76 / 135
-
しおりを挟む
正直に言うと、倖と一緒に昼食をとることに慣れつつあったので、またこうして一緒にお昼できるのは、嬉しい。ただ、あの件でものすごく迷惑をかけてしまったのと、一週間近く目を合わすこともなかったので、多少居心地が悪いのも確かだ。
あの時あの駅で軽く謝っただけで、しっかりと謝罪はしていない。帰りの道々に何度か口を開こうとしたのだが、倖の纏う空気の重苦しさに負けて、結局お互いに一言も喋ることはなかったのだ。
そしてそれからの一週間は言わずもがな。
きっと、今がチャンスだ。
りんは意を決して倖に向き直った。
「あ、あの!」
「ん?」
「あの、先日は、私が勘違いしたばっかりにご迷惑をおか」
「いやいいからそれはもう。」
途端に倖はぴしゃりとりんを遮り早口でまくしたてると、ギンと一際強くりんを睨んだ。倖が右手に持っていたツナマヨパンが軽くひしゃげた。
「いいんですか?ホントに?それって、だって、」
それは、いいってことは許してくれるって、ことなのだろうか。りんは倖をひたと見つめる。
倖はゴックンとパンを飲み込むと少し怯んだようにりんを見返してきた。
この人の行動と考えていることがよめない。あんな事があったのだから、怒って当然だ。そうしてここ最近の倖の態度から怒っていると思っていたし、だから、わかりやすく避けられているのだと思った。
それならそれで、また以前と同じ状態に戻るだけ。
それでよかった、のだけれど。
倖はまたこうしてりんの目の前でパンを食べている。
もう、怒っていないのだろうか?それともまたなにか、聞きたいことやしてほしいことがあるのだろうか?もやもやすることこの上ない。
りんは再度、口をひらいた。
「あの、怒ってないんですか?」
「あん?」
「怒ってしまったから、この一週間わたしを避けてたんですよね?」
「……怒ってはないけど、お前見る度に多少はむかついてたから、まぁ、……確かに避けてたかな。」
「……その節は、本当に申し訳ありませんでし」
「だっからいいってそれはもう!」
がしがしと頭をかきむしりながら倖が言った。
「あー、ほら、あれだよ、俺も若いからっつうか、なんていうか、……ここんとこ、無視してて悪かったな。……ムカついたからといって、取っていい態度じゃなかった。」
思いがけず倖の謝罪を受けて、りんはそっぽを向いている倖をあんぐりと凝視した。
箸の間からポロリとじゃがいもが落ちる。
「い、いえいえ!私も悪かったわけですから!」
「だよな。」
りんが慌てて言えば、すかさず倖が肯定する。
自分の口から出た言葉だったが、即頷かれると多少ムッとする。
「だから、まぁ、相子ってことで。」
これからもよろしくぅ、と倖は右手をさし出してくる。りんは箸を置くと、こちらこそ、と、とりあえず握手した。
そういえば、前にもこんなことあったな、とぼんやりと思いだしながら、落ちたじゃがいもをティッシュにくるんだ。
あの時あの駅で軽く謝っただけで、しっかりと謝罪はしていない。帰りの道々に何度か口を開こうとしたのだが、倖の纏う空気の重苦しさに負けて、結局お互いに一言も喋ることはなかったのだ。
そしてそれからの一週間は言わずもがな。
きっと、今がチャンスだ。
りんは意を決して倖に向き直った。
「あ、あの!」
「ん?」
「あの、先日は、私が勘違いしたばっかりにご迷惑をおか」
「いやいいからそれはもう。」
途端に倖はぴしゃりとりんを遮り早口でまくしたてると、ギンと一際強くりんを睨んだ。倖が右手に持っていたツナマヨパンが軽くひしゃげた。
「いいんですか?ホントに?それって、だって、」
それは、いいってことは許してくれるって、ことなのだろうか。りんは倖をひたと見つめる。
倖はゴックンとパンを飲み込むと少し怯んだようにりんを見返してきた。
この人の行動と考えていることがよめない。あんな事があったのだから、怒って当然だ。そうしてここ最近の倖の態度から怒っていると思っていたし、だから、わかりやすく避けられているのだと思った。
それならそれで、また以前と同じ状態に戻るだけ。
それでよかった、のだけれど。
倖はまたこうしてりんの目の前でパンを食べている。
もう、怒っていないのだろうか?それともまたなにか、聞きたいことやしてほしいことがあるのだろうか?もやもやすることこの上ない。
りんは再度、口をひらいた。
「あの、怒ってないんですか?」
「あん?」
「怒ってしまったから、この一週間わたしを避けてたんですよね?」
「……怒ってはないけど、お前見る度に多少はむかついてたから、まぁ、……確かに避けてたかな。」
「……その節は、本当に申し訳ありませんでし」
「だっからいいってそれはもう!」
がしがしと頭をかきむしりながら倖が言った。
「あー、ほら、あれだよ、俺も若いからっつうか、なんていうか、……ここんとこ、無視してて悪かったな。……ムカついたからといって、取っていい態度じゃなかった。」
思いがけず倖の謝罪を受けて、りんはそっぽを向いている倖をあんぐりと凝視した。
箸の間からポロリとじゃがいもが落ちる。
「い、いえいえ!私も悪かったわけですから!」
「だよな。」
りんが慌てて言えば、すかさず倖が肯定する。
自分の口から出た言葉だったが、即頷かれると多少ムッとする。
「だから、まぁ、相子ってことで。」
これからもよろしくぅ、と倖は右手をさし出してくる。りんは箸を置くと、こちらこそ、と、とりあえず握手した。
そういえば、前にもこんなことあったな、とぼんやりと思いだしながら、落ちたじゃがいもをティッシュにくるんだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
おもいでにかわるまで
名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。
高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。
第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。
主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。
失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる