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奇才と呼ぶのにふさわしい人物
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私の人生の中で奇才と呼ぶのにふさわしい人物が一人いる。その人物の名は『秋冬遥夏』である。なぜ、彼が奇才と呼ぶのにふさわしい人物かというのを私が彼に出会った時からふりかえりながら話してみよう。
彼との出会いは大学二年生の時である。大学の講義で教授が一枚のリアクションペーパーを読み上げた。
「私は、小説で賞を獲ったことがある」
から始まり、一分程度読み上げられていたと思う。私はその最初の一節に衝撃を受け、あとの話は覚えていない。私は大学二年生になっても漫画の賞を獲ったことさえなければ、応募すらしたことがないのだ。自分が怠けているうちに受賞をし終えた者がいる。
漫画と小説、似たような創作者同士会ってみたい。受賞した人物とはどんな人物なのだろう。いろいろなことが頭をよぎったが、そのほとんどが焦りと興味で構成されていたことは言うまでもない。
私はすぐに彼を見つけ出そうと動き始めた。
後日、大学でものすごく顔が広い友だちに彼の話を聴くことにした。すると、彼そのものの存在は教えてくれはしなかったがヒントをくれた。そのヒントを頼りにまた別の友だちを訪ねた。すると、その子がいつも一緒に行動をしている二人のどちらかだということに気づいた。
また別日、例の二人のうちの一人が講義開始時刻の二十分前に席に着いた。彼らは好んで講義場全体の一番前の席に毎回座る。
一か八かで話しかけた。まずは共通の友だちの話で話しかけよう。
「○○君の友だちだよね。私も○○君の高校の時からの友だちなんだ」。
最悪だ。あまりにも不審者すぎる。勢いで行動するべきではなかった、相手も引いている。そりゃそうだ、突然現れた奴に友達マウントをとられたようなものなのだから。
彼は一瞬だけ驚いていたがすぐに笑顔で会話を続けてくれた、優しすぎる。私なら一歩引いて考え直すレベルなのに。
勢いに任せて自分が漫画を描いていることを伝えた。すると、彼は自身が秋冬遥夏という名前で小説を書き、賞を獲ったことを話し出してくれた。
「彼だ、彼が私の探し求めていた人物だ」。
そうだとわかるとさっきまでは感じていなかった緊張感が一気に身体を包ませる。ガチガチに緊張しながら賞を獲った作品について聴いてみた。どうやら『田中カメレオン』という作品名らしい。どういう意味で、なにを想像しながら、どういうところに注目すべきなのか徹底的に聴いた。
一週間が経ち、秋冬遥夏のリアクションペーパーを読み上げた教授の講義が始まった。
よく観察していると彼は教授によく呼ばれ、どういった小説を書き、秋冬遥夏自身はどういう小説を好み読み進めるのかなどを聴かれていた。
正直に言おう。おかしな話、当時私は嫉妬をしていた。同時に、自分がどこの立ち位置で秋冬遥夏という人物をみていいのかわからなかった時期でもある。
講義中に彼にマイクが渡った、講義内容の感想を言うために。常人なら、一言や二言話せば次の人にマイクを譲るだろう。なんならマイクが自分のもとに渡ってこないことを祈る人もいると思う。しかし彼は違った、マイクが彼に渡った瞬間にわかった。この講義が彼のモノになったと。彼は自分の感想を言った後に彼自身の考え方を有名な小説で例え、その小説を知っているかを講義場の学生たちに質問をし、その小説の簡単なあらすじを説明しだした。言葉の節々に知性を感じる。
このとき、私は誰に対して嫉妬をしていたのかわからなくなったと同時に、私が秋冬遥夏という人物に適うわけがないと実感した。
人と話せば話し相手に寄り添い、話し相手を楽しませながら会話ができる。ペンを持たせれば感動する話が書ける。マイクを持たせれば講義ができる。まさに彼は『奇才と呼ぶのにふさわしい人物』と言える者だろう。
彼の代表作『田中カメレオン』を是非、私の絵で漫画化したい。いつしかそう思うようになっていた。そんな矢先に彼から自身の小説『田中カメレオン』を漫画にしてみないかという提案がされた。奇才は他人の考えていることまでわかるのかと思った。
断るわけがない、断る理由が見つからない。すぐに構想を二人で練り始めた。昼休み、空き時間、放課後とたくさんの時間が過ぎていった、楽しかった。楽しい以上の言葉で表したいけれど、寺村大貴では表せない。あぁ、こんなとき秋冬遥夏ならすぐにその場面に最適な言葉で表現できるのだろう。
『田中カメレオン』を描くにあたり読者はどう感じたのか、何を想像しながら読んでいたのかを参考までに調べてみた。
すると、いくつもの人の心を動かしたコメントがでてきた。奇才は、自身からは直接見ることができない沢山の人の動機になり、楽しませることができるのだなとわからされた。
講義前、彼の周りには沢山の人が集まる。それは、彼が小説で賞を獲ったから、ではない。彼は誰よりも人の心に寄り添うことができ、彼は誰よりも相手のことを楽しませることができ、何よりも彼自身が面白いからである。一発ギャグ、ノリ突っ込み、話の引き出し口の多さ、彼自身の考え方。それらが彼を面白くする秘訣であり、奇才に仕立て上げるものなのだろう。
