その1歩に全力を

もあい

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1組第1レーン「入部」

入部届け

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青木は何日かたったある日、水澤に入部届けを提出しに、職員室へ行った。
「水澤先生、あの、これ。」
水澤は黙って入部届けを受け取った。

 その日の放課後、水澤は1年生をグラウンドに集めて言った。
「お前ら、陸上は初めてか?」
十数人いた1年生の半数が頷く。
「お前らにやる気はあるのか?」
ハッとしたように1年は顔を上げた。
「お前ら、やる気がないのなら出ていけ!」
突然水澤が怒鳴った。1年生どころか練習していた2、3年生までもがこちらを見た。水澤の声にはそれだけの覇気があった。水澤は続けた。
「お前らが初心者だか、経験者だか知らんが、返事もできないやつは、ここにいる資格なんてない。挨拶もそうだ。お前ら、今日会った先生に挨拶したのか?少なくとも俺はお前ら誰1人に挨拶された記憶はないね。」
水澤の声は静かだったが怒鳴った時以上の覇気があった。1年の背筋は凍りつき、女子の何人かは泣きそうにすらなっている。
「俺が陸上部の奴らに教える事は、そう簡単なことではない。当たり前のことが出来ないやつに、それができるか、いや、できない。」
次の瞬間水澤は驚きの言葉を放った。

「お前ら、部活やめろ。」

 1年生が疑いの目で水澤の顔を見たが、水澤はその怒りに満ちた表情を崩さなかった。
 1年生は、グラウンドをあとにした。

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