魔女見習いともふもふ黒猫騎士は、今日も呪いと奮闘する

琴乃葉

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エピローグ

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 リアムが訪ねてきたのは日が沈む少し前。
 そわそわと店内を歩き回っていたティナは、カラリと鳴るドアベルに肩を跳ね上がらせた。
 振り返ると、やはりそこにはリアムがいる。黒いコートに暖かそうなグレーのマフラー。茶色のブーツの先は雪で少し色が変わっている。

「時間通りですね」
「……あ、ああ」

 少し間のある返事。
 頬を染めぼんやりこちらを見るリアムにティナは首を傾げた。

「どうしましたか?」

 何かおかしなところがあるのかと、自分の姿を見る。朝から何度も確認したから、大丈夫だと思うのだけれど。
 赤いデイワンピースには白い大きな襟とカフス。少し高めのウエストとふわりと裾が広がるのが今の流行りだとお店の人が言っていた。黒いブーツもピカピカだ。

「私、変ですか?」

 いつもの色褪せた紺色のワンピースより、ずっと見目は良いはずだけれど、と不安に思いつつ聞けば、リアムはぶんぶんと首を振った。「可愛い」と口が動いたことに気づいたのは、カウンターで珈琲を飲んでいたベンジャミンだけだろう。

「い、いや。何でもない。似合っている、と思う」
「それは良かったです。では行きますか」

 椅子にかけていたコートを羽織り、マフラーをくるりと巻く。茶色コートにピンクのマフラー、デイワンピース、全てこの前街でリアムが買ってくれたものだ。

「ではリアム殿、門限は十時だから」

 ベンジャミンが珈琲の入ったカップを手渡しながら伝えれば、釘を刺されたリアムは真面目な顔を作って頷いた。

 それを少し疑わしげに見ると、ベンジャミンは窓の外に視線を移す。

「雪が残っているな」
「はい。夜には凍るかもしれません。ティナ、危ないから手を繋ごう」
「はい」

 他に色々口煩く言われるのを避けたいのか、リアムはまだ熱い珈琲を飲み干すとティナに手を出す。

 二人はベンジャミンに見送られ、坂道を登って行った。



 冬祭りの広場まで歩いて十分。馬車を停める場所が近くにないかも知れないと、二人は歩いて行くことに。

 昨日積もった雪は踏み固められ、溶けて再び固まりかけている。気を抜くとつるりといってしまいそうだ。

 何度か滑りかけ、ついた冬祭りの会場は幾つもの大きな雪像と、沢山置かれた蝋燭で幻想的なものだった。

「うわっ、うわっっ、リアム様。綺麗ですよ!」
「そうだな。待て待て飛ぶな、滑るだろう」

 はしゃぐティナの手をさらに強く握りながら、リアムは目を細める。

「祭りは初めてか?」
「はい。あっ、あそこには沢山屋台も出ていますよ!」
「分かった、分かった。とりあえず食うか」


 串刺しにされたポテトに焼き鳥、ホカホカのスープとホットワイン。それら全てをトレイにのせると、臨時で用意されたベンチに腰掛ける。
 
「冷めたら言ってくださいね、いつでも温めますから」
「便利だな」
「はい、解呪以外の難しいことはできませんが、それなりに役に立ちますよ」

 行き交う人を見ながらティナはスープを口にした。トロリとしたチーズが入っていて、それが糸を引っ張るのをはふはふ言いながら食べている。

「人混みは大丈夫か?」
「随分慣れました。沢山の人に注目されるのはまだ慣れませんが、今はほら、誰も私のこと見ていませんし」

 なるほど行き交う人は雪像か、蝋燭の灯りか、屋台か、もしくは隣を歩く恋人にしか興味がないようで。皆、楽しそうだな、と思いながら眺めていると、むすっとした顔の男が近づいてくる。
 
「おい、リアム。随分楽しそうだな」
「ボブさん、お久しぶりです」
「久しぶり、ティナちゃん。それよりリアム、最近は夜勤もするようになったと思ったら、なんでこんな日にデートしてんだ。見回りはどうした」
「ポーカーで勝ったので代わって貰ったんだよ」
「あぁ! そうだった。お前に負けた奴が言ってたよ。なんでもポーカーをする時、リアムは天使像をお守りだと言って持ってきたとか。あれって、執事が買ったやつか?」
「そうそう、ちょっと借りたんだ」

 誰から借りた、とは言わない。今の持ち主はティナだ。

「そういえばそいつが、部屋の隅に置いたはずの天使像が、時々場所を移動しているようで不気味と言っていたぞ」
「気のせいだろう、呪いはティナが解いたんだから」

 へぇ。
 とティナは二人の会話を聞きながら、串刺しポテトに齧り付く。

 二週間前に帰ってきた天使像との再会を喜んだのも束の間、リアムが何故か貸して欲しいと言ってきた。「天使さんさえ良ければ」と答えれば、何やら可愛いネックレスで買収していた、ところまでは知っている。
 それがポーカーに一役かったらしい。
 
「ほら、ボブは早く仕事につけ」
「こんな寒い日に、目の前でイチャつく恋人ばかりを見せられてやってらんないが、まぁ、お前が真面目にティナちゃんと付き合いだしたのはよいことだ。じゃあな」

 ボブは背を丸め手を擦り合わせ去って行く。騎士としてそれで良いのかと問いたくなるような姿勢だけれど、それよりもっと大きな疑問が浮かぶ。

 周りを見ればやたら恋人が多い。なんだか皆んな手を繋ぎ、顔を近づけ仲良しだ。

「リアム様、家族連れや子供の姿がありません」
「あぁ、昼間来たんだろう」

 小さな子供を連れて夜の雪道を歩くのは大変だとか、ご老人にこの寒さは堪えるよな、とかいろいろ理由は考えられるけれど、それにしても恋人しかいないのは如何なものか。それに加えて先程のボブの言葉だ。