何度でも言おう。彼は、秋冬遥夏は『奇才と呼ぶのにふさわしい人物』である。
彼ほど奇才という言葉が合う人は今後想像できないし、出会うこともないだろう。
彼との出会いは大学二年生の時である。大学の講義で教授が一枚のリアクションペーパーを読み上げた。
「私は、小説で賞を獲ったことがある」
から始まり、一分程度読み上げられていたと思う。私はその最初の一節に衝撃を受け、あとの話は覚えていない。私は大学二年生になっても漫画の賞を獲ったことさえなければ、応募すらしたことがないのだ。自分が怠けているうちに受賞をし終えた者がいる。
漫画と小説、似たような創作者同士会ってみたい。受賞した人物とはどんな人物なのだろう。いろいろなことが頭をよぎったが、そのほとんどが焦りと興味で構成されていたことは言うまでもない。
私はすぐに彼を見つけ出そうと動き始めた。
後日、大学でものすごく顔が広い友だちに彼の話を聴くことにした。すると、彼そのものの存在は教えてくれはしなかったがヒントをくれた。そのヒントを頼りにまた別の友だちを訪ねた。すると、その子がいつも一緒に行動をしている二人のどちらかだということに気づいた。
また別日、例の二人のうちの一人が講義開始時刻の二十分前に席に着いた。彼らは好んで講義場全体の一番前の席に毎回座る。
一か八かで話しかけた。まずは共通の友だちの話で話しかけよう。
「○○君の友だちだよね。私も○○君の高校の時からの友だちなんだ」。
最悪だ。あまりにも不審者すぎる。勢いで行動するべきではなかった、相手も引いている。そりゃそうだ、突然現れた奴に友達マウントをとられたようなものなのだから。
彼は一瞬だけ驚いていたがすぐに笑顔で会話を続けてくれた、優しすぎる。私なら一歩引いて考え直すレベルなのに。
勢いに任せて自分が漫画を描いていることを伝えた。すると、彼は自身が秋冬遥夏という名前で小説を書き、賞を獲ったことを話し出してくれた。
「彼だ、彼が私の探し求めていた人物だ」。
そうだとわかるとさっきまでは感じていなかった緊張感が一気に身体を包ませる。ガチガチに緊張しながら賞を獲った作品について聴いてみた。どうやら『田中カメレオン』という作品名らしい。どういう意味で、なにを想像しながら、どういうところに注目すべきなのか徹底的に聴いた。
一週間が経ち、秋冬遥夏のリアクションペーパーを読み上げた教授の講義が始まった。
よく観察していると彼は教授によく呼ばれ、どういった小説を書き、秋冬遥夏自身はどういう小説を好み読み進めるのかなどを聴かれていた。
正直に言おう。おかしな話、当時私は嫉妬をしていた。同時に、自分がどこの立ち位置で秋冬遥夏という人物をみていいのかわからなかった時期でもある。
講義中に彼にマイクが渡った、講義内容の感想を言うために。常人なら、一言や二言話せば次の人にマイクを譲るだろう。なんならマイクが自分のもとに渡ってこないことを祈る人もいると思う。しかし彼は違った、マイクが彼に渡った瞬間にわかった。この講義が彼のモノになったと。彼は自分の感想を言った後に彼自身の考え方を有名な小説で例え、その小説を知っているかを講義場の学生たちに質問をし、その小説の簡単なあらすじを説明しだした。言葉の節々に知性を感じる。
このとき、私は誰に対して嫉妬をしていたのかわからなくなったと同時に、私が秋冬遥夏という人物に適うわけがないと実感した。
人と話せば話し相手に寄り添い、話し相手を楽しませながら会話ができる。ペンを持たせれば感動する話が書ける。マイクを持たせれば講義ができる。まさに彼は『奇才と呼ぶのにふさわしい人物』と言える者だろう。
彼の代表作『田中カメレオン』を是非、私の絵で漫画化したい。いつしかそう思うようになっていた。そんな矢先に彼から自身の小説『田中カメレオン』を漫画にしてみないかという提案がされた。奇才は他人の考えていることまでわかるのかと思った。
断るわけがない、断る理由が見つからない。すぐに構想を二人で練り始めた。昼休み、空き時間、放課後とたくさんの時間が過ぎていった、楽しかった。楽しい以上の言葉で表したいけれど、寺村大貴では表せない。あぁ、こんなとき秋冬遥夏ならすぐにその場面に最適な言葉で表現できるのだろう。
『田中カメレオン』を描くにあたり読者はどう感じたのか、何を想像しながら読んでいたのかを参考までに調べてみた。
すると、いくつもの人の心を動かしたコメントがでてきた。奇才は、自身からは直接見ることができない沢山の人の動機になり、楽しませることができるのだなとわからされた。
講義前、彼の周りには沢山の人が集まる。それは、彼が小説で賞を獲ったから、ではない。彼は誰よりも人の心に寄り添うことができ、彼は誰よりも相手のことを楽しませることができ、何よりも彼自身が面白いからである。一発ギャグ、ノリ突っ込み、話の引き出し口の多さ、彼自身の考え方。それらが彼を面白くする秘訣であり、奇才に仕立て上げるものなのだろう。
何度でも言おう。彼は、秋冬遥夏は『奇才と呼ぶのにふさわしい人物』である。
彼ほど奇才という言葉が合う人は今後想像できないし、出会うこともないだろう。
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