31 / 31
エピローグ
しおりを挟むリアムが訪ねてきたのは日が沈む少し前。
そわそわと店内を歩き回っていたティナは、カラリと鳴るドアベルに肩を跳ね上がらせた。
振り返ると、やはりそこにはリアムがいる。黒いコートに暖かそうなグレーのマフラー。茶色のブーツの先は雪で少し色が変わっている。
「時間通りですね」
「……あ、ああ」
少し間のある返事。
頬を染めぼんやりこちらを見るリアムにティナは首を傾げた。
「どうしましたか?」
何かおかしなところがあるのかと、自分の姿を見る。朝から何度も確認したから、大丈夫だと思うのだけれど。
赤いデイワンピースには白い大きな襟とカフス。少し高めのウエストとふわりと裾が広がるのが今の流行りだとお店の人が言っていた。黒いブーツもピカピカだ。
「私、変ですか?」
いつもの色褪せた紺色のワンピースより、ずっと見目は良いはずだけれど、と不安に思いつつ聞けば、リアムはぶんぶんと首を振った。「可愛い」と口が動いたことに気づいたのは、カウンターで珈琲を飲んでいたベンジャミンだけだろう。
「い、いや。何でもない。似合っている、と思う」
「それは良かったです。では行きますか」
椅子にかけていたコートを羽織り、マフラーをくるりと巻く。茶色コートにピンクのマフラー、デイワンピース、全てこの前街でリアムが買ってくれたものだ。
「ではリアム殿、門限は十時だから」
ベンジャミンが珈琲の入ったカップを手渡しながら伝えれば、釘を刺されたリアムは真面目な顔を作って頷いた。
それを少し疑わしげに見ると、ベンジャミンは窓の外に視線を移す。
「雪が残っているな」
「はい。夜には凍るかもしれません。ティナ、危ないから手を繋ごう」
「はい」
他に色々口煩く言われるのを避けたいのか、リアムはまだ熱い珈琲を飲み干すとティナに手を出す。
二人はベンジャミンに見送られ、坂道を登って行った。
冬祭りの広場まで歩いて十分。馬車を停める場所が近くにないかも知れないと、二人は歩いて行くことに。
昨日積もった雪は踏み固められ、溶けて再び固まりかけている。気を抜くとつるりといってしまいそうだ。
何度か滑りかけ、ついた冬祭りの会場は幾つもの大きな雪像と、沢山置かれた蝋燭で幻想的なものだった。
「うわっ、うわっっ、リアム様。綺麗ですよ!」
「そうだな。待て待て飛ぶな、滑るだろう」
はしゃぐティナの手をさらに強く握りながら、リアムは目を細める。
「祭りは初めてか?」
「はい。あっ、あそこには沢山屋台も出ていますよ!」
「分かった、分かった。とりあえず食うか」
串刺しにされたポテトに焼き鳥、ホカホカのスープとホットワイン。それら全てをトレイにのせると、臨時で用意されたベンチに腰掛ける。
「冷めたら言ってくださいね、いつでも温めますから」
「便利だな」
「はい、解呪以外の難しいことはできませんが、それなりに役に立ちますよ」
行き交う人を見ながらティナはスープを口にした。トロリとしたチーズが入っていて、それが糸を引っ張るのをはふはふ言いながら食べている。
「人混みは大丈夫か?」
「随分慣れました。沢山の人に注目されるのはまだ慣れませんが、今はほら、誰も私のこと見ていませんし」
なるほど行き交う人は雪像か、蝋燭の灯りか、屋台か、もしくは隣を歩く恋人にしか興味がないようで。皆、楽しそうだな、と思いながら眺めていると、むすっとした顔の男が近づいてくる。
「おい、リアム。随分楽しそうだな」
「ボブさん、お久しぶりです」
「久しぶり、ティナちゃん。それよりリアム、最近は夜勤もするようになったと思ったら、なんでこんな日にデートしてんだ。見回りはどうした」
「ポーカーで勝ったので代わって貰ったんだよ」
「あぁ! そうだった。お前に負けた奴が言ってたよ。なんでもポーカーをする時、リアムは天使像をお守りだと言って持ってきたとか。あれって、執事が買ったやつか?」
「そうそう、ちょっと借りたんだ」
誰から借りた、とは言わない。今の持ち主はティナだ。
「そういえばそいつが、部屋の隅に置いたはずの天使像が、時々場所を移動しているようで不気味と言っていたぞ」
「気のせいだろう、呪いはティナが解いたんだから」
へぇ。
とティナは二人の会話を聞きながら、串刺しポテトに齧り付く。
二週間前に帰ってきた天使像との再会を喜んだのも束の間、リアムが何故か貸して欲しいと言ってきた。「天使さんさえ良ければ」と答えれば、何やら可愛いネックレスで買収していた、ところまでは知っている。
それがポーカーに一役かったらしい。
「ほら、ボブは早く仕事につけ」
「こんな寒い日に、目の前でイチャつく恋人ばかりを見せられてやってらんないが、まぁ、お前が真面目にティナちゃんと付き合いだしたのはよいことだ。じゃあな」
ボブは背を丸め手を擦り合わせ去って行く。騎士としてそれで良いのかと問いたくなるような姿勢だけれど、それよりもっと大きな疑問が浮かぶ。
周りを見ればやたら恋人が多い。なんだか皆んな手を繋ぎ、顔を近づけ仲良しだ。
「リアム様、家族連れや子供の姿がありません」
「あぁ、昼間来たんだろう」
