ネトラレクラスメイト

八ツ花千代

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51話

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 家畜購入部隊は村を出てから六日で帰ってきた。
 知らせを聞いた俺と儀保裕之悪友は正門広場へ向かう。


 仕事を終えて帰ってきたのだから得意げな表情をしているだろうと予想していた。
 しかし、彼らの表情は明らかに沈んでいる。

「どうした? 家畜買えなかったのか?」
「いいや、雌の牛が買えた」

 儀保裕之悪友の質問に石亀永江委員長は歯切れ悪く答えた。

「あとで話がある。とりあえず牛を下ろそう」
「そうだな。気仙けせん、疲れているところ悪いけど、家畜小屋作ってくれ」
「わかった」





 農地の近くがいいだろうということで家畜小屋は2区に作られた。
 クラスメイトは牛乳が飲めると喜んでいる。
 畜産の加護をもつ牧瀬遙ミーハーは嫌悪感を態度ににじませながら家畜の世話をしている。

 ――オマエしか知識がないんだ、我慢しろ!

 俺と儀保裕之悪友、それと沈んだ表情の石亀永江委員長瀧田賢インテリメガネが議事堂に集合した。

「動揺させるのも悪いから定時連絡では知らせなかったけど、良くないうわさを耳にしたんだ」

 真剣な表情で彼女が話を始めた。
 その雰囲気から楽しいうわさではないとすぐにわかる。

うわさ?」
「男が二人、女が三人の旅人が、兵士に捕まり連行されたと」
「それってアイツらか?」

 儀保裕之悪友が不安気な表情で聞き返す。

 たぶん、才原優斗イケメン出水涼音令嬢二見朱里歴女由良麻美ファン潘英樹覗き魔だ。
 もとの世界に帰る方法を探しに、村を出た探求部隊が、まさか……。

「わからない。けれどうわさの特徴は一致している」
「アイツら戦闘系の加護だし、兵士に捕まるなんて考えられないんだが」
「どうやら人質を取られたらしい」
「くわしく教えてくれ」

 彼女はとても言いにくそうだ。
 歯切れの悪い石亀永江委員長なんて初めてみた。

「……複数の目撃者から聞いた断片的な情報だ。まず女が兵士に捕まった。そこに宰相が来た。『教えろ』と言っていた。宰相の前に男が呼ばれ、首輪をつけられた。もうひとりの男が突然炎に包まれ骨も残さず焼けた。四人は連行された」

 なるほど、彼女が辛そうにしていたのは才原優斗イケメンが死んだからか。

 ゴブリンの洞窟で石亀永江委員長の死体を見てから、俺の心に死への耐性が生まれた気がする。
 出水涼音令嬢が殺されたときも、そして今も、それほどショックを受けていない。

「俺の推理だと、宰相は人質をとり、加護の力を聞き出した。そして炎使いのばんを使えると判断し隷属の首輪をつけたのだ。そして才原さいばらを殺すよう命令した。その理由はわからないな」

 推理大好きの瀧田賢インテリメガネが説明した。
 メガネのポジションを治す仕草がない。たぶん、才原優斗イケメンの死に関する推理だからドヤ顔ができないのだ。
 たぶん、みんなも同じ推理をしたけれど、無粋なツッコミを入れる人はいない。

「宰相ほどの地位のあるヤツが、わざわざ出向いたのだから、アイツらの動向は相当前から察知されてたんだろう」

 と、俺も推理してみる。

「村人にもとの世界に帰る方法を聞きまくったんじゃね、アイツら」

 儀保裕之悪友が酷い想像をしている。
 そんなマヌケじゃないはずだ。……たぶん。

「どうするの?」
「どうするよ」

 石亀永江委員長儀保裕之悪友が俺の顔を見ながら聞いてくる。
 コッチ見るな。

「静観だ」と瀧田賢インテリメガネが冷酷な意見を吐いた。
「ウソでしょ?」

 石亀永江委員長瀧田賢インテリメガネをキッと睨む。

「アイツらは覚悟を決めて出ていったはずだ。もし救出するとなると一国を敵にまわすことになるぞ」
「もう敵じゃん。俺たち何人殺したと思ってんだ?」

 俺も儀保裕之悪友のいうとおりだと思うぞ。

「しかしっ。……助ける理由が、価値が、あるとでもいうのか?」
「同郷のよしみじゃん」
「理解できん」

 瀧田賢インテリメガネは頭を押さえながら首を振った。

「俺は独裁者だからな、好きにやらせてもらうぜ」
「責任を取る覚悟があるのなら勝手にしろ」
「心配すんな翔矢しょうやがいる。な!」

 コッチ見んな。

「面倒事は俺にふるんだな」
「おうよ」

 悪意なくニカッと笑いやがる。

「ならいっしょに死んでもらうぜ」
「もとからそのつもりだ」
「よし! 二人で乗り込むぞ」
「いいねぇ~胸が熱くなるぜ!」

 俺と儀保裕之悪友は熱血漫画のように腕を組んでクロスさせた。

「はあっ?!」

 石亀永江委員長が驚いた顔をした。
 あたりまえか。

石亀いしがめさん、引きとめる言葉や、心配する言葉はもういらない。応援よろしく」

 先に釘を刺されてぐぬぬぬって顔だな。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 俺と儀保裕之悪友は装甲車でドライブ中だ。

