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1章
7話 頼もしい仲間達
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「その、なんだ…、助けてもらったのに人間ってだけで嫌って悪かったな。」
戦士長が謝ってきた。
「そこら辺の種族間のいざこざは俺はよくわからないから別に気にしてないさ。この辺りの地理には疎いから案内を引き受けてくれて助かるよ」
「ああ、もし魔物が出たら次は私が貴方を守って見せます!といってもこの辺りには強い魔物はいませんが」
「頼もしいな。でも魔物が出たら俺も戦わせてもらうよ。色々試したいこともあるんでね」
例の角の生えたウサギや大ムカデ、蠍の魔物との遭遇はあったが。
無事にドワーフの里につくことができた。
道中現れた魔物に対しイザは色々な複合属性魔法を試し打ちしてそのたびにラミアの戦士長が驚き続けたことは言うまでもない。
里につくなり二人はドワーフたちに囲まれた。
「ラミアさんじゃねぇか!久びさだなぁ!酒は持ってきてくれたか!?」
「すまないな今日は交易に来たんじゃないんだ」
「んじゃ何をしに?」
「この方を案内してきたのだ」
「ほぉ。人間種とは珍しい。しかも人間嫌いのラミアの姉ちゃんと親しい人間なんてな。ガハハ。して、我らにどういった用ですかな?っと、まぁ立ち話も何ですしついてきてくれ。」
こうして一同は集会場へ移動した。
「狭くてすまんな。滅多に他の種族を招くことなんてないんで俺らの規格に合わせてつくってるんでさ」
「俺はさほど問題ないが…」
(ラミアさんの方を見るとなかなかに窮屈で苦しそうだ)
「わっ、私も問題ありません!」
(いやめっちゃ窮屈そうじゃん…無理しなくて外で待っててもいいのに)
「して、俺らに聞きたい話とは?」
「まずは自己紹介を。俺はイザと言います。見ての通り人間です。訳あってこの辺りでエーテロイドという人間のような姿の存在を探しています。心当たりはありませんか?」
「んー?そのえーてろいど?ってのがなんなのかわからねぇが人間種みたいな見た目をしてる奴ってことだな?」
「見たことあるのか!?っ…!」
イザは驚いて立ち上がった。と同時に天井に頭をぶつけ悶絶した。
「兄ちゃん大丈夫…じゃねぇか…」
「大…丈夫。続けてくれ…」
「そのエーテロイドかどうかはわからねぇが200年くらい前にな。森で魔物に襲われたとき人間に助けられたことがあってな。」
「200年前…」
「それ以外だと…この里が出来る前の話になるが。もともとここより少し北にあった俺らの祖先の里では2000年ほど前に、ヨゼフって名乗る人間となら交易してたって話は聞いたことあるな?」
「なっ!?」
イザはその名前を聞いて驚いた。それは祖父と同じ名前だった。そして再度天井に頭をぶつけて悶絶した。
「ほんとに大丈夫か…?」
「だい…じょうぶ…だ」
(2000年も前に!?…たまたま同じ名前ってこともあるが。まさかな…)
「ん?どうしたんだ?」
「いや気にしないでくれ。その200年前にあったって人の名前はわからないか?」
「んー。なにせ一度会ったきりだからなぁ。名前はわからねぇが白色の髪に青い瞳の綺麗な嬢ちゃんだったような?」
(白髪に青い瞳…こっちはマキナと同じ特徴だからエーテロイドの可能性が高いな)
「その人はどこから来たとか、どこへ行くといってたかわかるか?」
「聖王都へ行くって言ってたような?」
「聖王都?聖王都ってどこにあるんだ?」
「兄ちゃん聖王都も知らねえのかい?一体どんな田舎に住んでたんだい?」
「わけあって世情に疎くて…はは。」
「聖ファーレン王国の聖王都フォスタリア。世界の3大主要都市だ。」
「3大ってことは他にも同様の都市が?」
「かー!ほんとに何も知らねぇな。北の聖ファーレン王国。東のベルンフォード王国、西のゼルメリス王国それぞれの主要都市がフォスタリア、アルセンテス、ギルガンドだ。」
「なるほど。北の王国にはどうやって行けばいいんだ?」
「この大地から直接行くのはちと厳しいな」
「というと?」
「北にそびえる山脈はここに来るときにも見えてただろう?あの山脈は通称デスマウンテン。標高9000mを超える山々もそうだが、山頂付近には竜種が住んでるって噂だ。とても生きては超えられねぇ。」
「なら他の2国にはいけるってことか?」
「竜種こそいないが強力な魔物と高い山々があるのは変わらねぇから山越えは無謀だろう。ここからだと南の関所を超えた先にあるイャーリスを経由していくのが無難だろうな。」
「いい情報をありがとう。南に向かってみることにするよ。」
「気を付けるんだな。関所付近には最近シルバーウルフやタイラントボアって大型の魔物が確認されてるそうだし外からの荷物もほとんど届かなくなったくらいだ。」
(ん?シルバーウルフ?銀の狼?銀狼族?…まさかな)
「この方なら問題あるまい。」
「おいおい、ラミアのねぇちゃんよりこの人間のあんちゃんの方が強いってのかい?冗談だろう。がはは」
「冗談ではない。ラミアの戦士10人がかりでも仕留められなかったサンドワームを魔法で一撃だ。」
「なんと…信じられねぇ。お前さん一体何者だい?もしかして人間のふりして人を殺して回るって魔族…!?」
「ただの人間ですよ!ちょっと魔法が得意なだけの」
「そ、それならいいや、俺らは戦闘にはあんま興味がないんでね。けど、魔法が得意っつったな?兄ちゃん火の魔法は使えるか?」
「使えるけどどうして?」
「なら情報量としてちょっと手伝ってくれねぇか?」
「俺にできることなら」
「ラミアの姉ちゃんもちょっと頼むわ。いつものなっ」
(いつもの…?火の魔法?飯か風呂でも支度しろってのかな?)
いわれるがままに二人はドワーフの工房に連れてこられた。
そこでは数人のドワーフが鍛冶を営んでいた。
「ダメだ!火力が足りねぇ!」
「やっぱ魔鉱石の性能を限界まで引き出すには従来の魔石を使った火力では限界があるようだ」
「やはりだめか。そう思って助っ人を連れてきている。」
「なんじゃラミアの姉ちゃんじゃないか。それと…こりゃ珍しい!人間の兄ちゃんとは!珍しい客人だがその二人がどうしたんじゃ?」
「まぁ物は試しってやつさ、お二人さんちょっとこのかまどに火の魔法を注いでくれねぇか?」
「はぁ」
二人は言われるがままに火の魔法を使った。
「おおおおおおお、この火力!この温度!これなら魔鉱石を瞬時に溶かして精製できるかもしれん!」
「だろっ?のこりの窯のと常備用の魔石にも頼むぜ」
窯の前に立って火の魔法と魔石に魔法を込めていった。
(なるほど、この魔石ってのは魔法を封じ込めることが出来るのか。そして封じた魔法はあとでそのまま使えると。蓄電池の魔法版って感じか)
「これって熱ければ熱い方がいいですか?」
「もちろん!ありったけの火力を頼むぜあんちゃん。でも窯はぶっ壊さない程度の大きさで頼むな。ガハハ」
「ありったけの温度ね。りょーかい。それじゃあれを試してみるか。火の魔法と光の魔法を合成して光線の魔法!」
(レーザーをイメージして作ったけどこれならきっと普通の火よりもうんと火力は高いはず。それに定点照射できるから分散しないしね)
「なっ!!兄ちゃんなんだその魔法は!ストップストップ!魔鉱がそんな温度耐えられねぇ!!燃え尽きちまうよ!!」
「悪い悪い、初めてやってみたんで加減がわからなくてな。火の魔法だけにしとくよ」
「…いや、もしかするともしかするかもしれん」
「お前まさかあれを…」
「ああ、行けるかも知れねぇぜこれは!」
「おお!だとしたら儂らの念願がかなうのか!!」
「なんとまさか!生きてるうちにその製法を拝めるとは!!」
「んじゃちょっと待ってな!」
なんだがドワーフ5人で勝手に盛り上がっている。
イザはラミアと顔を見合わせて何に盛り上がっているのかわからないという顔をして首を傾げた。
暫くすると先ほどのドワーフが何やら青い鉱石を持って戻ってきた。
「こいつぁアダマンタイトって代物でとてつもなく硬い上に並みの魔法は受け付けねぇ。魔法無しでこいつを溶かす温度までもっていくなんて不可能なんで、火入れをしても無駄。だからこいつの加工は長い年月をかけて一流の鍛冶屋が20年~30年掛けて成形していくのが普通。なんだが…。完璧な性能を引き出すにはそれじゃダメなんだ。俺らの祖先の話によると、古の時代にはこの鉱石を融解することが可能な魔高炉というものがあったらしい。しかしそんな炉の製法なんて数千年前に失われちまってるってわけさ。がだ…」
そこまで言うとドワーフはイザの方見た。
「なるほど。俺の魔法でそいつを溶かせないか試して見ればいいんだな」
「さすがあんちゃん話がはえぇや!いっちょ試してみてくれ!」
イザはアダマンタイトに向けてさっきの魔法を照射してみた。
はじめは全く微動だにしなかったが、しばらく照射を続けると徐々に軟化して形が変わり始めた。
「おおおおおおお!!!何たることだ!アダマンタイトが融解しはじめておる!信じられん!」
「夢にまで見た古代の製法が!!」
「奇跡じゃ!奇跡じゃ!」
「これなら数千年前の製法で夢にまで見た最高の鍛冶仕事ができるぞい!」
「おらぁこいつが叩けたらもう死んでもいい!」
「酒だ!酒を持ってこい!!」
ドワーフたちが大はしゃぎで盛り上がっている
「兄ちゃん一体何者だ?俺ぁ600年くらいは生きてるが、こんな魔法見たことも聞いたこともねぇぞ?」
「ははは、普通の人間ですよ」
「普通の…ねぇ、まぁいいや、ありがとよ!なぁ兄ちゃんはどこに住んでるんだ?それだけの魔法が使えるんだ上級冒険者か?…まさかどこぞの王宮の宮廷魔導士様か!?」
「いやいや。ここより西の森の中にある湖の畔に家を構えています」
「なっ!あそこにはシルバーウルフの縄張りだろう!?、それに危険な魔物もうようよ沸く死の森じゃねぇか!人はおろか外の魔物も近づこうとしねぇとこだぞ!そんなとこに住んでるってほんとにあんた何者だい!?」
(やっぱシルバーウルフって銀牙達のことだったー!)
「ははは。普通の人間です」
「…まぁいいや。兄ちゃん。いや…イザの旦那。俺らドワーフを雇う気はねぇか?」
「え?雇うって言っても俺はお金なんて持ってないしなぁ」
「ガハハ!金なんて要らねぇよ。イザ殿の先ほどの魔法は俺らに希望を与えてくれた。是非とも俺らに傍で仕事をさせてほしい。まぁさっきの魔法でちぃとばかし鍛冶仕事の方を手伝ってくれたら俺らは何も文句ねぇ」
(悪い人たちじゃなさそうだし、手先が器用なドワーフたちが一緒に暮らしてくれるんならこっちとしては大助かりだし断る理由はないか)
「魔法で鉱石を溶かす程度ならいつでも引き受けます」
「んじゃOKってことだな!おいみんな聞いたか!?ここ閉めて旦那の拠点に工房を構えるぞ!支度しろ!」
「あいさっ!」
「支度をいそげ!」
ドワーフたちはテンションが上がってお祭り騒ぎ。
ひとまず夜も遅いので今夜はドワーフの里に止めてもらい翌日出発することとなった。
ドワーフたちは一晩中酒を飲んで騒いでいた。
ラミアの戦士長も酒を飲んで楽しそうだ。
(みんな楽しそうだな。こうやってたくさんの人と団欒を楽しむのっていつぶりだろうか…悪くないな。)
翌日、一行はドワーフ5人ともに一度挨拶をしにラミアの里に向かっていた。
「案内を付けていただきありがとうございました。おかげで有益な情報を得ることが出来ました」
「我が同胞がお役に立てたようで何よりです。そしてそちらのドワーフの方々は…?」
「ああ、彼らは俺の拠点に移り住みたいといってくれまして、それで…ははは」
「そうですか。ドワーフ―の方々はイザさんの元で…」
「そうなんです。なんか楽しそうにしてましたし断り切れずに…ははは」
「なるほど、(イザ様は断るのが苦手…では…)ついでに我々ラミア族も一緒にいかがでしょう?」
「え?」
「1種族も2種族も大差ないでしょう?」
ラミアの族長はニコッと笑って言った。
「いやいや、ラミアさん達はこの洞窟があるじゃないですか!?」
「イザ様?工房の窯や魔石への火入れを一人で回すおつもりですか?幸い我々は皆が火の魔法を得意としています。イザさんの手を煩わせることなくこなせますよ。それにそろそろ冬がやってきます。採取や狩猟で人手は多いに越したことはないと思いますよ?過酷な寒さを乗り切るために火の魔法で暖を取るのも有益かと思いますし」
「まぁ確かに…」
(なんかいいように言いくるめられてる気がするけど、実際ラミアさんの言うとおりだし…この際どうにでもなれ!)