小さな子供を連れて夜の雪道を歩くのは大変だとか、ご老人にこの寒さは堪えるよな、とかいろいろ理由は考えられるけれど、それにしても恋人しかいないのは如何なものか。それに加えて先程のボブの言葉だ。
「もしかして、ですが。夜にここに来ていいのは恋人だけという決まりでもあるのですか?」
「いや、ない」
「では偶然」
「暗黙の了解だな」
「!!」
何それ、とティナはリアムから距離をとる。といってもベンチが小さいので数センチたが。
「騙された」
「騙していない、言わなかっただけだ」
頬を膨らますティナに目を細めるリアム。その眼差しが甘い。
ティナはすっと、目を逸らし、誤魔化すようにホットワインを温め直すとそれを口にした。
「嫌だったか?」
「……いいえ。美味しいし、綺麗だからいいです」
それは良かったと、リアムもワインを口にする。食べて温め直してまた食べて。ひとしきりお腹が膨れたところで二人は雪像を見に行くことに。
当たり前のように繋がれた手があったかい。雪像は女神や恋人達、異国の建物までありどれも手が混んで見応えがある。
そんな中、やたら人が多い雪像かあった。みんな蝋燭片手に列をなしていて、当たり前のようにリアムがそこに並んだ。素早く寄ってきた蝋燭売りにコインを渡すと蝋燭を二つ受け取る。そのうち一つをティナに手渡す。
「これをどうするのですか?」
「この祭りの目玉なんだ。やっぱり人が多いなぁ」
答えになっていないと思いつつ、目玉ならばとそこは納得して大人しく並ぶこと三十分。たどり着いた先にあったのは天使の雪像。
「なんだか似ていませんか?」
「あぁ、似ている。ま、同じ天使像だからな」
「いえ、あの子の方がかわいいです」
まるで我が子を思う母親のように、ティナは強く断言する。
リアムは持っていた蝋燭をティナに手渡し、ポケットから出したマッチで二つともに火をつけた。
それを一つずつ持つと、天使像の前に置かれた雪のテーブルに立てる。
ぶさり、とちょっと豪快に刺すところがいかにも平民らしい。
天使像を見た二人はそのまま公園を北に進む。登り坂になっていて雪が多く残っているせいか人は少ない。十分ほど歩けば冬祭り会場の反対側に出てきた。坂を登ったから、高台になっていて街の景色がよく見える。
「うわっ、こんなところがあったのですね」
「あまり知られていないが、景色がよい。昼間しか来たことがなかったけれど、夜はもっと綺麗だな」
ポツポツと見える街の灯りに加え、空には星が輝く。
「ところでさっきの蝋燭と天使像はなんなのですか?」
「恋人達がずっと一緒にいれるよう天使像に願掛けするんだよ」
「聞いていません!」
「聞かれなかったから」
むむっ、とティナは口を尖らす。何だか今日は終始この調子だ。
膨れていると、リアムの手がティナに伸び頬をぷにっと引っ張る。
「ひぁあむしゃま」
「はいはい」
ティナの眇めた目に笑い返すと、手を頬から腰へと移動する。ぐい、と引き寄せられたティナの鼓動がトクンと跳ねた。
「……今日は意地悪だし近いです」
「恋人らしく見せておかないと、周りから浮くだろう」
「誰も自分達以外気に留めていません」
「はは、確かにそうだな。でも、これぐらいしなければ、ティナは俺を意識しないだろう?」
(充分意識しています)
服を買いに行った時から、いや、その前から。最近やたらとリアムの顔がチラつくのだ。困ったことに、その度に胸がキュッとなる。
なんて、言えるはずもなく、ひたすら赤くなるティナに、リアムはパチリと瞬きひとつした。
「……思ったよりことは早く進みそうだ」
「何がです?」
キッと見上げた瞬間、旋毛に口づけが落とされた。ひゃ、と色気のない声が出たのはティナだから仕方ない。
「リ、リアム様」
「うん、何だ?」
抗議しようとするも、意地悪く弧を描く唇と熱のこもった紫の瞳がやけに近くにある。
そっと頬に添えられた手の温もりにティナの鼓動がトクトクと早鐘のように鳴り出した。
顔が近づく。
頬に唇が触れ……
た瞬間、リアムが消えた。
「
何が起こったのかと、慌てて周りを見渡すとティナの足元でミャーミャーとなく黒い毛玉がいる。
「ミャーミャー!!」
「ちょっと待ってください、話せるようにしますから」
「どういうことだ!? 呪いが復活したのか? どうして」
ティナは黒猫リアムを抱っこしてうーん、と唸る。
「呪いではないです。あっ、もしかして師匠かも知れません。リアム様、師匠から珈琲を貰っていませんでしたか?」
「ああ、えっ、もしかしてあの中に変身薬が?」
「恐らくそうだと思います」
とはいえ、なぜこのタイミングで猫になったのか。
ハッとしたリアムがティナに問いかける。
「おい、今何時だ?」
「えーと。十時、門限ですね」
「それだ!!」
ポケットから出した懐中時計を見ながらティナが答えると、リアムがやられたとばかりに声を上げた。
「いやいや、待て。問題はここからだ。この変身薬はいつ効果が切れるのだ?」
「ずっと、ということはないのですが……夜明け?」
「それなら良いが十分後となればかなりまずい」
あっと、下を見れば、先ほどまでリアムが着ていた服が中身のないままペシャげている。
「……まずいですね」
「今すぐ帰るぞ! ちっ、これが狙いか」
