち着いたみたいだな。最悪の場合風魔法で駆け抜けるつもりだったが、そうするとラミアさん達にもけがをさせる恐れがあったからな。俺が魔法を発動する準備をしていたのも見抜いていたな。あの人すごいな)

「助かりました。俺はイザといいます。聞きたいことがあるのでお話に伺いました」
「礼には及びません。むしろサンドワームの脅威から助けていた大なのはこちら側です。奥に案内しますついてきてください。」
案内にしたがって最奥の部屋に移動した。

「まずは我々を助けていただいたことに改めまして感謝を申し上げます。」
「気にしないでください。魔法の実験ついでに俺が戦いたくてやったことですし。」
「戦士達もお救い頂いたようですし。本当に感謝いたします。」
ラミアの族長は机に額が付きそうな程深々と頭を下げた。
それを見てラミアの戦士長らしきものも謝罪を始めた。
「我々も先ほどは大変失礼を…!」

「いえいえ、助けるためとはいえ荒っぽく吹き飛ばしてしまってこちらこそすみません」
「…いえ、ああしていただかなければ何人けが人が出ていたかわかりません」
「俺は気にしてないし。それに、怪我人が出なくて何より。だろ?それより本題に入っていいかな?」
「そうでしたね。ここには聞きたいことがあってこられた…と」
「ああ。この辺りで人間のような姿をしたエーテロイドってのを見たことないか?」
ラミアたちは全員聞きなれない単語を聞いたという雰囲気で戸惑っている。

「えーてろいど…ですか?私はここで100年以上過ごしていますがこの大地に住んでいる人間を見たという話は聞いたこともないですね…。」
「そうか」
「力になれずに申し訳ありません」
「人間以外はこの辺りでも見かけるのか?」
「そうですね。この近くで言うとドワーフとは我々も交流があります。人種はあとは南の山岳付近に一人で住んでいる変わり者のエルフくらいでしょうか」

(ドワーフにエルフか。だんだんファンタジーじみてきたな。じいさんの昔話を思い出すな…)
「…?どうかなされましたか?」
「あ、いやっ、ドワーフの集落はここから近いのか?」
「ええ、ここから南東の山岳へ向けて数刻も歩けばたどり着けると思います。案内の者をお付けいたしましょうか?」
「ああ、そうしてくれると助かるよ。」
「かしこまりました。では何方かイザ様の案内をお願いできますか?」
「その役目是非私にやらせてください!命を、そして仲間を救っていただいた方に少しでも力になりたいと存じます!」
「ではよろしくお願いします」

こうしてイザはラミアの戦士とともにドワーフの集落へ向かうこととなった。

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