「わかりました…よろしくおねがいします」
「まぁ!それでは我々も受け入れていただけるということで。ふふふ。みなさん準備をよろしくお願いします。」
なんだかんだ大所帯になっちゃったなぁ。まぁ楽しそうだからいいか。
(こんな大所帯で帰ったら銀牙やマティアはびっくりするかな?いやマティアはいつも通りな気がするな。)
丁度その頃拠点では
畑に水をやりつつ会話する銀牙とマティア。
「イザさん遅いですねぇマティアさん」
「ご主人様は大丈夫。ご主人様が居ない間はトマトの番まかされた」
「トマトの番ってマティアさん食べてるだけで世話してるのほとんど俺だけじゃないですかぁ~!他の作物もあるんですよ!枯らしちゃったらイザさんになんていわれるか…!」
魔物の来ずに暇なので二人のやりとりをのんびり昼寝しつつ聞いている警備担当の銀狼たちであった。
戦士長が謝ってきた。
「そこら辺の種族間のいざこざは俺はよくわからないから別に気にしてないさ。この辺りの地理には疎いから案内を引き受けてくれて助かるよ」
「ああ、もし魔物が出たら次は私が貴方を守って見せます!といってもこの辺りには強い魔物はいませんが」
「頼もしいな。でも魔物が出たら俺も戦わせてもらうよ。色々試したいこともあるんでね」
例の角の生えたウサギや大ムカデ、蠍の魔物との遭遇はあったが。
無事にドワーフの里につくことができた。
道中現れた魔物に対しイザは色々な複合属性魔法を試し打ちしてそのたびにラミアの戦士長が驚き続けたことは言うまでもない。
里につくなり二人はドワーフたちに囲まれた。
「ラミアさんじゃねぇか!久びさだなぁ!酒は持ってきてくれたか!?」
「すまないな今日は交易に来たんじゃないんだ」
「んじゃ何をしに?」
「この方を案内してきたのだ」
「ほぉ。人間種とは珍しい。しかも人間嫌いのラミアの姉ちゃんと親しい人間なんてな。ガハハ。して、我らにどういった用ですかな?っと、まぁ立ち話も何ですしついてきてくれ。」
こうして一同は集会場へ移動した。
「狭くてすまんな。滅多に他の種族を招くことなんてないんで俺らの規格に合わせてつくってるんでさ」
「俺はさほど問題ないが…」
(ラミアさんの方を見るとなかなかに窮屈で苦しそうだ)
「わっ、私も問題ありません!」
(いやめっちゃ窮屈そうじゃん…無理しなくて外で待っててもいいのに)
「して、俺らに聞きたい話とは?」
「まずは自己紹介を。俺はイザと言います。見ての通り人間です。訳あってこの辺りでエーテロイドという人間のような姿の存在を探しています。心当たりはありませんか?」
「んー?そのえーてろいど?ってのがなんなのかわからねぇが人間種みたいな見た目をしてる奴ってことだな?」
「見たことあるのか!?っ…!」
イザは驚いて立ち上がった。と同時に天井に頭をぶつけ悶絶した。
「兄ちゃん大丈夫…じゃねぇか…」
「大…丈夫。続けてくれ…」
「そのエーテロイドかどうかはわからねぇが200年くらい前にな。森で魔物に襲われたとき人間に助けられたことがあってな。」
「200年前…」