慌てて坂を下る二人の様子を、こっそり闇間から見ていた天使像は、一足先にベンジャミンのもとへと帰っていった。
30
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された公爵令嬢エルカミーノの、神級魔法覚醒と溺愛逆ハーレム生活
ふわふわ
恋愛
公爵令嬢エルカミーノ・ヴァレンティーナは、王太子フィオリーノとの婚約を心から大切にし、完璧な王太子妃候補として日々を過ごしていた。
しかし、学園卒業パーティーの夜、突然の公開婚約破棄。
「転入生の聖女リヴォルタこそが真実の愛だ。お前は冷たい悪役令嬢だ」との言葉とともに、周囲の貴族たちも一斉に彼女を嘲笑う。
傷心と絶望の淵で、エルカミーノは自身の体内に眠っていた「神級の古代魔法」が覚醒するのを悟る。
封印されていた万能の力――治癒、攻撃、予知、魅了耐性すべてが神の領域に達するチート能力が、ついに解放された。
さらに、婚約破棄の余波で明らかになる衝撃の事実。
リヴォルタの「聖女の力」は偽物だった。
エルカミーノの領地は異常な豊作を迎え、王国の経済を支えるまでに。
フィオリーノとリヴォルタは、次々と失脚の淵へ追い込まれていく――。
一方、覚醒したエルカミーノの周りには、運命の攻略対象たちが次々と集結する。
- 幼馴染の冷徹騎士団長キャブオール(ヤンデレ溺愛)
- 金髪強引隣国王子クーガ(ワイルド溺愛)
- 黒髪ミステリアス魔導士グランタ(知性溺愛)
- もふもふ獣人族王子コバルト(忠犬溺愛)
最初は「静かにスローライフを」と願っていたエルカミーノだったが、四人の熱烈な愛と守護に囲まれ、いつしか彼女自身も彼らを深く愛するようになる。
経済的・社会的・魔法的な「ざまぁ」を経て、
エルカミーノは新女王として即位。
異世界ルールで認められた複数婚姻により、四人と結ばれ、
愛に満ちた子宝にも恵まれる。
婚約破棄された悪役令嬢が、最強チート能力と四人の溺愛夫たちを得て、
王国を繁栄させながら永遠の幸せを手に入れる――
爽快ざまぁ&極甘逆ハーレム・ファンタジー、完結!
婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~
ふわふわ
恋愛
侯爵令嬢アイシス・ヴァレンティンは、王太子レグナムの婚約者として厳しい妃教育に耐えてきた。しかし、王宮パーティーで突然婚約破棄を宣告される。理由は、レグナムの幼馴染で「聖女」と称されるエマが「アイシスにいじめられた」という濡れ衣。実際はすべてエマの策略だった。
絶望の底で、アイシスは前世の記憶を思い出す――この世界は乙女ゲームで、自分は「悪役令嬢」として破滅する運命だった。覚醒した氷魔法の力と前世知識を武器に、辺境のフロスト領へ追放されたアイシスは、自立の道を選ぶ。そこで出会ったのは、冷徹で「炎の公爵」と恐れられるエクウス・ドラゴン。彼はアイシスの魔法に興味を持ち、政略結婚を提案するが、実は一目惚れで彼女を溺愛し始める。
アイシスは氷魔法で領地を繁栄させ、騎士ルークスと魔導師セナの忠誠を得ながら、逆ハーレム的な甘い日常を過ごす。一方、王都ではエマの偽聖女の力が暴かれ、レグナムは後悔の涙を流す。最終決戦で、アイシスとエクウスの「氷炎魔法」が王国軍を撃破。偽りの聖女は転落し、王国は変わる。
**氷の令嬢は、炎の公爵に溺愛され、運命を逆転させる**。
婚約破棄の屈辱から始まる、爽快ザマアと胸キュン溺愛の物語。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
これで、私も自由になれます
たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。
『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします
卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。
ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。
泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。
「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」
グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。
敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。
二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。
これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。
(ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中)
もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる