1 / 6
①
しおりを挟む
どこだ、ここは?
どこかの建物の中ということはかろうじてわかったが、暗くて室内の様子はよく見えない。
ぼんやりとした浮遊感、なのに脳髄の一点に妙な冴えがある。ああ、まただと理解する。おれはまた、近い未来の夢を見ているんだな。
さて、今度は何が起こるやら。割と呑気に構えていると、薄闇の中にぼんやりと人の姿が浮かび上がった。女だ。それも若い。うちの高校の制服をきている。
ややあってそれは俺が所属する美術部の同級生、細川珠希だと気づいた。黒髪を頭の後ろで束ねたポニーテール。眉毛が濃く、眼は吊り上がり、頬にはそばかすが浮かんでいる。美少女というほどではないがその容貌からは超然とした雰囲気が漂っていて、彼女の隠れファンは校内に結構多い。かく言う俺も白状すれば、彼女目当てで美術部に入ったのだ。
細川は腰が抜けたかのように床にへたりこんでいた。普段は気が強い性格を象徴するような凛々しく尖っている眼が、今は大きく見開かれている。顔は薄闇の中でも見分けがつくほど蒼ざめ、唇は震えている。この夢には音が存在しないが、歯がカチカチと鳴る音が聞こえてくるようだ。間違いなく彼女は恐怖しているのだ。
俺は慌てた。一体どうした!? 何が細川を、ここまで怯えさせているのか。
疑問はすぐ氷解した。細川の後ろから、誰かがじりじりと迫っていた。暗くてその顔はよく見えないが、うちの高校の男子の制服を着ていた。背格好や雰囲気からも、女子とはまず考えられない。肩が上下しているのは、呼吸が激しいせいだろう。疲労しているのか、興奮しているのか。明らかに尋常な様子ではない。
細川の口が動いた。何か言っているようだが、当然その声は聞こえない。誰かに助けを求めたのか?
やがて男は細川の真後ろまできて立ち止まると、おもむろに左手を振り上げた。手に握っているものが、薄闇の中で光った。ナイフだ、と思った。細川は恐怖で固まっているのか、まるで動く様子はない。男は鋭利な刃物を持った左手を、細川めがけて振り下ろし……
そこで目が覚めた。俺は自室のベッドの上にいた。カーテンの隙間からはすでに朝の陽光が差し込んでいる。傍らのデジタル時計を見ると、月曜日のAM6時50分。
パジャマが汗で濡れている。今見た夢の感じ……間違いない、と思った。
大変だ。近い未来、細川珠希は何者かに殺されてしまう!
どこかの建物の中ということはかろうじてわかったが、暗くて室内の様子はよく見えない。
ぼんやりとした浮遊感、なのに脳髄の一点に妙な冴えがある。ああ、まただと理解する。おれはまた、近い未来の夢を見ているんだな。
さて、今度は何が起こるやら。割と呑気に構えていると、薄闇の中にぼんやりと人の姿が浮かび上がった。女だ。それも若い。うちの高校の制服をきている。
ややあってそれは俺が所属する美術部の同級生、細川珠希だと気づいた。黒髪を頭の後ろで束ねたポニーテール。眉毛が濃く、眼は吊り上がり、頬にはそばかすが浮かんでいる。美少女というほどではないがその容貌からは超然とした雰囲気が漂っていて、彼女の隠れファンは校内に結構多い。かく言う俺も白状すれば、彼女目当てで美術部に入ったのだ。
細川は腰が抜けたかのように床にへたりこんでいた。普段は気が強い性格を象徴するような凛々しく尖っている眼が、今は大きく見開かれている。顔は薄闇の中でも見分けがつくほど蒼ざめ、唇は震えている。この夢には音が存在しないが、歯がカチカチと鳴る音が聞こえてくるようだ。間違いなく彼女は恐怖しているのだ。
俺は慌てた。一体どうした!? 何が細川を、ここまで怯えさせているのか。
疑問はすぐ氷解した。細川の後ろから、誰かがじりじりと迫っていた。暗くてその顔はよく見えないが、うちの高校の男子の制服を着ていた。背格好や雰囲気からも、女子とはまず考えられない。肩が上下しているのは、呼吸が激しいせいだろう。疲労しているのか、興奮しているのか。明らかに尋常な様子ではない。
細川の口が動いた。何か言っているようだが、当然その声は聞こえない。誰かに助けを求めたのか?
やがて男は細川の真後ろまできて立ち止まると、おもむろに左手を振り上げた。手に握っているものが、薄闇の中で光った。ナイフだ、と思った。細川は恐怖で固まっているのか、まるで動く様子はない。男は鋭利な刃物を持った左手を、細川めがけて振り下ろし……
そこで目が覚めた。俺は自室のベッドの上にいた。カーテンの隙間からはすでに朝の陽光が差し込んでいる。傍らのデジタル時計を見ると、月曜日のAM6時50分。
パジャマが汗で濡れている。今見た夢の感じ……間違いない、と思った。
大変だ。近い未来、細川珠希は何者かに殺されてしまう!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる