ネトラレクラスメイト

八ツ花千代

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45話

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 儀保裕之悪友の経営する鍛冶屋には、相変わらず商品が並んでいない。
 棚はおいてあるのに空っぽなのだ。
 注文販売と言えば聞こえはいいが、俺にはサボっているだけにしか見えない。

 オシャレなバーにあるような座位の高い椅子とカウンター。
 家具屋の千坂隆久モヤシに作ってもらったのだ。
 鍛冶屋に似合わないが、客がこないので不都合はない。


 俺とコイツはカウンターを挟んで椅子に座っている。

「――なあ、どうしてあのとき俺に銃を作らせようとしなかった?」

 雑談をしていると、ふいにコイツが聞いてきた。
 あのときとは、村に兵士が攻めてきたシーンだろう。

「オマエ、銃を作るの嫌がってたじゃん」
「それだけ?」
「いや、良知らちの使う雷の射程がわからないだろ。離れて撃つならスナイパーライフルだけど素人じゃ当てられないよ」
「そうなのか?」
「スコープのダイアルを調整してターゲットとの距離を合わせるんだぜ。やりかた知ってるか?」
「知らね~」
「練習したのならともかく、本番一発勝負ってムリゲーなの」
「なんでそんなこと知ってんだ」
「映画の受け売り」

 俺の趣味は映画鑑賞。その手の知識は映画から得たのだ。

「練習しといたほうがいいか?」
「人殺しの練習なんてやめとけ」
「けど、また来るかもしれないだろ」
「来ないよ」

 コイツが怪訝けげんそうな顔をした。
 たぶん根拠のない自信とでも思っているのだろう。

「へぇ~、なぜ言い切れるんだ」

 俺を試すようなトーンで聞いてきた。

「軍隊が戻らない理由を魔物に襲われたせいにしたいと瀧田たきたが言ってたよな」
「そのほうが都合がいいって話だろ」
「ありえないんだよ。いきなりあの規模の軍隊は動かせない。何度も森に斥候を送り、村を発見したはずだ。国に報告が届いたあと軍を編成した。俺たちの相手をするのは良知らちの役目。あの軍隊は魔物対策用さ。それが全滅なんてありえない」
「なるほどね~」

 コイツ、たぶん理解していない。適当に相づちを打っているな。

良知らちという俺たちへの抵抗手段を失い手詰まりのはずだ。けど、懸念は残る」
「どんな?」
「新たに異世界人が召喚される」
「ありえるわ……」
「一年ごとに召喚してるらしいから、まだ対抗手段を練る暇はあるさ」
「でもさ、加護が弱かったらはずれだろ」
「これはあくまで憶測だけど、召喚されたのがクラス全員じゃなくて、ひとりだったら全員の加護をひとりで得られたかもしれない」
「バケモンじゃね~か」
「まあ、可能性のひとつだよ」

 俺は笑ってごまかした。
 でも嫌な予感ってのはあたるんだ。
 せめて、新しく来るヤツが善人であることを祈ろう。

「そういやぁ鬼頭きとうに睨まれてたなぁ~」

 コイツは俺の顔をのぞき込みながらニヤニヤしている。
 鬼頭日香莉アイドルが好きなのは隠しているが、たぶんバレてるだろう。

「あれな。村を守るんだって肩肘張ってたから注意したんだよ」
「またオマエは、憎まれ役を買って出たのか」
「村に残ったメンツで言えるのは俺くらいだろ」
「そんなこと……あるなあ。しいて言えば瀧田たきたぐらいか」
「逆効果みたいだけどな」
「真面目なヤツほど背負い込むからなぁ~、委員長もストレス半端ない感じだし」
「ああ、息抜きを考えないとな」

しょうはどこだ』

 頭に直接響く声、ドラゴンだ。

「うわっうるさっ!」と儀保裕之悪友が驚く。

 コイツにも聞こえているようだ。
 俺は急いで鍛冶屋から出た。


 堤防のさらに奥にドラゴンがいる。
 俺との約束を守り、静かに着地してくれたのかもしれない。


 村のあちらこちらにレンタル自転車置き場が設置された。
 そこには、油科輝彦ネガティブが作った自転車が置いてある。
 部品も改良され、ほとんど現代の自転車とちがいない作りだ。
 広い村を移動するのにとても重宝している。

 俺は自転車に乗ってドラゴンのところへ向かう。
 儀保裕之悪友は鍛冶屋で待機するみたいだ。
 近くでアレを見るのは怖いからな。





 堤防のうえに到着し、自転車から降りる。
 先に石亀永江委員長が到着していた。
 俺が来るのを待っていたらしい。

「ドラゴン様、本日はどのようなご用件でしょうか」

 たまにでる彼女の丁寧語。聞きなれないので気持ち悪い。
 ドラゴンと対峙するのも三度目なので恐怖もたいぶ薄れたようだ。
 彼女は立って話をしている。

「うむ。しょうと約束した貸しを返すのがひとつ。それとは別に頼みがある」
「貸し、でございますか……。たとえばクラスメイトをもとの世界に帰してほしいとお願いしたら可能なのでしょうか」
「可能だ。しかし、対価としては釣り合わない」

 ――可能だとっ!

 ならば対価に見合うだけの貸しを作ればいいじゃないか。

「釣り合う対価とは、どのくらいなのでしょうか」
「人間は人生をかけてその方法にたどり着く。ならば対価とは人生そのものだ」

 あ、無理っぽい。
 彼女はぐぬぬぬって表情をした。
 その気持ちはわかるがキレないでくれよ。

「わかりました……諦めます……。では貸しについてですが、この村で畜産を始めたいと考えています。家畜を手に入れるのは可能でしょうか」
容易たやすいが、近隣の村を滅ぼすことになるが構わぬのか?」

 ――なんでだよ! まさか奪うつもりなのか?

「それは困ります!! ならば鉱石を採掘するために人間を運んでいただくのは可能でしょうか」
「よかろう。運ぶ人間を選ぶがいい」
「連れてきます」

 彼女は自転車に乗って村の中央へ向かう。

「約束を守って静かに着地してくれたようだな」
「我は約束を違えたことなどない」
「そうか、感謝するよ。で、頼みとはなんだ?」
「あの人間、こんどはベッドが欲しいと言い出した」
「は? ベッド?」
「地面のうえで寝るのは嫌だと言うのでな」

 アイツ、どんな生活してるんだ?
 ドラゴンを顎で使うとか、上下関係が逆転してるぞ。

「わかった。最上級のベッドを用意しておく。対価は貸しにしてくれ、この村は不足しているものが多い、またアンタの力を借りたくなるケースも出てくるはずだ」
「よかろう約束だ」





 石亀永江委員長が戻ってきた。
 採掘の加護をもつ才賀小夜腐女子も後ろから自転車でついてくる。

「ドラゴン様、この者を運んでいただけますか」
「よかろう」

 才賀小夜腐女子はすでに涙目だ。
 彼女は半透明な青い玉に包まれるとドラゴンの手に収まる。
 ドラゴンは、ふわっと飛び上がるとあっという間に飛び去った。

「ひとりで行かせて良かったのか?」
「あっ!」

 緊張でそこまで気が回らなかったのかもしれない。
 がんばれ、才賀小夜腐女子



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!

 決心がつく前にドラゴンに拉致られたぁ~っ。
 酷いよ委員長ぉ!

 しかし不思議な玉だなぁ。
 風も重力も感じない。
 ど~なってるんだろぉ?

「おい人間、どこへ向かうのだ」
「うひっ、あっ、あっちのほうへお願いしますぅ」

 この脳に響く声、なれないなぁ。
 もしかすると心の声も聞かれているのかなぁ。

 ドラゴン様、聞こえていますか? ドラゴン様。

 返事がない。やっぱり聞こえないようだね。

「ドラゴン様、あっちですぅ」
「うむ」

 見た目は凄い怖いけどぉ、意外と素直なのかも。
 苦瓜にがうり君は平気な顔で話してたし。
 いやぁ、彼が特別変なんだよ、うん。

「ドラゴン様、このあたりですぅ」
「なんだ近いではないか」

 いえいえ、たぶん歩いてきたら二ヶ月は必要なくらい離れてますけどぉ。

 切り立った断崖の前に着地。
 たぶん地震かなにかで地面が隆起したんだわ。
 地層が表面にくっきり見える。

「ありがとうございますドラゴン様、急いで掘るのでお待ちください」
「うむ」

 まるで犬のように丸くなりました。
 ちょっとカワイイ。

 目を開けられないほどピカッと眩しく光りました。
 そ~っと目を開くと、そこには男性が立っています。

 顔は苦瓜にがうり君。けれど体は別人でした。
 薄い本に登場するような細マッチョ。
 さらに裸ですぅぅ!!!

