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第二章 少年期編
第六十五話 再・本物の無気力はお迎えに行く(6)
魔塔の最上部は平らな丸い円形になっていた。鳥が留まるのに丁度良い。
〈グエッ〉
赤鳥さんもそう思ったのか降り立とうとするが見えない何かに弾かれる。
「ああ。不死鳥さんはここまでしか駄目みたいですね。魔塔って生き物みたいなものなんです。勝手に魔力を照合して登録してあるものと一致した人だけ中へ入れる」
リージャが説明している間にオーガスは俺を抱っこして頂上に飛び降りた。男の子も俺を追って降りてくる。
「それじゃあ不死鳥さん、また来てくださいね。因みにあの、羽を一枚くれたりなんかは………」
「やめろ変態。さっさと降りて来い」
「でも折角伝説級の魔物に会えたのに………」
「先輩命令」
「はぁい」
リージャが名残惜しそうに赤鳥さんから離れてオーガスの隣に立つ。眼鏡をかけたまま大粒の涙を流し、一人だけ今生の別れのようになっている。
〈ケフッ〉
赤鳥さんの冷たい目。俺じゃなくても赤鳥さんの感情が分かるはずだ。
まだ頭上をクルクル飛んでいる赤鳥さんにオーガスの腕の中から頭を下げた。
「ありがとう」
〈グルルン!!〉
赤鳥さんは元気一杯に鳴いた後羽の音を響かせて更に上空へと去って行く。魔物と言うにはあまりにも美しい後ろ姿だった。
「ううぅ、ま、また会えますかね、」
「神子様に懐いてるみてぇだし、神子様が魔の森に来たら会いに来るだろ」
「それなら神子様に魔塔に住んでもらいましょう!」
「いや。神子様は魔力持ってねぇんだから無理だ、ろ………」
リージャと会話に励んでいたはずのオーガスとバッチリ目が合う。オーガスは信じられないものを見ているようだった。リージャも続けて此方を見た後「ええ!?」と身体をのけぞらせた。
また人を未確認生物みたいに。俺はいい子に抱っこされてるだろ。
「なんで普通に入れてるんですか!?まさかまた神子の力ですか?」
「………?」
そんなお願いをした覚えはない。もしかしてあれか。抱っこされてるからか。地面に足を着いたら弾き飛ばされて塔から落下するのか。
この短期間で二回も落下してたまるか。
両手両足をオーガスの背中にぴったり引っ付ける。
「落ち着け大丈夫だよ。魔塔に拒否されるなら不死鳥が超えられなかったあのラインでとっくに弾かれてる」
そうなのか。力入れて損した。
「急に脱力するな!落とすだろうが!」
「それにしても本当にどうしてですかね。魔塔に限って誤作動なんてあり得ないですし………。気になる。気になります」
しまった。リージャの興味が赤鳥さんから俺に移ってしまった。
リージャの視線から逃れるように顔を逸らすと別の視線も刺さっていることに気がついた。
ジー。
オーガスの背後に立っていた男の子が見つめている。俺の右腕を。
ピョンピョン飛び跳ねて俺の右腕に触れようとするのでオーガスの肩から下ろして垂らした。男の子は待ってましたと言わんばかりに俺の右手に触れてパーカーの袖を捲る。
ん?
自分の右手首に全く見覚えのない輪っかが嵌っている。一体いつから付いていたのだろう。軽すぎて気が付かなかった。その上サイズもピッタリで締め付け感は皆無なのに手首を動かしても無駄に揺れない。
銀のベースに小さく丸い赤色の石が埋め込まれたシンプルなデザインだが宝石の輝き方が繊細で素人目にも価値の高さが分かった。
他に一切装飾や模様がないのはこの宝石の魅力を最大限引き出すためだろう。
「あれ。この石………」
「ユリシスの魔力がいっぱいー」
「なるほど。これやばいですね。常人が体内に溜めていられる魔力の数千倍の量が込められてますよ。いくらユリシスでもかなりの手間と時間がかかったでしょうね」
「そうまでしてなんの魔法を込めたんだ?」
「ちょ、ちょっと解析してもいいですかねっ」
オーガスもリージャも腕輪に釘付けだ。リージャなんて手を震わせている。
どうやら相当特別なものらしい。
一朝一夕で作れるものでないのなら一体いつの間に用意したんだろう。まだリボンを焼かれてしまった謝罪もしてないのに。
「魔法はないよー。魔力だけなのー」
「魔力だけ?」
「親和力が感じにくくなるんだねー」
男の子が至近距離で腕輪を観察しながらのんびり呟いた。
それを聞いたリージャがみるみる表情を明るくして何処か嬉しそうに早口で言葉を紡ぐ。
「なるほどなるほど。親和力が白なら魔力は黒だと言いますもんね。莫大な魔力で親和力を覆い隠してるということですか。面白い発想だ。さすがはユリシス」
「だから今日は魔物が群がって来なかったのか。良かったなぁ、これで魔物に絡まれなくて済むぞ」
「………?」
二人は納得している様子だが俺にはちっとも理解できない。
「もしかして神子様、親和力についてなんにも聞いてないんですか?」
まあリッツェが必死に隠そうとしてたからな。俺も大して興味はない。
「気になりますか?教えてあげましょうか?話すので髪の毛を一本………」
「いい。リッツェのところに行く」
「よし偉いぞ。こういう輩に流されるなよ」
項垂れるリージャを無視してオーガスが下へと続く扉を開けた。三人とも慣れた様子で下の部屋に飛び降りる。
階段とか梯子とか作ればいいのに。そこは面倒くさがるところじゃないと思う。俺にそう思わせるなんてよっぽどだぞ。
元々頂上への出入口のためだけにある部屋なのか天井と壁に一つづつ扉がある以外は家具一つ置いていなかった。
「試練の最中っつってたよな?なら儀式の間か」
「ユリシスが一日で出てきたのでリッツェさんならそろそろ終わる頃でしょうね」
「試練?」
そういえば爺さんがそんなこと言ってたな。まさか何か危ないことをしてるのか?
「魔塔主になるために受けなきゃなんねぇ試験みたいなもんだ。魔塔は生き物っつったろ?試験に合格した者は魔塔の所有者として認められる。ま、リッツェさんからすれば朝飯前だよ。心配すんな」
オーガスが丁寧に説明してくれた。
魔塔の主、なんてよく言うがまさか魔塔という建物の所有者のことでもあったとは。
ていうかユーリも既に合格済みなんだな。そういえばユーリって最年少で魔塔主になるんじゃなかったっけ?
リッツェが魔塔主になったらユーリが跡を継ぐのは当分先なんじゃ………。
おかしい。俺のせいで小説の展開からかなりかけ離れていってる気がする。
小説はハッピーエンドだったはずだからなるべく変えない方がいいんだろうけど………そんな細かいこと気にしても疲れるだけか。忘れよう。忘れた。
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