「それ以外だと…この里が出来る前の話になるが。もともとここより少し北にあった俺らの祖先の里では2000年ほど前に、ヨゼフって名乗る人間となら交易してたって話は聞いたことあるな?」
「なっ!?」
イザはその名前を聞いて驚いた。それは祖父と同じ名前だった。そして再度天井に頭をぶつけて悶絶した。
「ほんとに大丈夫か…?」
「だい…じょうぶ…だ」
(2000年も前に!?…たまたま同じ名前ってこともあるが。まさかな…)
「ん?どうしたんだ?」
「いや気にしないでくれ。その200年前にあったって人の名前はわからないか?」
「んー。なにせ一度会ったきりだからなぁ。名前はわからねぇが白色の髪に青い瞳の綺麗な嬢ちゃんだったような?」
(白髪に青い瞳…こっちはマキナと同じ特徴だからエーテロイドの可能性が高いな)
「その人はどこから来たとか、どこへ行くといってたかわかるか?」
「聖王都へ行くって言ってたような?」
「聖王都?聖王都ってどこにあるんだ?」
「兄ちゃん聖王都も知らねえのかい?一体どんな田舎に住んでたんだい?」
「わけあって世情に疎くて…はは。」
「聖ファーレン王国の聖王都フォスタリア。世界の3大主要都市だ。」
「3大ってことは他にも同様の都市が?」
「かー!ほんとに何も知らねぇな。北の聖ファーレン王国。東のベルンフォード王国、西のゼルメリス王国それぞれの主要都市がフォスタリア、アルセンテス、ギルガンドだ。」
「なるほど。北の王国にはどうやって行けばいいんだ?」
「この大地から直接行くのはちと厳しいな」
「というと?」
「北にそびえる山脈はここに来るときにも見えてただろう?あの山脈は通称デスマウンテン。標高9000mを超える山々もそうだが、山頂付近には竜種が住んでるって噂だ。とても生きては超えられねぇ。」
「なら他の2国にはいけるってことか?」
「竜種こそいないが強力な魔物と高い山々があるのは変わらねぇから山越えは無謀だろう。ここからだと南の関所を超えた先にあるイャーリスを経由していくのが無難だろうな。」
「いい情報をありがとう。南に向かってみることにするよ。」
「気を付けるんだな。関所付近には最近シルバーウルフやタイラントボアって大型の魔物が確認されてるそうだし外からの荷物もほとんど届かなくなったくらいだ。」
(ん?シルバーウルフ?銀の狼?銀狼族?…まさかな)
「この方なら問題あるまい。」
「おいおい、ラミアのねぇちゃんよりこの人間のあんちゃんの方が強いってのかい?冗談だろう。がはは」
「冗談ではない。ラミアの戦士10人がかりでも仕留められなかったサンドワームを魔法で一撃だ。」
「なんと…信じられねぇ。お前さん一体何者だい?もしかして人間のふりして人を殺して回るって魔族…!?」
「ただの人間ですよ!ちょっと魔法が得意なだけの」
「そ、それならいいや、俺らは戦闘にはあんま興味がないんでね。けど、魔法が得意っつったな?兄ちゃん火の魔法は使えるか?」
「使えるけどどうして?」
「なら情報量としてちょっと手伝ってくれねぇか?」
「俺にできることなら」
「ラミアの姉ちゃんもちょっと頼むわ。いつものなっ」
(いつもの…?火の魔法?飯か風呂でも支度しろってのかな?)
