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体中が軋む。頭が割れるように痛い。体は動かないので目だけを薄く開いた。また森の中にいる。きっとここは下界だろう。
どうなったんだっけ…? そうだ、森の中で目が覚めたら、長老たちがアダムとイヴを殺していて、それで……。頭がガンガン響く。
──ああ、死ねなかったんだな。
日の光が眩しくて目を閉じた。
──僕はタナトスの愛し子だったのか。確かにあの時感じた魔力は禍々しいものだった。全てを食らいつくし、消し去るような……。
「ははっ……」
思わず乾いた笑いがこぼれ落ちた。体の奥にはまだ燻るような魔力を感じた。きっとこれがタナトスの力なのだろう。試してみる気にはならない。
勝手に転生させられたかと思えば、この世界に害をなす存在で。周りに迷惑をかけておきながら、僕自身は殺されても死ぬことは出来なかった。
「はははっ、あー化け物だな、僕は」
体は一向に動かない。そりゃ魂を消されかけだんだ、本当だったらもっと重症だったのだろうな。
これから僕はどうしたらいいのだろうか。アダムとイヴは僕のせいで殺された。もう天界には戻れない。下界で生きていくか?
いや、もう生きるのに疲れてしまった。もう充分生きたと思う。人よりも倍の人生を経験しているんだ。もう、終わりにしたい。この力をいつ暴走させてしまうか分からないし。
不思議と涙は出てこなかった。あー僕って薄情だな。脳裏にはアダムとイヴ、そしてラジーの顔が浮かんだ。もう、悲しいのか辛いのか疲れたのか分からない。ただ、本当に、謝りたい。お祭り行けなくてごめんなさい。迷惑かけてごめんなさい。助けられなくてごめんなさい。生まれてきて、ごめんなさい。
早く、誰か殺してくれないかな。許されないかもしれないが、願わくば、苦しまずに死にたい。そしてどうか、僕を愛してくれた者たちの元へ連れて行ってほしい。
いつになったら金縛りが解けるのだろうか。感覚的に四肢は無事な気がする。
どれぐらい経っただろうか。遠くから話し声が聞こえた。体はまだ動かない。ゆっくりと目を開けて、そちらを見た。眩しくて目を細める。
「おい、隣国まであとどのくらいだ?」
「あと半日くらいっす。今回はどうしますか? 獲物少なくないっすか?」
「あーじゃあもう1村寄っていくか? だがこんな田舎にいい獲物がいるとは思えねえ」
「ぎゃはは! 間違いねえや! だが使い捨てのやつくらいは見つかるんじゃね?」
これは……見つかったら不味いのかもしれない。話の内容はよく分からないが、不穏な空気を感じる。隠れようにも体が動かない。どうか見つかりませんように、息をひそめる。
僕の願いとは裏腹に声の持ち主は近付いてくる。心臓が脈打ち、冷や汗がどっと流れた。
「あーお頭えげつねえな! 流石だわ! 今回はどれくらい稼げるんだろーな」
「いいから静かにしろ! この森にだって敵が隠れてるかもしれないだろ」
「いやこんな森にいませんってー。騎士団の坊っちゃんも別に暇じゃねえでしょう」
「いや、最近取り締まりを厳しくしていると聞いた、もうこの国も終わりにしないとな。それにな……ん?」
やばい、見つかった。
奥からやってきたのは1台の荷馬車だった。先頭には男が2人乗っている。片方の男とがっつり目が合う。呆気に取られたようにこちらを見た後、男たちはにやりと笑った。その笑みに、背筋が凍る。
「おっと、こんなとこに獲物がいましたぜ。しかもこいつは相当上玉だ! こんな綺麗な顔見たことねえや……!! こいつほんとに人間か?」
「ああ、これはやばいな。これが売れたら一生遊んで暮らせるぞ。体が動かないのか? それでも価値は高いだろうな」
なに、僕売られるの? 男たちは近づいてきた。
「あっ……待って、嫌だっ……」
かろうじて出るのは、震えた心もとない声。全身が震える。距離を取ろうにも体が動かない。目に涙が浮かぶ。
「おい、かわいいな。こいつ女か? まあどちらでもいいか」
「お頭! こいつ味見してから売りません?」
「そうだな、こいつだったら非処女でも高いだろうな」
ぎゃははと笑い手を伸ばしてきた。全身を舐め回す視線に身を竦める。歯がカチカチと鳴る。殺される時とは違う恐怖心に戸惑った。
なに、何が起こるの? 僕はどうされるの?