 太くて長いアレが股間にぶら下がっています。

「どうした掘らないのか?」
「うひっ? お尻ですかぁ?」
「なんの話だ」

 声も苦瓜にがうり君です。
 ヤバいですね、彼が主人公の薄い本が書けそうです。

「あ、あのぉ、この苦瓜にがうり君はなんですかぁ?」
「オマエが岩に押し潰されると約束を違えることになるからな、守ってやろう」
「ありがとうございますぅ」

 あんがい優しいみたいだね。

 わたしの加護は採掘。
 岩に手をかざすだけで簡単に鉱石が掘れるんです。
 どの鉱石が欲しいのかわからないし。掘れるだけ掘って、あとはクラスメイトに丸投げよ。





 地形が変化するくらい掘りました。
 山が半分ほど削れたけど、誰も怒らないよね。
 たぶん、みんなの欲しがった鉱石も手に入ったはず。

 振り返るとそこには細マッチョの苦瓜にがうり君が立っています。
 アレは立っていませんが……。

 ちょっと興味をひかれますね、アレが立つとどうなるのか。
 同人誌を描くときの参考資料としてチェックしたいなぁ……。

「ドラゴン様、この苦瓜にがうり君は実体ですか?」
「うむ」
「触ってもよろしいでしょうかぁ」
「許可しよう」

 苦瓜にがうり君の厚い胸に触れてみます。
 血の通う温かな体でした。
 脂肪の少ないパンと張った皮膚。
 筋肉の感触が指に感じられます。

 絵ではない初めての男性の体。
 見慣れていたはずなのに、想像とまったく違いました。

 指をついっと下げていきます。
 割れた腹筋。
 まるで岩のように固いんですね。

 そしてツルツルのアレ。
 マンガでも毛の生えてない描写が多いんです。
 ホンモノの苦瓜にがうり君も毛が生えていないのでしょうか。
 こんど見せてもらいます。

 ツン!

 アレはふにゃふにゃです。
 まるで海に浮かぶナマコだね。

 もっとよく見るために、地面に膝をつきます。
 アップで見ると先っぽはツルンとしているのがわかりました。

 握ってみると中に軟骨でも入っているかのような感触があります。
 不思議なモノですね。

 握ったり、こすったり、いろいろ試してみましたが変化ありません。

「ドラゴン様、この苦瓜にがうり君は不感症ですかぁ?」
「不感症とはなんだ」
「気持ちいいとか感じないのかなぁと」
「オマエを守るのに不要だろう」
「そうですかぁ……」
「残念そうだな。感覚があると人間は嬉しいのか」
「うひっ、えっ、そのっ、たいていの女子は喜ぶと思いますよぉ」
「それは良いことを聞いた。どれ、オマエで試してやろう」

 苦瓜にがうり君の体がピクンと反応しました。
 どうやら感覚がオンになったようです。

 優しく丁寧に、アレをこすります。
 ムクッ、ムクッ、ムクッっと重たい首をもち上げ始めました。

 ひえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!

 カワイらしかったハムスターが、いまでは蛇のように感じます。
 手のひらにドクンドクンと苦瓜にがうり君の鼓動が伝わってきました。

 それがとても苦しそうで、なんだか切なくなってきます。
 楽にしてあげたい。
 この心境は初めてでした。

「はむっ……」

 薄い本で知識だけはあります。
 それに、朱里《じゅり》ちゃんが千坂ちさか君をどうやって喜ばせていたのかも詳細に聞いてます。

「んっ、んっ、んっ……」

 唾液をたっぷりとアレにつけてクチビルでそっと包み込みます。
 歯をあてないように注意。あたるとかなり痛いらしいですね。

「んっ、んっ、んっ……」

 苦しいけれど、なるべく奥まで入れると喜ぶそうです。

「ほぅ、人間とは、このような感覚なのだな」

 苦瓜にがうり君が気持ちよさそうです。

「んっ、んっ、んっ……」

 舌の先端でチョロチョロと舐めます。

「おっ?」

 とてもくすぐったいらしいですよ。

「んっ、んっ、んっ……」

 クチビルをきゅっと絞ると圧迫感が高まって気持ちいいらしいです。

「背中のあたりがムズムズするぞ」

 苦瓜にがうり君がそろそろイキたいようです。
 なんだか嬉しいですね。

「んんんんんんっ」

 ラストスパートをかけてみます。

「なんだこの感覚は!!」

 苦瓜にがうり君のアレがビクンビクンと痙攣けいれんしました。
 どうやらイッたようです。

 けれど精液は出てきません。
 そこまで高性能な擬態化ではないのかもしれませんね。
 張り詰めていたアレが、くたっとしぼんでしまいました。



 やってしまいました。
 城野じょうのさんから苦瓜にがうり君を奪ってしまった気がします。
 これは薄い本で定番のネトラレですね。

 心のなかにほんの少しだけ罪悪感がうまれます。
 ひとのカレシをとるような女性を軽蔑していたのに、まさか自分がその立場になるなんて思ってもみませんでした。
 自分でも信じられませんが、優越感で心が満たされるようです。

「どうですかぁドラゴン様、気持ちよかったでしょうかぁ」
「初めての感覚であった。誉めてやろう人間。――そうだな、褒美をやろう、何が欲しい」
「連れ去った城野じょうのさんを返してもらうのはダメですかぁ?」
しょうとの約束があるからダメだ」
「じゃぁ~、わたしがピンチのときにヒーローみたいに助けてください」
「良かろう」

 しょう君は右手で左手の小指を掴むとブチッと引き抜きました。

「ひいっ!!!」

 その引き抜かれた指は細く丸く変形し、白いリングになりました。

「これをつけて祈るがいい」
「あ、ありがとうございますぅ」

 ドラゴンを喜ばせると宝物がもらえるなんて、まるでおとぎ話のような数時間でした。

「帰ったらあの人間にやらせよう」

 ドラゴンが不穏な発言をしたけど、わたしのせいじゃないよね――
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