OH MY CRUSH !!

文月 七

文字の大きさ
77 / 135

しおりを挟む
 その様子をパンを食べながら見ていた倖は、やおら咳払いをすると、それはそうと、とあからさまに不自然な話題転換をしてきた。してきたくせに、なかなかその先を話そうとしない。
 倖はしばし視線をうろうろと彷徨わせた後、意を決したように口を開いた。
「あ、のさ、おまえ、ちょっと、眼鏡取ってみ。」
「え?」
 予想外にして唐突すぎる倖の頼みにりんは目を丸くした。
「眼鏡、ですか?」
「そう、眼鏡。」
 パンを握りしめたまま身を乗り出してくる倖にたじろぎつつ、めがね、と口の中でつぶやく。
「眼鏡、って、私のめがねですか。」
「おまえの鼻にかかってる眼鏡以外の眼鏡をお前に外してくれと頼むわけないだろ。」
「……。」
 またどうして急に眼鏡の話しになるのか。流れからしても少し飛躍しすぎではないか、と思ったとき、もしかして、とりんは閃く。
「……急にまたお昼ご飯一緒に食べようとしてきたのって、眼鏡取らせることが目的ですか。」
「……んなわけないだろ。」
「目そらして言ったって説得力ありませんよ。」
 りんはその倖の様子にため息をついた。
 前回は想い人の捜索のために、今はりんに眼鏡をとらせるために話しかけてきたというわけだ。
 特に今回は理由が全く意味不明で、気味が悪い。
 ……いや、前回の連絡先騒動のときも意味不明で気味が悪かったが。
「眼鏡、あんまり取りたくないんですよね。」
 倖はギュッと眉根に皺をよせて黙り込む。
「理由はなんですか。また言いたくないとか言いませんよね?……もしかして人捜しの延長ですか?」
「……延長といえば、延長なんだけどな。あー、のだな、彼女が、お前の家に入っていったのは、間違いないんだよ。」
「その件については、知らないって、」
「まぁ、聞けって。だからさ、ということは、その彼女がお前じゃないかって、柴田が言うから。念の為素顔を見とこうかと。」
 何だ、そんなことか、とりんは大いに脱力した。
「残念ながら、倖くん。ありえません。」
「うん俺もそう思う。」
「……怒りますよ。」
 倖はわたわたと手を振って、違う、と付け足した。
「99パーないと思うんだけど、可能性を一個一個潰してるというか、何というか、ほら、お前のいとこも違ったし……他に、もう、できることもないし。」
 りんは腕組みをして倖を凝視した。藁にもすがる、というやつだろうか。できれば協力してあげたいが、よりにもよって眼鏡を外せ、とは。
 頭が痛い。
「……できれば、外してあげたいところなんですが、無理です。」
「なんで。ちょちょいと外すだけじゃん。」
「……いやです。」
「変な顔でも笑わんから。」
「怒りますよ。」
 りんは俯くと箸を手にとり食事を再開する。
「かわいくないのは、自分でよくわかってます。」
 そう、前の学校でも散々からかわれてきたのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

おもいでにかわるまで

名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。 高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。 第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。 主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。 失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

処理中です...