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しおりを挟むベッドの置かれた脇の窓は開け放たれており、良く手入れされた中庭が見渡せた。
「お嬢様、良いお部屋ですね。ほら、薔薇があんなに綺麗に咲いていますよ」
「ん…」
彼女は美しい庭よりも、緊張から解放され早朝からの移動の疲れでベッドに心惹かれていた。
「ふふ…。お疲れですね。
ではお休み下さいませ」
眠気でグラグラしている彼女を着替えさせ、ベッドに寝かせた。
ベッドの中から眠たげな目をようやく開け、彼女はそっと告げる。
「…凱…」
「はい、なんです?」
「ずっと…
いてね」
「もちろんですよ。
さあ、心配なさらずにお休みください」
額にかかる髪を撫で上げ、優しく言い聞かせると安心したのか、すっと眠りに落ちていった。
小さな寝息をたてる小鳥のような少女を満足げに眺め、上首尾な初対面にほくそ笑む。
ただ…
奥方にだけは気をつけなければ。
凡庸ではあるが、「女の勘」を侮る訳にはいくまい。
上手く、上手く事を運んで、この少女をなんとしても国一番にしなくては。
凱は心の中で、誓いを新たにしたのだった。
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