「とりあえず、隷属と魔力封じの首輪だ」
首に手を回され、カチリと首輪が嵌められた。そして、僕の服に手をかける。乱暴に服を剥ぎ取られ、呼吸が乱れた。
「な、なにっ…! や、やめて……っ!」
必死に抵抗しても、男たちは楽しそうに眺めてくる。僕はこれから起きることに、ただ怯えていた。
どうなったんだっけ…? そうだ、森の中で目が覚めたら、長老たちがアダムとイヴを殺していて、それで……。頭がガンガン響く。
──ああ、死ねなかったんだな。
日の光が眩しくて目を閉じた。
──僕はタナトスの愛し子だったのか。確かにあの時感じた魔力は禍々しいものだった。全てを食らいつくし、消し去るような……。
「ははっ……」
思わず乾いた笑いがこぼれ落ちた。体の奥にはまだ燻るような魔力を感じた。きっとこれがタナトスの力なのだろう。試してみる気にはならない。
勝手に転生させられたかと思えば、この世界に害をなす存在で。周りに迷惑をかけておきながら、僕自身は殺されても死ぬことは出来なかった。
「はははっ、あー化け物だな、僕は」
体は一向に動かない。そりゃ魂を消されかけだんだ、本当だったらもっと重症だったのだろうな。
これから僕はどうしたらいいのだろうか。アダムとイヴは僕のせいで殺された。もう天界には戻れない。下界で生きていくか?
いや、もう生きるのに疲れてしまった。もう充分生きたと思う。人よりも倍の人生を経験しているんだ。もう、終わりにしたい。この力をいつ暴走させてしまうか分からないし。
不思議と涙は出てこなかった。あー僕って薄情だな。脳裏にはアダムとイヴ、そしてラジーの顔が浮かんだ。もう、悲しいのか辛いのか疲れたのか分からない。ただ、本当に、謝りたい。お祭り行けなくてごめんなさい。迷惑かけてごめんなさい。助けられなくてごめんなさい。生まれてきて、ごめんなさい。
早く、誰か殺してくれないかな。許されないかもしれないが、願わくば、苦しまずに死にたい。そしてどうか、僕を愛してくれた者たちの元へ連れて行ってほしい。
いつになったら金縛りが解けるのだろうか。感覚的に四肢は無事な気がする。
どれぐらい経っただろうか。遠くから話し声が聞こえた。体はまだ動かない。ゆっくりと目を開けて、そちらを見た。眩しくて目を細める。
「おい、隣国まであとどのくらいだ?」
「あと半日くらいっす。今回はどうしますか? 獲物少なくないっすか?」
「あーじゃあもう1村寄っていくか? だがこんな田舎にいい獲物がいるとは思えねえ」
「ぎゃはは! 間違いねえや! だが使い捨てのやつくらいは見つかるんじゃね?」
これは……見つかったら不味いのかもしれない。話の内容はよく分からないが、不穏な空気を感じる。隠れようにも体が動かない。どうか見つかりませんように、息をひそめる。
僕の願いとは裏腹に声の持ち主は近付いてくる。心臓が脈打ち、冷や汗がどっと流れた。
「あーお頭えげつねえな! 流石だわ! 今回はどれくらい稼げるんだろーな」
「いいから静かにしろ! この森にだって敵が隠れてるかもしれないだろ」
「いやこんな森にいませんってー。騎士団の坊っちゃんも別に暇じゃねえでしょう」
「いや、最近取り締まりを厳しくしていると聞いた、もうこの国も終わりにしないとな。それにな……ん?」
やばい、見つかった。
奥からやってきたのは1台の荷馬車だった。先頭には男が2人乗っている。片方の男とがっつり目が合う。呆気に取られたようにこちらを見た後、男たちはにやりと笑った。その笑みに、背筋が凍る。
「おっと、こんなとこに獲物がいましたぜ。しかもこいつは相当上玉だ! こんな綺麗な顔見たことねえや……!! こいつほんとに人間か?」
「ああ、これはやばいな。これが売れたら一生遊んで暮らせるぞ。体が動かないのか? それでも価値は高いだろうな」
なに、僕売られるの? 男たちは近づいてきた。
「あっ……待って、嫌だっ……」
かろうじて出るのは、震えた心もとない声。全身が震える。距離を取ろうにも体が動かない。目に涙が浮かぶ。
「おい、かわいいな。こいつ女か? まあどちらでもいいか」
「お頭! こいつ味見してから売りません?」
「そうだな、こいつだったら非処女でも高いだろうな」
ぎゃははと笑い手を伸ばしてきた。全身を舐め回す視線に身を竦める。歯がカチカチと鳴る。殺される時とは違う恐怖心に戸惑った。
なに、何が起こるの? 僕はどうされるの?
「とりあえず、隷属と魔力封じの首輪だ」
首に手を回され、カチリと首輪が嵌められた。そして、僕の服に手をかける。乱暴に服を剥ぎ取られ、呼吸が乱れた。
「な、なにっ…! や、やめて……っ!」
必死に抵抗しても、男たちは楽しそうに眺めてくる。僕はこれから起きることに、ただ怯えていた。
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