書道教師はクールな御曹司に甘く手ほどきされました

手習い事始め

3.

　家についての評価を終えたあと、松代は仁那を観察することにした。

　猫舌のようで、ふうふう息を吹きかけながら、ゆっくりと飲んでいる。……松代に供するために、普段よりも熱く淹れてくれたのだろう。

　――彼女を見た瞬間、地味な女性だと思った。

　……考え方も暮らし方も、華やかなことを避けているのだと。
　勘ちがいだとわかるのは、すぐだった。

　今まで出会った女性の多くは、松代の迫力に押されたり、彼の美貌にぽーっと見惚れるのに、仁那は違った。

　確かに彼女も自分の顔や体をお気に入りのようだ。
　だが仁那は表情豊かで喧嘩っ早く、にらみつけてきては松代と堂々と渡り合う。

　……申告通り男慣れしていないらしく、焦るほどに面白い言葉がぽんぽん飛び出す。
　松代は、仁那との丁々発止の会話を楽しんでいた。