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第二章 少年期編
第六十話 再・本物の無気力はお迎えに行く(1)
「優勝!圧勝!僕のルー様世界一!!」
「さすがはルシオン様。帝国………世界………いやこの世の至宝です」
カーペットに座っているだけの俺をユーリとエド先生が褒め称えてくる。
「………」
「ほらルー笑って!こっち見て~!」
「視線ください、お上手です」
貴重な魔道具まで持ち出してパシャパシャ撮っている。前世で言うカメラみたいなものだろうか。
エド先生がボタンを押す度にレンズに映していた映像が紙に印刷されて出てきた。それをユーリが地面に落ちる前に拾っている。反射神経の無駄遣いである。
なんでこうなったのやら。二人で衣装室に入って喧嘩半分歓談半分で話し合っていると思ったらあれよあれよと着替えさせられ、気付いた時には猫になっていた。そう。猫に。
お尻まですっぽり包み込む真っ黒の長いパーカー。フードには三角の耳、お尻には長い尻尾が付いている。短パンは膝上までしかないくせに魔法がかけてあるのか足先まで温かい。
あのカメラもどきにしろ短パンにしろ余計なことに魔法を使い過ぎじゃないだろうか。
この姿を紙に残す必要性を感じない。
俺みたいな服にデザイン性を求めない人間は寒いなら長ズボンを穿けばいい。
………と、思うんだが。
「これは旦那様に送って差し上げましょう」
「じゃあこれは僕の!」
「それは私のです」
「は?貴重な半目のルーをあげるわけないでしょう」
「こちらの台詞です。半目のルシオン様は私のものです」
二人にとっては意味があるらしい。楽しそうで何よりだ。
まさか半目の写真を奪い合う時代がくるとは。
基本怠さと闘っている俺の半目はそこまで珍しくないはずだ。眠い時の半目と変顔の半目は何か違うのだろうか。
「ならこっちの目を擦ってるルーは俺のです」
「それはまた別の話でしょう。動いてるルシオン様は貴重なんですよ」
「そう言って全部持ってく気じゃないですか」
「ふわぁ~」
これは一体いつまで続くんだ。今のうちに昼寝できそうだぞ。
重力に引っ張られるまま上半身を後ろに倒した。
「は!ルーが寝てる!」
「私としたことが………既に十枚使い切ってしまいました」
「今から魔塔に行って新しいの貰ってきますよ。そのついでにリッツェさんにも会ってきますね」
ユーリ………目的が入れ替わってるぞ………。
そう突っ込みながら意識を手放した。
***
今回の景色は空の上だった。
眠っている間にまた随分変わった場所に来ているが今回は知っている人の腕の中にいるので何の心配もなく二度寝できる。
「おやすみ…」
「あははっ、おやすみ、ルー」
「んー……」
そうして二度寝から覚めると丁度降下しているところだった。
ゆっくり森の中に着地する。そこには見覚えのある二人とまったく知らない一人が立っていた。
「神子様ー!お久ぶりです!覚えてますか?」
「リージャ」
「正解!嬉しい!解剖したーい!」
リージャは大きすぎる眼鏡を存分にずらして騒いでいる。
最後のは聞かなかったことにした。
「………誰の前で言ってるんだ?」
「ひっ!ごめんなさいユリシス!でも私一応先輩!!」
ユーリはちゃんと聞いていた。もっと言ってくれ。アイツは確実にやる。
「デート中悪ぃ。でも別に邪魔しに来たわけじゃねぇんだわ」
パンッ!
「だからその、」
パンッ!
「お前らに伝えないといけないことが、」
パンッ!
「ちょっと頭撫でるくらいいいじゃねぇか!」
相変わらずローブの上からでも分かるほど逞しい身体つきのオーガスは話の合間に俺に向かって手を伸ばしてきて、その全てをユーリに払いのけられた。
「いいわけない。ルーが疲れる」
「なんだその地味にショックな理由は」
「先輩が赤いお目目のちっちゃい生き物が好きだから警戒されてるんじゃないですか?」
「ウサギって言えよ!余計怪しいわ!」
「………ルーの半径百メートル以内に入るな」
「遠いわ!!」
三人のテンポの良い会話は聞いているだけで面白い。
ユーリも冗談まで言って楽しそうだ。魔塔での生活がどんなだったかは知らないがこの二人がいれば退屈はしないだろう。
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