 家畜購入部隊が街道を整備しながら森を進んだので快適に進める。
 これなら半日で森を抜けられそうだ。
 車内には、ポリタンクに入った水や、日もちのするソーセージなどの食料が満載。
 心配性の石亀永江委員長がむりやり詰め込んだのだ。


「快適なドライブだな~、まるでもとの世界に帰ってきたみたいだ」

 ハンドルを握るコイツが呑気なことを言い出す。

「もとの世界なら高校生が車を運転したら捕まるぜ」
「言えてる」

 二人でケラケラと笑う。

「なあ翔矢しょうや、このまま他の国にいくって案もあるんじゃね?」
「アイツらを見捨ててか?」
「あの場じゃ否定したけど、瀧田たきたの意見も間違いじゃないと思う。俺たちが命をかける理由なんてないぜ」
「もったいないだろ」
「え?」
「クラスで二番目にキレイな出水いずみと、中央値の由良ゆらと、下から数えたほうが早い二見ふたみが敵の手に落ちるなんて、もったいないだろ」
翔矢しょうや、そのランク付けはヒドイぜ……、わかるけどよ」
「男の命なんて女を助けるためにあるのさ」

 ドヤ顔するが、コイツは前を見て運転しているので俺の顔は見れない。

「その台詞は女子の前でいうんだな」
「言えてる」

 二人でケラケラと笑う。

「じゃあ、なんで城野じょうのを助けにいかないんだ?」
「俺が助けにいくまでアイツは生かされる約束だ。けど失敗すると殺される。だから慎重に計画を練る必要がある」
「そうだったな」
「いくら考えても良い案が浮かばない。まず、ドラゴンのいる場所が不明だ。広大な森を、なんのアテもなく彷徨うなんて自殺行為。かりに、森の中央にいるとしても、空手バカのこまが道中の敵に勝てるのを確認しないと進めないだろ」
「たしかに」
「今のところ、正攻法じゃなくてクチゲンカで勝てないか考えているところさ」
「怖いもの知らずだなオマエは」
「そんな俺についてくるオマエもな」
「言えてる」

 二人でケラケラと笑う。





 森と平原の境目で道の舗装は終わっている。
 家畜購入部隊はここに車を止めて徒歩に切り替えたらしい。

 油科輝彦ネガティブが作成した撮影ドローンを使い、上空から車が走れそうな場所を探す。
 リモコンの液晶に風景が映し出された。
 地学部の千坂隆久モヤシが作成した地図と見比べ、現在位置を確認する。
 首都からはだいぶ離れているようだ。

 装甲車で街道を進むのは目立ちすぎる。
 なので人目を避けるため森の外周に沿うように移動しながら首都に向かう。





 首都に一番近い宿場町の近くで車を止めた。

「じゃいってくる」
「気をつけてな」

 車に儀保裕之悪友を残し、単独行動を開始。
 俺は普通の村人に見える服装に着替えている。
 クラスメイトが買っていたのを借りたのだ。
 そこから乗り合い馬車を使い、首都に向かう。

 儀保裕之悪友は俺の単独行動に強く反対した。
 けれど、人質を無事に村まで送るには車が必要。
 もし誰かに壊されでもしたら大変だからと、説得したのだ。

 渋々だけど了承してくれて良かった。
 これからは加護のスキルを使う。秘密を知られるのを避けたかったのだ。





 城門の前で全員が馬車から下ろされる。
 身分確認だ。
 しかしこの世界に俺の身分なんてない。
 だから姿を消して町のなかへ侵入した。

 東洋人の顔は珍しいので、ずっと姿を消したまま移動する。
 通行人に当たらないように注意しながら首都の中心に向かう。





 懐かしき訓練場。
 才原優斗イケメンが兵士に転がされ、狛勝人空手バカが兵士を転がし、良知智晃雷使いが団長を焦がした。
 ずいぶんと昔のように感じるが、まだ半年も経ってない。
 いろいろあったなぁ……。
 まるで走馬灯。いや、まだ死なないから。





 女子の居場所はネトラレ気配でわかるから後回し。
 まずは炎使いの潘英樹覗き魔を探す。

 姿を消したまま兵士宿舎を徘徊。
 都合よく、彼のうわさ話をする兵士なんているわけない。
 俺たちが宿泊していた迎賓館やダンスホール。食堂や医務室。行けるところはすべて確認した。
 しかし、どこにもいない。



 そうこうしているうちに夜になってしまった。
 潘英樹覗き魔の捜索はいったんあきらめよう。
 隷属の首輪をしているうちは酷い扱いは受けないはずだ。

 胸のあたりがウズウズする。
 これはネトラレ気配だ。
 誘蛾灯に集まる虫のように、俺の体はネトラレ気配に誘われてしまう。
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