ネトラレクラスメイト

八ツ花千代

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52話

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 宰相の部屋から香ばしいネトラレ気配が漂ってくる。
 あの野郎、やはり彼女たちに手を出していた。
 前にきたときは窓の位置が高くて部屋の中が見えなかった。
 石亀永江委員長がヤツのオモチャにされていたのに、音しか聞けなかったのだ。
 あんな悔しい思いは二度と繰り返さない!

 昼のうちに、窓の外に足場となるような木箱を準備しておいた。
 俺はそのうえに乗り部屋のなかをのぞく。
 姿を消しているので俺の顔が見られる心配はない。



 天蓋のついたベッドがまず目に入る。
 キングサイズよりも、さらに二回りは大きいだろう。
 艶のあるワインレッドのビロードで彩られたベッドが卑猥さを際立たせている。

 そのうえに中年太りしたオッサンが全裸で横たわっていた。
 宰相だ。

 ベッドから一歩離れた位置に、クラスメイトの女子三人がいる。

 出水涼音令嬢二見朱里歴女由良麻美ファン
 三人とも、全裸のうえにピンク色のネグリジェを着ていた。
 とても薄い生地なので肌が透けて見える。
 裸よりも、少しだけ隠れている女体ほどエロいものはない。
 鼻血が出そうなのを我慢しつつ、俺は三人を暖かく見守ることにした。

 彼女たちは無表情で胸と股間を手で隠している。
 恥ずかしがる様子はない。たぶん今夜が初めてではないのだろう。
 彼女たちの表情はまたか・・・と言いたげだ。

「ほれ、いつものように奉仕せぬか」

 出水涼音令嬢は鋭い殺意を宰相に向けている。
 にぶいのか、それとも豪胆なのか、恐ろしい瞳で睨まれているのに宰相は顔色ひとつかえない。
 彼女の表情を見ていると、俺の股間で固くなっているアレが恐怖で縮んでしまいそうだ。

「反抗的な目だ。あの男のように骨すら残さずに焼き殺して欲しいのかなぁ?」

 由良麻美ファンがビクンと反応すると、無言で涙を流した。
 彼女のクチからはっきりと聞いたことはないが、やはり才原優斗イケメンが好きだったのだろう。
 よく見ると彼女の目は腫れていた。もしかすると、ずっと泣いているのかもしれない。

「まだあの男のことが忘れられぬのか、未練がましいのう」
「うるさい」

 出水涼音令嬢の凍えそうなほど冷めたい声に、俺の背筋を悪寒がなでる。
 だが宰相は気にもとめていないようす。

「そうかそうか、外にいる兵士に乱暴に犯されるほうが好きなのか」
「くっ……」

 出水涼音令嬢が悔しそうにクチビルを噛む。
 ドアの外には兵士がいるらしい。
 助け出す前になんとかしないとな。

「さあ、どうするのだ」

 出水涼音令嬢は震える手でネグリジェの肩紐をずらす。
 するりと音もなく、ネグリジェが床に落ちた。
 すばやく腕で体を隠す。

 後につづくように二見朱里歴女由良麻美ファンもネグリジェを脱いだ。

「クックック」

 宰相のイヤラシイ笑い声が部屋に響く。

「体を隠すのを許した覚えはないがなあ」

 出水涼音令嬢は怒りを表情に出しながら、あとの二人は恥ずかしがりながら、体から手をどける。
 ランプの光が女子たちの裸体を優しく照らす。
 影により体の凹凸がなまめかしく浮き出ている。

「やはり若い娘の体はいつ見ても良い」

 宰相はとてもご満悦だ。ゲヒゲヒと汚い笑みをこぼす。

 出水涼音令嬢はとても均整の取れたプロポーションだ。
 運動部でもないのに体に余分な肉がついていない。
 きっと自宅にジムがあってトレーニングしているのだろう。
 プロポーションの自己管理も完璧ですわと、引き締まった体が主張していた。

 由良麻美ファンの体は運動部なのにぷにっとしている。
 弓道部なので、それほどハードな練習が必要ないのかもしれない。
 健康的な範囲だし、太っているわけではない。
 どこにでもいる高校女子だが、出水涼音令嬢が完璧なだけに隣に立つのが気の毒に思える。

 鳥ガラのような二見朱里歴女は不健康な痩せ方をしていた。
 肋骨の線は浮き出ているし、太ももの内側には拳が入るほどの隙間がある。
 しかし、三人のなかでは胸がいちばんデカい。
 痩せの巨乳。一部の界隈では好まれる体形だ。



「今夜はどうするか……。そうだな、左は舐めよ。中央は上にこい」

 左、それは出水涼音令嬢のことだ。
 アイツは彼女たちの名前すら知らないのかもしれない。
 人ではなく、性欲を満たすだけのモノとしか扱ってないのがわかる。
 彼女たちの尊厳を無視したアイツの言動に苛立ちを覚える。
 しかし、まだ飛び出すのは早い。
 お楽しみはこれからだ。

 命令されたのが気に入らないのだろう、彼女は眉間にシワを寄せた。
 ベッドに上がると四つん這いで宰相に近づく。
 宰相のフニャチンを親指と人差し指で挟むと、かるくしごき始めた。

 中央は由良麻美ファン
 顔を真っ赤にしながらベッドにあがると、そのまま宰相の顔をまたぐ。
 ゆっくりと腰を下ろし、股間を宰相の顔に近づけた。

「あっ……」

 宰相は由良麻美ファンの花弁を触っているようだ。

「あっ、あっ、んっ」

 ずんぐりとした指が彼女の股間でうごめいているが、俺の位置からはよく見えない。

「良い良い、蜜がたっぷりと垂れてきたわ」

 水音が窓の外まで聞こえてくる。

「んんっ、はっ、ああっ、んっ!」
「おい、指ではなくクチで奉仕せぬか」

 出水涼音令嬢は憎悪の表情で宰相のフニャチンを舌で舐め始めた。
 噛み斬っても不思議ではないほど彼女の怒りは手に取るようにわかるのに、宰相は怖くないのだろうか。

「そうじゃ、丁寧にな」

 俺の股間は、はち切れそうなほど勃起しているのに、宰相はフニャチンのままだ。
 まだ勃起不全EDは治っていないようだな。

「右のヤツ乳首を舐めるのだ」

 二見朱里歴女出水涼音令嬢に負けないほどプライドの高いタイプ。
 まるで虫けらを見るような視線をヤツにむけた。
 ベッドに上がると宰相の乳首を舐め始める。

 出水涼音令嬢二見朱里歴女は彼氏がいるので性行為は慣れているようだ。
 嫌そうにしているが、舌の使いかたが巧み。
 それにたいして、由良麻美ファンの反応は初々しい。
 派手系女子のグループに所属しているのに、もしかすると彼氏がいないのかもしれない。

「ほれっ、もう少し腰を下ろすのだ」

 アイツは由良麻美ファンの腰を掴むと、強引に下げた。

「あっ!」

 彼女の股間を顔に押し付けると、どうやら舐め始めたようだ。
 太い指が彼女のお尻を掴むと前後に揺らしはじめる。

「はあんっ、んんんっ、あっ、あっ、いやっ、あっ」

 彼女はアソコを舐められるのが弱いらしい。
 上半身をくねらせながら快感に耐えている。
 女子高生三人に愛撫させるなんて、どんだけ贅沢なんだよ!!!
 許せない。羨ましくて絶対に許さない!

 おっといけない。観戦に夢中になりすぎたようだ。





 木箱から下りて裏手の窓にむかう。
 前にきたときは、玄関に鍵がかかっていたので、念のため窓の鍵を開けておいたのだ。


 壁に固定してあるランプが、廊下をほんのりと照らす。
 フカフカの絨毯じゅうたんのうえを歩きながら宰相の部屋へ移動する。
 俺が履いている靴は、革使いの嘉門剛平ソムリエが特注で制作した消音機能付きブーツ。
 だから絨毯がなくても足音はしない。


 ドアの前にヤリをもった兵士が二人。
 きっと毎晩朝まで護衛しているのだろう。
 片方の兵士はドアに耳をつけて中の音を聞いているようだ。
 その気持ちは痛いほどわかるぞ。

 そっと近づき、スプレーをシュッ。

 これは薬局の財前哲史サトリが制作した即効性の睡眠薬。
 吸引すると、なにをやっても丸一日は目を覚まさないスグレモノ。
 ちなみに俺は眠気を中和する飴を舐めている。
 まちがえて俺まで寝てしまわぬよう対処してあるのだ。

 兵士は気を失うように眠ると、体から力が抜けた。
 倒れる音を出さないため、兵士の体を支え、ゆっくりと座らせる。

「おい、寝るなよ」

 しょうがないなと言いたげな表情の兵士にスプレーをシュッ。
 これで邪魔者はいなくなった。

 俺は透明化を解除し、そっとドアを開いた。
 ギィーと、蝶番ちょうつがいの音が鳴る。

 女子三人が音に気づき、俺のほうを見た。
 俺は『シーッ!』と、静かにしろとジェスチャーをする。
 三人の表情は花が咲いたように、ぱぁ~っと明るくなった。
 さらに『動くな』とジェスチャーをする。

「どうした、なにか急用か?」

 由良麻美ファンの股間に埋もれている宰相には、俺の姿は見えていない。
 俺は腰に差していた短剣を抜くと、ベッドに上がり、由良麻美ファンの肩を下に押す。

「むぐっ!!!」

 察してくれたのだろう。由良ゆらは太ももを絞め音が漏れないようにした。

 ズッ――。

 儀保裕之悪友特性の短剣だ。切れ味は折り紙つき。
 驚くほど、抵抗なく、短剣は宰相の心臓を軽々と貫通した。
 骨すら切り裂くなんて、どんな効果をつけたのやら……。

「ん゛っ!!!!」

 宰相が俺の手を掴み、抵抗する。
 ヤツの爪が俺の肌に食い込み、血がにじむ。
 アドレナリンが体内に分泌されているので痛みは感じない。

 心のスイッチを殺し屋の役にしてある。
 俺はプロだ。ターゲットの死によって心が動かされることなどない。
 クライアント(儀保裕之悪友)との打ち合わせにより、オマエの排除は決定していた。
 生かす理由も、情けをかける理由も存在しない。
 言い訳を聞く時間すらムダ。
 俺に狙われたのが運の尽きだと思うがいい。
 由良麻美ファン二見朱里歴女はどうでもいいが、石亀永江委員長出水涼音令嬢に手を出したのは万死に値する。
 俺はプロなんだ。私怨で殺人などしない。
 けれど、羨ましい。
 女子高生三人とプレイするなんて贅沢すぎるだろ!
 一度でいいから裸の女子に囲まれてみたいものだ。





 数秒後、宰相の手から力が抜ける。
 しかしフニャチンに血がめぐり、青筋が浮き出るほど勃起していた。
 よかったな、死ぬ間際に勃起不全EDが治って。地獄で喜ぶといいさ。



 俺は大きな溜息ためいきをつくと、短剣から手をはなす。

苦瓜にがうり君っ!!」

 出水涼音令嬢が抱きついてくる。
 胸の感触を堪能したいが、いまはその時じゃない。

「シーッ! 再会を喜ぶのは後。このなかに服が入っているから着て」

 裸なのを忘れていたのだろう。三人は慌てて肌を隠す。
 俺は背負っていたバックパックを床に置いた。
 ちなみに変装用にもってきたので下着は入っていない。
 スースーするかもしれないけど許せ。


 宰相から短剣を引き抜き、腰のさやに戻す。

 廊下の兵士が見つかると厄介だ。
 ドアを開き、廊下で寝ている兵士を部屋のなかに引きずりながら入れた。
 宰相の隣に兵士たちを寝かせると、掛ふとんを体のうえにかける。
 室内のランプをすべて消し、宰相が寝ているように偽装した。



 用意した服はワンピースなので着替えの時間は短い。
 俺が作業を終えるころには、彼女たちの着替えはすんでいた。

 俺たちは窓とベッドのあいだに座り姿を隠す。

ばんを探したけど見つからなかった。どこにいるか知らないか?」
「いいえ。わたくしたちとは別の馬車に乗せられて連れてこられたのよ」

 別の馬車……。
 となると、この近くにはいないのかもしれない。
 今回はあきらめるか。

 出水涼音令嬢はいつもの気高い雰囲気を取り戻している。

才原さいばらは……」
「わたくしたちの目の前で処刑されたわ」

 クソッ。やはりうわさは本当だったのか。

「アイツの死体は?」
「骨すら残らず焼かれたの……」

 もし死体が残っていればドラゴンにもらった深紅の珠で蘇生できたのに。最悪だ……。

「アイツ、なにしたんだ」
「人質を交代するから女子は逃がして欲しいと言ってくれたのよ」
「最後までイケメンだな」

 由良麻美ファンが泣き出した。

「泣いてもいいが声をおさえてくれ、見つかるから」

 辛い気持ちは同じはず。それなのに出水涼音令嬢は彼女の頭を包み込むように抱きしめる。
 才原優斗イケメンと交際していたのは出水涼音令嬢なのに、友達の心を気遣う余裕があるとでもいうのか。

