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【2】 1
しおりを挟む彼女と凱の新しく始まった生活は、基本的には今までと変わらなかった。
体を磨き、足の手入れをし、読み書きを習い…
時折、領主がやって来ては膝に抱き、必ず欲しい物はなんでも言えと言っていった。
部屋にこもりきりの彼女は、与えられる衣装や人形に埋もれるように暮らした。
凱は彼女に年相応以上の学問を学ばせ、成長するに従いそれは多岐に渡っていった。
語学だったり、薬草だったり、…兵法だったり。
凱が一番教え込んだのは、その知識をひけらかさないこと。
何も知りません…、とやり過ごすこと。
「それが貴女にとって最も必要な知恵です。
この家で、いえ、この世の中で生きていくのにとても大切なこと」
それがどういう意味なのかは、後になって良く分かってきた。
始めの頃は物珍しさに幾度か訪ねてきた義姉達も、人形のようにベッドか椅子に座ったきりの少女に次第に興味を無くしたようだ。
気に向いた時にやって来て、彼女に贈られた可愛らしい小物や人形を「頂戴!」と言うや否や姉妹二人で喧嘩をしながら出ていった。
「お賑やか…でしたね」
ほぅ…と凱が溜め息と共に吐き出す。
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