いわれるがままに二人はドワーフの工房に連れてこられた。
そこでは数人のドワーフが鍛冶を営んでいた。
「ダメだ!火力が足りねぇ!」
「やっぱ魔鉱石の性能を限界まで引き出すには従来の魔石を使った火力では限界があるようだ」
「やはりだめか。そう思って助っ人を連れてきている。」
「なんじゃラミアの姉ちゃんじゃないか。それと…こりゃ珍しい!人間の兄ちゃんとは!珍しい客人だがその二人がどうしたんじゃ?」
「まぁ物は試しってやつさ、お二人さんちょっとこのかまどに火の魔法を注いでくれねぇか?」
「はぁ」
二人は言われるがままに火の魔法を使った。
「おおおおおおお、この火力!この温度!これなら魔鉱石を瞬時に溶かして精製できるかもしれん!」
「だろっ?のこりの窯のと常備用の魔石にも頼むぜ」
窯の前に立って火の魔法と魔石に魔法を込めていった。
(なるほど、この魔石ってのは魔法を封じ込めることが出来るのか。そして封じた魔法はあとでそのまま使えると。蓄電池の魔法版って感じか)
「これって熱ければ熱い方がいいですか?」
「もちろん!ありったけの火力を頼むぜあんちゃん。でも窯はぶっ壊さない程度の大きさで頼むな。ガハハ」
「ありったけの温度ね。りょーかい。それじゃあれを試してみるか。火の魔法と光の魔法を合成して光線の魔法!」
(レーザーをイメージして作ったけどこれならきっと普通の火よりもうんと火力は高いはず。それに定点照射できるから分散しないしね)
「なっ!!兄ちゃんなんだその魔法は!ストップストップ!魔鉱がそんな温度耐えられねぇ!!燃え尽きちまうよ!!」
「悪い悪い、初めてやってみたんで加減がわからなくてな。火の魔法だけにしとくよ」
「…いや、もしかするともしかするかもしれん」
「お前まさかあれを…」
「ああ、行けるかも知れねぇぜこれは!」
「おお!だとしたら儂らの念願がかなうのか!!」
「なんとまさか!生きてるうちにその製法を拝めるとは!!」
「んじゃちょっと待ってな!」
なんだがドワーフ5人で勝手に盛り上がっている。
イザはラミアと顔を見合わせて何に盛り上がっているのかわからないという顔をして首を傾げた。
暫くすると先ほどのドワーフが何やら青い鉱石を持って戻ってきた。
「こいつぁアダマンタイトって代物でとてつもなく硬い上に並みの魔法は受け付けねぇ。魔法無しでこいつを溶かす温度までもっていくなんて不可能なんで、火入れをしても無駄。だからこいつの加工は長い年月をかけて一流の鍛冶屋が20年~30年掛けて成形していくのが普通。なんだが…。完璧な性能を引き出すにはそれじゃダメなんだ。俺らの祖先の話によると、古の時代にはこの鉱石を融解することが可能な魔高炉というものがあったらしい。しかしそんな炉の製法なんて数千年前に失われちまってるってわけさ。がだ…」
そこまで言うとドワーフはイザの方見た。
「なるほど。俺の魔法でそいつを溶かせないか試して見ればいいんだな」
「さすがあんちゃん話がはえぇや!いっちょ試してみてくれ!」
イザはアダマンタイトに向けてさっきの魔法を照射してみた。
はじめは全く微動だにしなかったが、しばらく照射を続けると徐々に軟化して形が変わり始めた。
「おおおおおおお!!!何たることだ!アダマンタイトが融解しはじめておる!信じられん!」
「夢にまで見た古代の製法が!!」
「奇跡じゃ!奇跡じゃ!」
「これなら数千年前の製法で夢にまで見た最高の鍛冶仕事ができるぞい!」
「おらぁこいつが叩けたらもう死んでもいい!」
「酒だ!酒を持ってこい!!」
ドワーフたちが大はしゃぎで盛り上がっている
「兄ちゃん一体何者だ?俺ぁ600年くらいは生きてるが、こんな魔法見たことも聞いたこともねぇぞ?」
「ははは、普通の人間ですよ」
「普通の…ねぇ、まぁいいや、ありがとよ!なぁ兄ちゃんはどこに住んでるんだ?それだけの魔法が使えるんだ上級冒険者か?…まさかどこぞの王宮の宮廷魔導士様か!?」
「いやいや。ここより西の森の中にある湖の畔に家を構えています」
「なっ!あそこにはシルバーウルフの縄張りだろう!?、それに危険な魔物もうようよ沸く死の森じゃねぇか!人はおろか外の魔物も近づこうとしねぇとこだぞ!そんなとこに住んでるってほんとにあんた何者だい!?」
(やっぱシルバーウルフって銀牙達のことだったー!)
