ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間

水田歩 

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第一章 過去編

【結婚式前の15年間~中学生、うっとり初デート~】

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 それから数日後が私の十五歳の誕生日で、初めてのデートをした。
 透也君が有名なテーマパークを貸切ってくれたのだ。

 はしゃいで走ろうとする私と手を繋いだ透也君がにこにこしながらエスコートしてくれた。
 ……ボディーガードさんは勿論いたけれど、彼の背景を考えると仕方ないことだと思う。

 二人っきりで観覧車に乗って、テッペンまで上がったとき。

「円佳ちゃん、好きだよ」

 夕日が二人を照らすなか、頬に手を添えられた。
 なにをされるかわかっていたし、彼とキスしたいなと思っていた私はそっと眼を閉じた。
 温かくて柔らかいものが唇に触れたあと、離れていく。

 ファーストキス、だった。

「僕の恋人になって」

 オマセ!
 なんて茶々を入れられなかった。

 透也君のご両親に、なんと報告すればいいんだろうと瞬間ためらったはずなのに。
 切なそうにこいねがわれて、気が付けば私はこくこくと頷いていた。

 あのときの、嬉しそうではにかんだ透也君の笑顔を、私は一生忘れない。



 遊園地を出たあと、私達は車に乗り込んだ。
 手を繋ぎながら車内で透也君はどこかに電話をかける。

「久しぶりだね、支配人。インペリアルスイートを抑えてくれないか。大事な人を連れて行きたいんだ。……ああ、よろしく頼む」

 小学生なのに偉そう、じゃなかった大人っぽい口ぶりにぽーっとなる。
 そういえば、私以外に喋るときはこんな感じだった。
 メイドさんにはもう少し優しく話してるんだけどな。うん、堂々って感じ。

 それはともかく。

「あの、なんとかスイートって?」

 私が聞くと、透也君はにっこり笑う。

「僕たち、恋人同士だよね?」
「う、うん」

「ようやく、一緒のお風呂に入って一つのベッドで眠れるね」
「はえっ?」

 間抜けな声を出してしまった。
 だって、なんというか。無邪気なときは過ぎてしまっていて。

「と、歳下とはいえ男の子とお風呂一緒とか寝たりって恥ずかしい……」

 私がもじもじすると、透也君も真っ赤になった。

「円佳ちゃん、可愛すぎる……! これ以上、君を好きにさせてどうする気っ?」

 ぎゅうと手を握られた。
 それから出ました、必殺にぃぃっこり。

「愛し合ってる二人がお風呂やベッドを共にするのは当然じゃないかな?」

 えっと。
 そっか透也君、まだ。
 安心するやら残念やら複雑な気持ちでいたところを、のぞきこまれた。

「『まだ十二歳だから、男女の機微わからないんだ』とか思ってる?」

 彼の双眸が射抜くようだ。

 私のほうがわかってない。
 ダンジョノキビって、学校で習った吉野真備やキビ団子の親戚かな? でもそれ、今関係ある?
 とにかく。

「僕は勿論、円佳ちゃんとセックスしたいと思っている」

 口を開く前に宣言されてしまった。

「はいいー?」

 今どき……っ、小学生でそんな言葉言っちゃうの?

 そりゃ、透也君は背が高くて美少年というよりはイケメンで小学生には見えないけども。
 確かにクラスメートのなかにはすでに経験してる子もいるけどもっ。

「だめっ! 不純異性交友は大人になってからっ!」

 私は吠えた。

 透也君の目がまん丸くなる。
 しばらくあっけにとられた表情を浮かべたあと、口が震えだして大笑いされた。

「ふっ、不純って! 円佳ちゃん、歳誤魔化してないっ?」

 笑いの発作のなか、苦しそうに言う。
 本日十五歳なりたてですが、なにか?

「それは『少年に健全育成上支障がある』場合でしょ? 僕たちにはあてはまらないよ」
「えー……?」

 そうかな。
 たしかに両思いだから精神的な支障はないかもしれない。

 身体的な問題なら、私は生理も順調だし、身長も一六〇センチに達したし胸もBに育ちつつある。
 けれど透也君は完成形に近いとはいえ、もっともっと成長するのだから、どんな影響があるかわからない。

「うーん」
「僕たちは恋人同士でしょ?」

 ……興味あるお年頃だから、いいのかな。
 だけど、とてつもなくイケナイ気がする。

 透也君が良くても私が中三だから、エッチする相手は一コ下までが限界だな、うん。ランドセル、ムリ。

 しかし、スマイル一〇〇〇%の透也君にどう言い聞かせればいいのだろう。
 ……は!

『透也に言えない事があったら、このボタンを押しなさい』

 期せずして透也君のご両親から別々に渡された、登録先が一つしかなくワンプッシュで相手につながる携帯電話。
 魔法のデバイスが左右のポッケに一つずつ入ってる!

 私はカンフーの達人ぽく、ポケットの中で気合いをボタンに込めた。

 ほどなく。
 透也君の携帯が短く、二度震えた。

 誰からなのかわかっているらしく、透也君は携帯を取り出す前から美しい眉をわずかにしかめた。
 画面を確認して、盛大なため息をついた。

「…………非常に不本意だけど、父上母上の手が回った。今日はこのまま家に帰る」
「そ、そうなんだ?」

 ほ。
 私が大安心したのは、いうまでもない。

 彼のご両親がなんとメールをしてきたのか気になるけれど、知らないふりをした。

「円佳ちゃんの意志なら、我慢するしかないか……」

 なんて呟きが聞こえたけれど、全力で聞こえないふりをした。

 透也君が押さえたスイートルームは彼のご両親が泊まったそう。


 
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