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しおりを挟む程なくして…
彼女の窓辺にいつも訪ねて来ては、彼女を慰め楽しませていた小鳥が冷たい骸となって地に落ちていた。
いつもの時間になってもやって来ないから、ヨロヨロと窓辺に歩み寄り外を眺めた。
木々の梢に目をこらし、今にも来るのではないかとしばらく佇んでいた。
今日はもう来ないのかと、気落ちして目線を落とした時に見つけてしまった。
仲良くつがいで与えた餌を啄んでいたあの小鳥が、だらりと羽を広げて。
「ひっ!?
…凱、が、い…
凱っ!!」
血の気がざっと音を立てて引いたようだ。
手足が冷たく、痺れるように感じる。
「…はい。どうかしましたか?
そんな大きな声を出すなど珍しい…
…っ!?」
わなわなと震える指先が指すその先を見て、凱も小さく息を飲む。
どうやら、与えていた餌…彼女のパンを小さくちぎったものに毒が入っていたようだ。
パンだけは凱が作らず、焼き上がったものを厨房から分けてもらっていた。
彼女は普通で手に入る程度の毒には耐性がある。
小鳥は毒が盛られている事を知らせて、その命を終えた。
「可哀想に…
後で墓を作ってやりましょう。ここから見えるあの樹の下がいいですね」
毒の事には触れずに凱は震える彼女を抱き上げ、ベッドへと運んだ。
義父が亡くなった時よりも、彼女は悲しかった。
いくら慣れている…とはいえ、こもりきりの寂しい暮らし。
その彼女の心に小さな灯りを灯してくれていた小鳥たち。
「どうして…
なんで小鳥達は?」
「……なにか悪い病気だったのかも、しれませんね」
凱はいつものマッサージの準備をしながら、様々な思いを巡らせる。
身辺の警護も怠らないようにしなくては…次はどのような手を使ってくるか。
彼女は凱の言葉を信じるふりをしながら、自分の身代りになった小鳥達に心の中で謝った。
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