「もう少し夜が更けてから脱出する」
「なあ苦瓜にがうり君、キミはひとりでわれらを助けにきたのかね」

 二見朱里歴女が複雑な表情で聞いてきた。
 たぶん予想外だと思っているのだろう。

裕之ひろゆきもいっしょだ」
「二人?!」
「そうだが」
「無茶しすぎだろ」
「男の命なんて女を助けるためにあるのさ」

 人生でこんなこと言えるなんてこれが最初で最後だろう。
 俺は渾身のドヤ顔を披露した。

「バッカじゃないかね」

 決め台詞なのに、予想外の反応だ。

「でも、来てくれて嬉しい」
「おう」

 二見朱里歴女のデレはいりません。





 夜がさらに更けたころ、行動を開始する。
 廊下は誰かと遭遇する可能性が高いので窓から脱出する。
 外に木箱を用意しておいて正解だ。
 窓からでるときに、俺は外から彼女たちの脱出をサポートした。
 スカートの中が見えたのだが、助けたお礼としてガン見させてもらおう。
 彼女たちも文句は言わないはずだ。


 俺が先行し、人がいないのを確認してから手招きで呼ぶ。
 幸い誰にも遭遇することはなかった。
 見つかったとしても睡眠スプレーを使う予定だけどね。





 乗合馬車の始発が出るまで、城門近くの路地裏に隠れることにした。
 俺たちは肌を寄せ合い、地面に座る。

「また苦瓜にがうり君に助けられたわ」

 出水涼音令嬢は、俺の腕についた宰相の爪痕を治癒の加護で治してくれた。
 傷が残っていないのをナデナデしながら確かめると、そのまま俺の腕にしがみつく。
 下着をつけていないので胸の感触が最高だ!
 これはご褒美。堪能してもいいだろ。

「たまたまだよ」
「それでも、助けられたのは事実よ。お礼をしなければね」

 誘惑するような瞳で俺をじっと見つめる。

「いらないよ」
「わたくしの気が収まらないわ。――そうね、次の三つから選んでくださる?」
「ああ」
「一、わたくしを抱く。二、わたくしの体を好きにする。三、わたくしの奉仕を受ける。さあ、どれがいいかしら?」
「えっ?! 出水いずみさんと苦瓜にがうり君は付き合っているのかね?」

 二見朱里歴女が目を丸くして激しく驚いた。
 彼女の反応は当然だ。大病院のご令嬢と俺じゃ釣り合わない。

「しらなかったぁ~」

 由良麻美ファンも同じく驚いている。

「付き合ってね~よ!」
「そうね、わたくしの告白を無下に断っているのですから」
出水いずみさんからのアプローチを断る男がいるなんて……。凄いな苦瓜にがうり君は」

 二見朱里歴女が不思議な生物を見るような視線を向けてくる。
 その目は、もったいないとか、分をわきまえろと訴えていた。

「悔しいですけれど、彼には好きな人がいるんですって。わたくしよりもカワイイ子が」
「えっ? それってまさか鬼頭きとうさん?! 身のほど知らずね……」

 由良麻美ファンの容赦ないツッコミが俺の繊細な心に言葉のナイフを突き刺した。

「助けてもらっておいて、その発言はないんじゃないかしら?」

 出水涼音令嬢が静かに怒っている。

「あ、ごめんなさい」
「わたくしとしては、釣り合っていないのは鬼頭きとうさんのほうだと思いますけどね」
「謎に俺への評価が高いよね」
「人を見る目はあるほうだと自負していますわ」
「まあいいよ。さあ、少し寝たほうがいい、朝は早いからね」

 出水涼音令嬢は俺の腕に捕まり、頭を肩に載せ、手を握りながら寝た。
 気を許せない危険なヤツだが、黙って寝る姿は天使だった。
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