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引き際
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産業スパイとして潜り込んだはずの杉沢秀一は任務を放棄し女性の尻を追いかける日々を過ごしていた。
ノミの情報は例の先輩スパイが収集してくれる約束だし、久下部長には口出しするなと釘を刺した。なので彼は気兼ねなくナンパを楽しんでいた。
小井戸沙来が給湯室に入るのを確認してから後を追う。
「またアナタですか」
「名前で呼んで欲しいな~」
「どちら様?」
「ハハッ手厳しいね」
「いい加減しつこいですよ、迷惑しているのがわかりませんか?」
「それは君が僕を知らないからだよ。お互いのことをもっと深く理解すれば楽しい会話に花が咲くはずさ」
「知りたくありませんし、アナタと話をする気もありませんから、どうかお帰り下さい」
「つれないなあ。どうしてそんなに邪険にするんだい?」
「前にも言いましたけど私には好きな人がいます。その人以外は眼中にいません」
「噂は聞いたよ、久崎って言うんだろ。君のアプローチを袖にしているらしいじゃないか。望みの薄い相手よりも、今まさに告白している僕を選ぶのが賢い選択じゃないかな」
「諦めるつもりはありません、私を好きになってもらいます」
「ハハッ、僕と君は同じじゃないか。僕も諦めるつもりはないし、僕を好きになってもらうつもりだ。もし僕を迷惑と言うのなら久崎も同じように迷惑と感じているんじゃないか」
「それはっ……」
「久崎は君を傷つけないように態度に出さないだけで、心の中では激しく拒絶しているかもね。それなのに君は気づかずに、いや、気づいているけど粘着しているんだ。それはプライドだよ。誰もが可愛いと認める君は男性にフラれるなんて我慢ができないんだ。今まで男性にフラれた経験ないんだろ?」
小井戸は応えずにじっと彼を睨んでいる。
「図星だね」
「わ、私は彼が喜ぶことをして好きになってもらいます。アナタのように相手が嫌がることはしません」
「本当に喜んでいるのかい? 彼にお茶を配っているんだろ、その時どんな表情をしてる?」
思い返すと久崎はいつもそっけない態度だ。とても喜んでいるようには見えない。
反論できない彼女は苦々しい表情で彼を睨んでいた。
「これも図星かぁ。ねぇ小井戸さん、君ってもしかすると僕より酷いストーカーかもしれないね。僕は少なからず自覚がある。君が嫌がっているのは理解しつつ、それでも好きだから振り向いてもらう努力をしている。でも君は彼が喜んでいると錯覚している。それはとても危険だ、エスカレートすると彼を傷つけるよ」
「そ、そんなことはありません!」
誰かの足音が聞こえる。
「誰か来たみたいだね。ゆっくり考えるといいよ。じゃまた」
杉沢が去った給湯室で小井戸は呆然と立ち尽くすのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
経理の梅井亜弥がご機嫌なステップで廊下を歩いている。
手には数枚の清算書が握られている。それを書いた社員のもとへ行き修正させるのが彼女の仕事だ。
本来は内線で呼び出し清算書を取りに来させるのだが、彼女は自分から届けに行く。それは社員の事情を考慮しているのではなく単なるサボりだった。
給湯室から出てきた男性社員は備品を積んだ台車を押しながら梅井とすれ違う。
何気なく給湯室を覗くと小井戸が深刻そうな表情で立ち尽くしていた。
その姿をみた梅井はいやらしい笑みを浮かべる。
へぇ~、あの様子は痴情の縺れよね。
大人しい顔して何人もの男性に唾付けてるんじゃない。
これは良いネタができたわ、社内に拡散してあの子の人気を落とすチャンスよ。
……でも言い寄られただけって可能性もあるわね。
いっそのこと給湯室で抱き合っていれば写メしたのに。
あ! あの久崎ってヤツに教えてたらどんな顔するだろ、そっちのほうが面白そうだわ。
梅井は鼻歌を歌いながら久崎が悔しがる顔を想像するのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
久崎は交通費の清算書を経理部へ提出しに来ていた。
経理部の入口には受付箱が用意されており、そこへ清算書を入れておけば係が処理してくれるのだ。
部屋の奥にいる梅井亜弥が視界に入ると、小井戸に謝ったほうが良いと言われたのを思い出した。
確かに言い過ぎたと感じていた久崎は謝ることにする。
「梅井さん、ちょっといいかな」
「あらっ、可愛そうな女に何か御用ですか?」
「その件だけど、あの時はちょっと言い過ぎた、謝ろうと思ってね」
「へぇ~意外だわ。私みたいな嫌な女とは口も聞きたくないんじゃない?」
「嫌だなんて思っていない。俺は人と話すのが苦手でね、あの時は君が話しかけてくれたのが嬉しくて舞い上がってしまったんだ」
「もしかして私に気があるの?」
「いいや全くない。綺麗な女性だとは思うが、好きと言う感情は微塵もない」
「アナタっていちいち癇に障る物言いするのね」
「否定はしない。それで気分を害したのなら申し訳ない、でもこれが俺なんだ」
「ふぅ~ん……。益々わからないわ、どうして小井戸さんはアナタが好きなんだろ」
「それは俺も疑問だ」
「面白いわね。謝りに来たって言ったわよね。こちらの条件を飲んでくれたら許すわ」
「条件を出されるのは納得できないが、いちおう聞こうか」
「夕食を奢りなさい。アナタと少し話がしてみたいわ」
「俺と? まあ、謝罪として飯を奢るのは筋が通っているし、かまわないが。女性が喜びそうな店なんて俺は知らない」
「おっけ~、店は私が選ぶわ、今夜でどお?」
「いいだろう」
二人は携帯端末を取り出し連絡先を交換する。
経理部は女性社員のほうが多い。
二人の会話は一字一句漏らさずに聞かれていた。
久崎が二股をしている、その相手は現ヒロインの小井戸沙来と旧ヒロインの梅井亜弥だ。
その噂は瞬く間に社内に拡散されたのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
シャニーグループ本社ビルの会長室。壁には『覆水不返』と書かれた大きな額縁がかけられている。これは失敗を極度に嫌う会長の性格をよく表していた。
会長は重厚な机の上に肘を置き顔の前で手を組んでいた。不機嫌な時のポーズとして役員の間では有名で、反論などしようものなら即日左遷だ。
廊下に立たされている生徒のように直立不動の姿勢で会長の前に立つ久下竜介。
裁判官の前で死刑宣告を受ける囚人と同じ心境だろう。
「久下君、進捗状況を聞こうか」
「はい。博士と名のっていた少女の名前は九十九ノミ。太平洋に浮上させた陸地を国土とし建国を宣言。国名はレイクリス。九十九女王と接触したと思われる人物は総理大臣と一部の大臣。天白商事の社長と一部の役員です」
「そのような情報はニュースを読めばわかる。君の得た成果を訪ねているのだ」
「はい。探偵を雇い九十九女王に関する情報を収集しましたが成果はありません。また、天白商事へ社員を送り込んでおりますがこちらも有益な情報は得られておりません」
「すると何かね、交渉が難航しているのではなく、まだ連絡手段すら掴めていないと?」
「仰るとおりです」
「予算から既に二億円を消費しておるが、内訳の携帯電話一億円、これはいったい何だ?」
「九十九女王と連絡が取れる携帯電話として購入しました。しかし騙されたらしく連絡は取れませんでした」
「騙されたぁ? 訴えたのかね」
「いいえ。連絡が取れない可能性もあると前置きされたのを承諾し購入したので訴えるのは不可能と判断しました」
「予算をどう使うのか、それは君に与えた裁量権の範疇なら自由だ。ただし、成果が得られた場合に限る。無駄にして良い予算などないのだ」
「仰るとおりです」
「弁解があるのなら聞くが」
「ございません。私なりに粉骨砕身し事に臨んだ結果、ご期待に沿える成果が出せていないのは事実でございます」
久下は深々と頭を下げた。
言い訳などすれば余計に会長を怒らせるのを熟知している。ここは全面謝罪が最善策なのだ。
顔の前で組まれていた手が机の上に置かれる。どうやら怒りは減少したようだ。
「一週間の猶予をやる。もしそれでも成果が出せないときは、一億の携帯の件、役員審議にかける。携帯の販売主と共謀し資金を横領したことになるだろう。もちろんそうなれば懲戒解雇のうえ刑事罰が待っている」
「猶予を頂きありがとうございます」
「成果を期待している」
会長室を出た久下は眩暈で立っていられなくなり、その場に立膝をついて座ってしまう。
一億を回収しなければ横領罪。成果を出せなければ懲戒解雇。そのどちらも一週間で成果を出さなければならない。
心情的にも肉体的にも目の前が暗闇に覆われてしまった彼は、気を失いその場に倒れる。
偶然通りがかった会長秘書に見つかり救護室へ運ばれたのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
お昼の休憩時間。さぼりスパイの杉沢秀一は天白商事近くの定食屋で昼食を取っていた。
相変わらず一緒に食事をしてくれる同僚はいないため一人で食べていた。
マナーモードに設定してある携帯が振動する。発信者の表示は『バカ』。久下部長をそのように登録してあるのだ。
彼は携帯に出ることなく食事を完食する。
支払いを済ませ店を出てから久下部長へ連絡を入れる。
「私ですけど何が御用ですか?」
「杉沢君、悪いニュースだ。会長が期限を指定された。一週間以内に成果が出せない場合私はクビだ」
「そうですか、それはそれはご愁傷様です」
「何を呑気な。君もクビなんだぞ」
「どうも部長はズレてますね。私はすでにシャニーグループに席はないのですよ? クビにできるわけないじゃないですか。せいぜい退職金に上乗せされているスパイ手当が減るぐらいです」
「シャニーグループに戻る気はないのだね」
「逆ですよ。戻す気ははなっから無かったのでしょ? この仕事がリストラを兼ねているのは理解してましたけどね」
「まさか、初めからそのつもりで情報収集していなかったのか!」
「侮らないでください、切り捨てられた身ですが仕事はしてます。僕なりに情報は掴んでいますよ」
「なにっ、早く教えろ!!」
「いくらで買いますか?」
「キサマ~」
「これは脅迫ではありません、正当な取引です。いくらで情報を買い取るのか興味ありますね~。言うなれば部長職の金額なのですから、ご自分がどのくらいの価値があるのか自分で決定できるのです。さぁ、その椅子はいくらですか?」
「一千万払おう」
「シャニーグループの部長が一千万? 年収よりも安いんですか、これはお笑いだ」
「ご、五千万だ、これ以上は出せん」
「まあ良いでしょう。私の銀行口座に振り込んでおいてください、入金が確認できたらお教えしますよ」
プツッと通話が切れてしまう。
久下の手は怒りで震えていた。
「くそっ、くそっ! くそっ!! くそっ!!! 杉沢のくせに足元を見やがって! 絶対に許さない、俺に逆らったことを必ず後悔させてやる!」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
梅井亜弥が久崎を夕食に誘った噂は小井戸沙来の耳にも届いていた。
パソコンのモニターを見ているが、よそ事を考えいるので焦点はあっていない。
梅井さん……、経理部の綺麗な人。
喧嘩の原因は知らないけど久崎さんが怒らせていたわ。
謝罪として夕食を奢るらしいけど、私が謝ったほうが良いって言ったからよね。
はぁ~余計なこと言うんじゃなかった。
竹を割ったような性格で、歯に衣着せぬ言動が男性に人気らしいわ。
子供っぽい私に比べると、大人の女性って感じだし、もしかして久崎さんのタイプなのかしら?
もしそうなら食事の誘いを受けたのも納得。私が何度誘っても断っていたのに、あっさりとOKするんですもの。
どうしよう、二人が親密になるのは嫌――。
高羽部長は彼女の近くに来ると、
「小井戸君、ちょっといいかね」と言い、会議室へと連れていく。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
少し小さな会議室。
四人掛けのテーブルとホワイトボードが置いてある。
二人は椅子に座らずに立ったまま話をしていた。
「久崎が経理の梅井と食事に行く噂は聞いたかい?」
「ええ、まあ」
「君は二股をかけられているんだ」
高羽は久崎のマイナスイメージを強調して彼女の愛を取り戻そうとする。
「それは違います。久崎さんとはお付き合いしていません。それにアプローチをしているのは私のほうですから」
「ヤツを庇うんだね」
「そんな気はないですけど。でも軽い気持ちで女性と付き合う人じゃないです」
「君ほどの美女に言い寄られて気が大きくなってるから他の女性にも手を出すんだよ」
「私に言い寄られても嬉しそうじゃないし、梅井さんには蹴られてましたけどね」
彼女は痛がる久崎の顔を思い出し微笑する。
「なあ、ぱっとしない久崎のどこが良いんだい? 人付き合いが下手で出世の見込み無し。あの歳で平社員。会社に友人はなく。面白い会話のひとつもできない」
「さすが部長、仰る通りだと思います。人付き合いの苦手な人が頑張って会話しようとする姿って可愛く感じませんか? 友人が少ないってことは一緒にいられる時間が長くなるし。平社員なら会社より家庭を大事にしてくれそうです」
高羽が唖然とした表情で固まっている。
「部長よりも、平社員が、良い?」
「少ない収入でも私かまいませんし」
「へ、へぇ~無職でも同じことが言えるかな」
「もしかして久崎さんをクビにしようとか考えています?」
「君の返事次第かな」
前に別れ話を持ち出した時にも左遷をほのめかしていた。咄嗟に思いついたのではなく、彼の人間性から出る言葉なのだと理解する。
「サイテー」
彼女の視線から優しさが消え、怒りの炎が見え隠れする。
「え?」
「見損ないました。立場を利用して脅すなんて信じられません!」
「君が悪いんだろ! 僕を蔑ろにするから」
「正々堂々と男らしさで競い合ってください。魅力的な男性だと証明してください!」
「だから僕は部長でやつは――」
「役職は男性の魅力ではありませんよ。私は祥幸さんの大人の余裕というか包容力にひかれていました。決して部長だから好きになったわけじゃありませんよ。最近のあなたからは余裕が感じられません、まるで怯える子犬です」
「それは君が僕から去ろうとしているからだ」
「交際している女性がいなくなるだけで、どうしてそんなに臆病になるんですか。祥幸さんのほうじゃないですか? 私と交際して気が大きくなっていたのは」
「僕、が?」
「私はあなたを飾る花じゃありません。私がいなくても余裕ある態度を見せてください。もう一度お願いします、私と別れてください」
彼女の目からは決心の硬さが見て取れた。
彼は泣き出しそうな顔を一瞬するが、彼女に言われたのを思い出し、大人の余裕を見せようと平気な顔をする。
「わかった。これ以上みっともない姿を見せると君に嫌われてしまう。だが諦めたわけじゃない。僕は待っている。久崎にフラれたら僕のもとへ戻ってくるといい」
彼は反転し小井戸に背を向ける。
「そうならないよう努力します」
小井戸は深くお辞儀をしてから会議室を後にしたのだった。
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天白商事の本社ビル前に黒塗りの高級車が停車する。
ノミにインタビューしようと待ち構えている報道陣がざわつきカメラを構えるが、誰もシャッターを切ろうとはしない。
青いナンバープレートに〇で囲まれた『外』。いわゆる外交官ナンバーだ。それも特命全権大使が乗車しているであろう車なのだ。
撮影しても問題はないが後々の処理が面倒なので誰も手出ししないのだった。
車から特命全権大使のオースティン・マドセンが降車する。
親日派の彼はマスコミのインタビューに対しいつも笑顔で応えていた。しかし今日は様子が違うようだ。
「大使、今日はどのようなご用件で天白商事へいらしたのでしょう」
報道陣の向けたマイクに手をかざしノーコメントの意を示す。
表情も険しく気やすく声をかけられる雰囲気ではない。
彼は一言も喋らずに天白商事へ入っていった。
応接室のソファーには、天白幸之助社長、専務、オースティン・マドセン大使、通訳の男性が座っている。
「本日は急な申し出に応えて頂きありがとうございます」
「大使館のかたから連絡を頂くのは初めてでして、少々戸惑っておりますが問題ありません。いったいどのようなご用件なのでしょうか」
会話は通訳を介し行われている。
「レイクリスの九十九女王と連絡を取りたいのです。宜しければ連絡手段を教えて頂けないでしょうか」
「申し訳ない。九十九女王から誰にも連絡手段を教えないで欲しいとお願いされております。その申し出には応えられません」
「メレンデス大統領直々の願いなのです」
「九十九女王との信頼関係を壊すような真似はできません」
社長と大使が無言で睨みあう。
「私は日本が大好きです。ですから手荒な真似はしたくない。要求に応じない場合、アメリカでの商売をできなくするとメレンデス大統領が伝えてきました。私は反対です。ですが大統領の命令には逆らえません」
大使が高圧的な態度ならば天白社長も激しく抵抗しただろう、しかし困り顔の大使を見て可哀そうな気持ちになる。
「他国の企業に直接圧力をかけるなど外交上の問題になると思いますが」
「メレンデス大統領は光宗総理を軽んじております。日本政府に頼っても無駄でしょう」
「アメリカとの貿易を全て中断されたとしても、九十九女王との取引により損失の補填は可能なのです。ですからメレンデス大統領の脅しには何の効果もありません」
「メレンデス大統領を甘く見ないでください。貿易制限に効果がないとわかれば第二、第三の圧力をかけるでしょう。どうかここは折れて頂けないでしょうか」
マドセン大使が頭を下げる。
一般企業の社長に特命全権大使が頭を下げるなど異例中の異例なのだ。
天白社長は慌てて、
「頭をお上げください」と言い、深いため息をつく。
「部下ではなく、特命全権大使のあなたが直接来られたのは誠意のある行動だと受け取りました。事を穏便に治めたいという意思が伺えます。無下に断るのは失礼に当たりますし、事態がエスカレートするのも好ましくありません。連絡手段を教えることはできませんが、メレンデス大統領がコンタクトを取りたがっていると、そう九十九女王にお伝えするのはどうでしょうか」
「ナイスな提案です! 九十九女王に判断を任せればメレンデス大統領も天白商事に圧力をかけることはしないでしょう。譲歩して頂き感謝します!」