「もしかして、ですが。夜にここに来ていいのは恋人だけという決まりでもあるのですか?」
「いや、ない」
「では偶然」
「暗黙の了解だな」
「!!」

 何それ、とティナはリアムから距離をとる。といってもベンチが小さいので数センチたが。

「騙された」
「騙していない、言わなかっただけだ」

 頬を膨らますティナに目を細めるリアム。その眼差しが甘い。
 ティナはすっと、目を逸らし、誤魔化すようにホットワインを温め直すとそれを口にした。

「嫌だったか?」
「……いいえ。美味しいし、綺麗だからいいです」

 それは良かったと、リアムもワインを口にする。食べて温め直してまた食べて。ひとしきりお腹が膨れたところで二人は雪像を見に行くことに。

 当たり前のように繋がれた手があったかい。雪像は女神や恋人達、異国の建物までありどれも手が混んで見応えがある。

 そんな中、やたら人が多い雪像かあった。みんな蝋燭片手に列をなしていて、当たり前のようにリアムがそこに並んだ。素早く寄ってきた蝋燭売りにコインを渡すと蝋燭を二つ受け取る。そのうち一つをティナに手渡す。

「これをどうするのですか?」
「この祭りの目玉なんだ。やっぱり人が多いなぁ」

 答えになっていないと思いつつ、目玉ならばとそこは納得して大人しく並ぶこと三十分。たどり着いた先にあったのは天使の雪像。

「なんだか似ていませんか?」
「あぁ、似ている。ま、同じ天使像だからな」
「いえ、あの子の方がかわいいです」

 まるで我が子を思う母親のように、ティナは強く断言する。

 リアムは持っていた蝋燭をティナに手渡し、ポケットから出したマッチで二つともに火をつけた。
 それを一つずつ持つと、天使像の前に置かれた雪のテーブルに立てる。
 ぶさり、とちょっと豪快に刺すところがいかにも平民らしい。

 天使像を見た二人はそのまま公園を北に進む。登り坂になっていて雪が多く残っているせいか人は少ない。十分ほど歩けば冬祭り会場の反対側に出てきた。坂を登ったから、高台になっていて街の景色がよく見える。

「うわっ、こんなところがあったのですね」
「あまり知られていないが、景色がよい。昼間しか来たことがなかったけれど、夜はもっと綺麗だな」

 ポツポツと見える街の灯りに加え、空には星が輝く。

「ところでさっきの蝋燭と天使像はなんなのですか?」
「恋人達がずっと一緒にいれるよう天使像に願掛けするんだよ」
「聞いていません!」
「聞かれなかったから」

 むむっ、とティナは口を尖らす。何だか今日は終始この調子だ。
 膨れていると、リアムの手がティナに伸び頬をぷにっと引っ張る。
 
「ひぁあむしゃま」
「はいはい」

 ティナの眇めた目に笑い返すと、手を頬から腰へと移動する。ぐい、と引き寄せられたティナの鼓動がトクンと跳ねた。

「……今日は意地悪だし近いです」
「恋人らしく見せておかないと、周りから浮くだろう」
「誰も自分達以外気に留めていません」
「はは、確かにそうだな。でも、これぐらいしなければ、ティナは俺を意識しないだろう?」

(充分意識しています)

 服を買いに行った時から、いや、その前から。最近やたらとリアムの顔がチラつくのだ。困ったことに、その度に胸がキュッとなる。
 
 なんて、言えるはずもなく、ひたすら赤くなるティナに、リアムはパチリと瞬きひとつした。

「……思ったよりことは早く進みそうだ」
「何がです?」
 
 キッと見上げた瞬間、旋毛に口づけが落とされた。ひゃ、と色気のない声が出たのはティナだから仕方ない。

「リ、リアム様」
「うん、何だ?」

 抗議しようとするも、意地悪く弧を描く唇と熱のこもった紫の瞳がやけに近くにある。
 そっと頬に添えられた手の温もりにティナの鼓動がトクトクと早鐘のように鳴り出した。

 顔が近づく。

 頬に唇が触れ……

 た瞬間、リアムが消えた。



 何が起こったのかと、慌てて周りを見渡すとティナの足元でミャーミャーとなく黒い毛玉がいる。

「ミャーミャー!!」
「ちょっと待ってください、話せるようにしますから」
「どういうことだ!? 呪いが復活したのか? どうして」

 ティナは黒猫リアムを抱っこしてうーん、と唸る。

「呪いではないです。あっ、もしかして師匠かも知れません。リアム様、師匠から珈琲を貰っていませんでしたか?」
「ああ、えっ、もしかしてあの中に変身薬が?」
「恐らくそうだと思います」
 
 とはいえ、なぜこのタイミングで猫になったのか。
 ハッとしたリアムがティナに問いかける。

「おい、今何時だ?」
「えーと。十時、門限ですね」
「それだ!!」

 ポケットから出した懐中時計を見ながらティナが答えると、リアムがやられたとばかりに声を上げた。

「いやいや、待て。問題はここからだ。この変身薬はいつ効果が切れるのだ?」
「ずっと、ということはないのですが……夜明け?」
「それなら良いが十分後となればかなりまずい」

 あっと、下を見れば、先ほどまでリアムが着ていた服が中身のないままペシャげている。

「……まずいですね」
「今すぐ帰るぞ! ちっ、これが狙いか」

 慌てて坂を下る二人の様子を、こっそり闇間から見ていた天使像は、一足先にベンジャミンのもとへと帰っていった。
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