「ははは。普通の人間です」
「…まぁいいや。兄ちゃん。いや…イザの旦那。俺らドワーフを雇う気はねぇか?」
「え?雇うって言っても俺はお金なんて持ってないしなぁ」
「ガハハ!金なんて要らねぇよ。イザ殿の先ほどの魔法は俺らに希望を与えてくれた。是非とも俺らに傍で仕事をさせてほしい。まぁさっきの魔法でちぃとばかし鍛冶仕事の方を手伝ってくれたら俺らは何も文句ねぇ」
(悪い人たちじゃなさそうだし、手先が器用なドワーフたちが一緒に暮らしてくれるんならこっちとしては大助かりだし断る理由はないか)
「魔法で鉱石を溶かす程度ならいつでも引き受けます」
「んじゃOKってことだな!おいみんな聞いたか!?ここ閉めて旦那の拠点に工房を構えるぞ!支度しろ!」
「あいさっ!」
「支度をいそげ!」
ドワーフたちはテンションが上がってお祭り騒ぎ。
ひとまず夜も遅いので今夜はドワーフの里に止めてもらい翌日出発することとなった。
ドワーフたちは一晩中酒を飲んで騒いでいた。
ラミアの戦士長も酒を飲んで楽しそうだ。
(みんな楽しそうだな。こうやってたくさんの人と団欒を楽しむのっていつぶりだろうか…悪くないな。)
翌日、一行はドワーフ5人ともに一度挨拶をしにラミアの里に向かっていた。
「案内を付けていただきありがとうございました。おかげで有益な情報を得ることが出来ました」
「我が同胞がお役に立てたようで何よりです。そしてそちらのドワーフの方々は…?」
「ああ、彼らは俺の拠点に移り住みたいといってくれまして、それで…ははは」
「そうですか。ドワーフ―の方々はイザさんの元で…」
「そうなんです。なんか楽しそうにしてましたし断り切れずに…ははは」
「なるほど、(イザ様は断るのが苦手…では…)ついでに我々ラミア族も一緒にいかがでしょう?」
「え?」
「1種族も2種族も大差ないでしょう?」
ラミアの族長はニコッと笑って言った。
「いやいや、ラミアさん達はこの洞窟があるじゃないですか!?」
「イザ様?工房の窯や魔石への火入れを一人で回すおつもりですか?幸い我々は皆が火の魔法を得意としています。イザさんの手を煩わせることなくこなせますよ。それにそろそろ冬がやってきます。採取や狩猟で人手は多いに越したことはないと思いますよ?過酷な寒さを乗り切るために火の魔法で暖を取るのも有益かと思いますし」
「まぁ確かに…」
(なんかいいように言いくるめられてる気がするけど、実際ラミアさんの言うとおりだし…この際どうにでもなれ!)
「わかりました…よろしくおねがいします」
「まぁ!それでは我々も受け入れていただけるということで。ふふふ。みなさん準備をよろしくお願いします。」
なんだかんだ大所帯になっちゃったなぁ。まぁ楽しそうだからいいか。
(こんな大所帯で帰ったら銀牙やマティアはびっくりするかな?いやマティアはいつも通りな気がするな。)
丁度その頃拠点では
畑に水をやりつつ会話する銀牙とマティア。
「イザさん遅いですねぇマティアさん」
「ご主人様は大丈夫。ご主人様が居ない間はトマトの番まかされた」
「トマトの番ってマティアさん食べてるだけで世話してるのほとんど俺だけじゃないですかぁ~!他の作物もあるんですよ!枯らしちゃったらイザさんになんていわれるか…!」
魔物の来ずに暇なので二人のやりとりをのんびり昼寝しつつ聞いている警備担当の銀狼たちであった。
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さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
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