天白社長とマドセン大使は固い握手を交わしたのだった。
ノミの情報は例の先輩スパイが収集してくれる約束だし、久下部長には口出しするなと釘を刺した。なので彼は気兼ねなくナンパを楽しんでいた。
小井戸沙来が給湯室に入るのを確認してから後を追う。
「またアナタですか」
「名前で呼んで欲しいな~」
「どちら様?」
「ハハッ手厳しいね」
「いい加減しつこいですよ、迷惑しているのがわかりませんか?」
「それは君が僕を知らないからだよ。お互いのことをもっと深く理解すれば楽しい会話に花が咲くはずさ」
「知りたくありませんし、アナタと話をする気もありませんから、どうかお帰り下さい」
「つれないなあ。どうしてそんなに邪険にするんだい?」
「前にも言いましたけど私には好きな人がいます。その人以外は眼中にいません」
「噂は聞いたよ、久崎って言うんだろ。君のアプローチを袖にしているらしいじゃないか。望みの薄い相手よりも、今まさに告白している僕を選ぶのが賢い選択じゃないかな」
「諦めるつもりはありません、私を好きになってもらいます」
「ハハッ、僕と君は同じじゃないか。僕も諦めるつもりはないし、僕を好きになってもらうつもりだ。もし僕を迷惑と言うのなら久崎も同じように迷惑と感じているんじゃないか」
「それはっ……」
「久崎は君を傷つけないように態度に出さないだけで、心の中では激しく拒絶しているかもね。それなのに君は気づかずに、いや、気づいているけど粘着しているんだ。それはプライドだよ。誰もが可愛いと認める君は男性にフラれるなんて我慢ができないんだ。今まで男性にフラれた経験ないんだろ?」
小井戸は応えずにじっと彼を睨んでいる。
「図星だね」
「わ、私は彼が喜ぶことをして好きになってもらいます。アナタのように相手が嫌がることはしません」
「本当に喜んでいるのかい? 彼にお茶を配っているんだろ、その時どんな表情をしてる?」
思い返すと久崎はいつもそっけない態度だ。とても喜んでいるようには見えない。
反論できない彼女は苦々しい表情で彼を睨んでいた。
「これも図星かぁ。ねぇ小井戸さん、君ってもしかすると僕より酷いストーカーかもしれないね。僕は少なからず自覚がある。君が嫌がっているのは理解しつつ、それでも好きだから振り向いてもらう努力をしている。でも君は彼が喜んでいると錯覚している。それはとても危険だ、エスカレートすると彼を傷つけるよ」
「そ、そんなことはありません!」
誰かの足音が聞こえる。
「誰か来たみたいだね。ゆっくり考えるといいよ。じゃまた」
杉沢が去った給湯室で小井戸は呆然と立ち尽くすのだった。
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経理の梅井亜弥がご機嫌なステップで廊下を歩いている。
手には数枚の清算書が握られている。それを書いた社員のもとへ行き修正させるのが彼女の仕事だ。
本来は内線で呼び出し清算書を取りに来させるのだが、彼女は自分から届けに行く。それは社員の事情を考慮しているのではなく単なるサボりだった。
給湯室から出てきた男性社員は備品を積んだ台車を押しながら梅井とすれ違う。
何気なく給湯室を覗くと小井戸が深刻そうな表情で立ち尽くしていた。
その姿をみた梅井はいやらしい笑みを浮かべる。
へぇ~、あの様子は痴情の縺れよね。
大人しい顔して何人もの男性に唾付けてるんじゃない。
これは良いネタができたわ、社内に拡散してあの子の人気を落とすチャンスよ。
……でも言い寄られただけって可能性もあるわね。
いっそのこと給湯室で抱き合っていれば写メしたのに。
あ! あの久崎ってヤツに教えてたらどんな顔するだろ、そっちのほうが面白そうだわ。
梅井は鼻歌を歌いながら久崎が悔しがる顔を想像するのだった。
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久崎は交通費の清算書を経理部へ提出しに来ていた。
経理部の入口には受付箱が用意されており、そこへ清算書を入れておけば係が処理してくれるのだ。
部屋の奥にいる梅井亜弥が視界に入ると、小井戸に謝ったほうが良いと言われたのを思い出した。
確かに言い過ぎたと感じていた久崎は謝ることにする。
「梅井さん、ちょっといいかな」
「あらっ、可愛そうな女に何か御用ですか?」
「その件だけど、あの時はちょっと言い過ぎた、謝ろうと思ってね」
「へぇ~意外だわ。私みたいな嫌な女とは口も聞きたくないんじゃない?」
「嫌だなんて思っていない。俺は人と話すのが苦手でね、あの時は君が話しかけてくれたのが嬉しくて舞い上がってしまったんだ」
「もしかして私に気があるの?」
「いいや全くない。綺麗な女性だとは思うが、好きと言う感情は微塵もない」
「アナタっていちいち癇に障る物言いするのね」
「否定はしない。それで気分を害したのなら申し訳ない、でもこれが俺なんだ」
「ふぅ~ん……。益々わからないわ、どうして小井戸さんはアナタが好きなんだろ」
「それは俺も疑問だ」
「面白いわね。謝りに来たって言ったわよね。こちらの条件を飲んでくれたら許すわ」
「条件を出されるのは納得できないが、いちおう聞こうか」
「夕食を奢りなさい。アナタと少し話がしてみたいわ」
「俺と? まあ、謝罪として飯を奢るのは筋が通っているし、かまわないが。女性が喜びそうな店なんて俺は知らない」
「おっけ~、店は私が選ぶわ、今夜でどお?」
「いいだろう」
二人は携帯端末を取り出し連絡先を交換する。
経理部は女性社員のほうが多い。
二人の会話は一字一句漏らさずに聞かれていた。
久崎が二股をしている、その相手は現ヒロインの小井戸沙来と旧ヒロインの梅井亜弥だ。
その噂は瞬く間に社内に拡散されたのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
シャニーグループ本社ビルの会長室。壁には『覆水不返』と書かれた大きな額縁がかけられている。これは失敗を極度に嫌う会長の性格をよく表していた。
会長は重厚な机の上に肘を置き顔の前で手を組んでいた。不機嫌な時のポーズとして役員の間では有名で、反論などしようものなら即日左遷だ。
廊下に立たされている生徒のように直立不動の姿勢で会長の前に立つ久下竜介。
裁判官の前で死刑宣告を受ける囚人と同じ心境だろう。
「久下君、進捗状況を聞こうか」
「はい。博士と名のっていた少女の名前は九十九ノミ。太平洋に浮上させた陸地を国土とし建国を宣言。国名はレイクリス。九十九女王と接触したと思われる人物は総理大臣と一部の大臣。天白商事の社長と一部の役員です」
「そのような情報はニュースを読めばわかる。君の得た成果を訪ねているのだ」
「はい。探偵を雇い九十九女王に関する情報を収集しましたが成果はありません。また、天白商事へ社員を送り込んでおりますがこちらも有益な情報は得られておりません」
「すると何かね、交渉が難航しているのではなく、まだ連絡手段すら掴めていないと?」
「仰るとおりです」
「予算から既に二億円を消費しておるが、内訳の携帯電話一億円、これはいったい何だ?」
「九十九女王と連絡が取れる携帯電話として購入しました。しかし騙されたらしく連絡は取れませんでした」
「騙されたぁ? 訴えたのかね」
「いいえ。連絡が取れない可能性もあると前置きされたのを承諾し購入したので訴えるのは不可能と判断しました」
「予算をどう使うのか、それは君に与えた裁量権の範疇なら自由だ。ただし、成果が得られた場合に限る。無駄にして良い予算などないのだ」
「仰るとおりです」
「弁解があるのなら聞くが」
「ございません。私なりに粉骨砕身し事に臨んだ結果、ご期待に沿える成果が出せていないのは事実でございます」
久下は深々と頭を下げた。
言い訳などすれば余計に会長を怒らせるのを熟知している。ここは全面謝罪が最善策なのだ。
顔の前で組まれていた手が机の上に置かれる。どうやら怒りは減少したようだ。
「一週間の猶予をやる。もしそれでも成果が出せないときは、一億の携帯の件、役員審議にかける。携帯の販売主と共謀し資金を横領したことになるだろう。もちろんそうなれば懲戒解雇のうえ刑事罰が待っている」
「猶予を頂きありがとうございます」
「成果を期待している」
会長室を出た久下は眩暈で立っていられなくなり、その場に立膝をついて座ってしまう。
一億を回収しなければ横領罪。成果を出せなければ懲戒解雇。そのどちらも一週間で成果を出さなければならない。
心情的にも肉体的にも目の前が暗闇に覆われてしまった彼は、気を失いその場に倒れる。
偶然通りがかった会長秘書に見つかり救護室へ運ばれたのだった。
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お昼の休憩時間。さぼりスパイの杉沢秀一は天白商事近くの定食屋で昼食を取っていた。
相変わらず一緒に食事をしてくれる同僚はいないため一人で食べていた。
マナーモードに設定してある携帯が振動する。発信者の表示は『バカ』。久下部長をそのように登録してあるのだ。
彼は携帯に出ることなく食事を完食する。
支払いを済ませ店を出てから久下部長へ連絡を入れる。
「私ですけど何が御用ですか?」
「杉沢君、悪いニュースだ。会長が期限を指定された。一週間以内に成果が出せない場合私はクビだ」
「そうですか、それはそれはご愁傷様です」
「何を呑気な。君もクビなんだぞ」
「どうも部長はズレてますね。私はすでにシャニーグループに席はないのですよ? クビにできるわけないじゃないですか。せいぜい退職金に上乗せされているスパイ手当が減るぐらいです」
「シャニーグループに戻る気はないのだね」
「逆ですよ。戻す気ははなっから無かったのでしょ? この仕事がリストラを兼ねているのは理解してましたけどね」
「まさか、初めからそのつもりで情報収集していなかったのか!」
「侮らないでください、切り捨てられた身ですが仕事はしてます。僕なりに情報は掴んでいますよ」
「なにっ、早く教えろ!!」
「いくらで買いますか?」
「キサマ~」
「これは脅迫ではありません、正当な取引です。いくらで情報を買い取るのか興味ありますね~。言うなれば部長職の金額なのですから、ご自分がどのくらいの価値があるのか自分で決定できるのです。さぁ、その椅子はいくらですか?」
「一千万払おう」
「シャニーグループの部長が一千万? 年収よりも安いんですか、これはお笑いだ」
「ご、五千万だ、これ以上は出せん」
「まあ良いでしょう。私の銀行口座に振り込んでおいてください、入金が確認できたらお教えしますよ」
プツッと通話が切れてしまう。
久下の手は怒りで震えていた。
「くそっ、くそっ! くそっ!! くそっ!!! 杉沢のくせに足元を見やがって! 絶対に許さない、俺に逆らったことを必ず後悔させてやる!」
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梅井亜弥が久崎を夕食に誘った噂は小井戸沙来の耳にも届いていた。
パソコンのモニターを見ているが、よそ事を考えいるので焦点はあっていない。
梅井さん……、経理部の綺麗な人。
喧嘩の原因は知らないけど久崎さんが怒らせていたわ。
謝罪として夕食を奢るらしいけど、私が謝ったほうが良いって言ったからよね。
はぁ~余計なこと言うんじゃなかった。
竹を割ったような性格で、歯に衣着せぬ言動が男性に人気らしいわ。
子供っぽい私に比べると、大人の女性って感じだし、もしかして久崎さんのタイプなのかしら?
もしそうなら食事の誘いを受けたのも納得。私が何度誘っても断っていたのに、あっさりとOKするんですもの。
どうしよう、二人が親密になるのは嫌――。
高羽部長は彼女の近くに来ると、
「小井戸君、ちょっといいかね」と言い、会議室へと連れていく。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
少し小さな会議室。
四人掛けのテーブルとホワイトボードが置いてある。
二人は椅子に座らずに立ったまま話をしていた。
「久崎が経理の梅井と食事に行く噂は聞いたかい?」
「ええ、まあ」
「君は二股をかけられているんだ」
高羽は久崎のマイナスイメージを強調して彼女の愛を取り戻そうとする。
「それは違います。久崎さんとはお付き合いしていません。それにアプローチをしているのは私のほうですから」
「ヤツを庇うんだね」
「そんな気はないですけど。でも軽い気持ちで女性と付き合う人じゃないです」
「君ほどの美女に言い寄られて気が大きくなってるから他の女性にも手を出すんだよ」
「私に言い寄られても嬉しそうじゃないし、梅井さんには蹴られてましたけどね」
彼女は痛がる久崎の顔を思い出し微笑する。
「なあ、ぱっとしない久崎のどこが良いんだい? 人付き合いが下手で出世の見込み無し。あの歳で平社員。会社に友人はなく。面白い会話のひとつもできない」
「さすが部長、仰る通りだと思います。人付き合いの苦手な人が頑張って会話しようとする姿って可愛く感じませんか? 友人が少ないってことは一緒にいられる時間が長くなるし。平社員なら会社より家庭を大事にしてくれそうです」
高羽が唖然とした表情で固まっている。
「部長よりも、平社員が、良い?」
「少ない収入でも私かまいませんし」
「へ、へぇ~無職でも同じことが言えるかな」
「もしかして久崎さんをクビにしようとか考えています?」
「君の返事次第かな」
前に別れ話を持ち出した時にも左遷をほのめかしていた。咄嗟に思いついたのではなく、彼の人間性から出る言葉なのだと理解する。
「サイテー」
彼女の視線から優しさが消え、怒りの炎が見え隠れする。
「え?」
「見損ないました。立場を利用して脅すなんて信じられません!」
「君が悪いんだろ! 僕を蔑ろにするから」
「正々堂々と男らしさで競い合ってください。魅力的な男性だと証明してください!」
「だから僕は部長でやつは――」
「役職は男性の魅力ではありませんよ。私は祥幸さんの大人の余裕というか包容力にひかれていました。決して部長だから好きになったわけじゃありませんよ。最近のあなたからは余裕が感じられません、まるで怯える子犬です」
「それは君が僕から去ろうとしているからだ」
「交際している女性がいなくなるだけで、どうしてそんなに臆病になるんですか。祥幸さんのほうじゃないですか? 私と交際して気が大きくなっていたのは」
「僕、が?」
「私はあなたを飾る花じゃありません。私がいなくても余裕ある態度を見せてください。もう一度お願いします、私と別れてください」
彼女の目からは決心の硬さが見て取れた。
彼は泣き出しそうな顔を一瞬するが、彼女に言われたのを思い出し、大人の余裕を見せようと平気な顔をする。
「わかった。これ以上みっともない姿を見せると君に嫌われてしまう。だが諦めたわけじゃない。僕は待っている。久崎にフラれたら僕のもとへ戻ってくるといい」
彼は反転し小井戸に背を向ける。
「そうならないよう努力します」
小井戸は深くお辞儀をしてから会議室を後にしたのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
天白商事の本社ビル前に黒塗りの高級車が停車する。
ノミにインタビューしようと待ち構えている報道陣がざわつきカメラを構えるが、誰もシャッターを切ろうとはしない。
青いナンバープレートに〇で囲まれた『外』。いわゆる外交官ナンバーだ。それも特命全権大使が乗車しているであろう車なのだ。
撮影しても問題はないが後々の処理が面倒なので誰も手出ししないのだった。
車から特命全権大使のオースティン・マドセンが降車する。
親日派の彼はマスコミのインタビューに対しいつも笑顔で応えていた。しかし今日は様子が違うようだ。
「大使、今日はどのようなご用件で天白商事へいらしたのでしょう」
報道陣の向けたマイクに手をかざしノーコメントの意を示す。
表情も険しく気やすく声をかけられる雰囲気ではない。
彼は一言も喋らずに天白商事へ入っていった。
応接室のソファーには、天白幸之助社長、専務、オースティン・マドセン大使、通訳の男性が座っている。
「本日は急な申し出に応えて頂きありがとうございます」
「大使館のかたから連絡を頂くのは初めてでして、少々戸惑っておりますが問題ありません。いったいどのようなご用件なのでしょうか」
会話は通訳を介し行われている。
「レイクリスの九十九女王と連絡を取りたいのです。宜しければ連絡手段を教えて頂けないでしょうか」
「申し訳ない。九十九女王から誰にも連絡手段を教えないで欲しいとお願いされております。その申し出には応えられません」
「メレンデス大統領直々の願いなのです」
「九十九女王との信頼関係を壊すような真似はできません」
社長と大使が無言で睨みあう。
「私は日本が大好きです。ですから手荒な真似はしたくない。要求に応じない場合、アメリカでの商売をできなくするとメレンデス大統領が伝えてきました。私は反対です。ですが大統領の命令には逆らえません」
大使が高圧的な態度ならば天白社長も激しく抵抗しただろう、しかし困り顔の大使を見て可哀そうな気持ちになる。
「他国の企業に直接圧力をかけるなど外交上の問題になると思いますが」
「メレンデス大統領は光宗総理を軽んじております。日本政府に頼っても無駄でしょう」
「アメリカとの貿易を全て中断されたとしても、九十九女王との取引により損失の補填は可能なのです。ですからメレンデス大統領の脅しには何の効果もありません」
「メレンデス大統領を甘く見ないでください。貿易制限に効果がないとわかれば第二、第三の圧力をかけるでしょう。どうかここは折れて頂けないでしょうか」
マドセン大使が頭を下げる。
一般企業の社長に特命全権大使が頭を下げるなど異例中の異例なのだ。
天白社長は慌てて、
「頭をお上げください」と言い、深いため息をつく。
「部下ではなく、特命全権大使のあなたが直接来られたのは誠意のある行動だと受け取りました。事を穏便に治めたいという意思が伺えます。無下に断るのは失礼に当たりますし、事態がエスカレートするのも好ましくありません。連絡手段を教えることはできませんが、メレンデス大統領がコンタクトを取りたがっていると、そう九十九女王にお伝えするのはどうでしょうか」
「ナイスな提案です! 九十九女王に判断を任せればメレンデス大統領も天白商事に圧力をかけることはしないでしょう。譲歩して頂き感謝します!」
天白社長とマドセン大使は固い握手を交わしたのだった。
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