104 / 135
-
しおりを挟む
「……ありがとうね、……あんた意外性のある男だね。」
「何で意外なんだよ。……これ、洗濯機動くか?脱水する時、蓋でロックかからないとエラーになって動かなかった気がするけど。」
「蓋が外れたくらいで動かなくなるなんてあるかね。」
「最近のは安全性を重視してっから、たぶん。」
「安全ねぇ、……ま、いいよ、とりあえず明日朝洗濯してみりゃわかるさ。」
それに倖は頷いて、床に落ちていた洗濯ばさみやハンガーを片づける。
「明日また寄るから、店に。もし動かなかったら直せないか見てみるよ。」
その言葉に再度ばあさんは驚いた顔をして、意外だねぇ、と呟く。
「……だから、何で意外なんだよ。」
しつこく繰り返される質問に倖は脱力する。ばあさんは決まり悪そうにそっぽを向いた。
「……あんたみたいな髪の子に、あんまりいい思い出、なくてね。」
そう、ばあさんは苦しそうに俯いて言った。
「せっかく買いに来てくれてるのに、嫌な態度とって、悪かったね。わかっちゃいるのに、なかなか難しいよ。……あんたは何にも悪くないのは、わかってるんだがねぇ。」
洗濯機は気にしなくてもいいよ、とため息を一つこぼしてばあさんは後ろ手に手を振って勝手口から店へと戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら、チラリともう一度洗濯機へと目をやる。今、脱水だけしてみたら動くかどうかはすぐに分かると思うのだが、ばあさんの態度が気になってやめた。
それに、話をするいい口実になる。あの匍匐前進する幽霊のことが、わかるかもしれないし。
しかし洗濯機、本気で壊れてたらどうするか。
弁償するとなったら、安くても5万近くはするかもしれない。
……親父に相談してみるか。
怒られんだろうなぁ、と肩を落とす。本当だったら、あの佐藤と料金折半したいくらいなのだが。
倖は佐藤の顔を思い出すと、むかつく気持ちを押さえきれずブロック塀を思わず蹴りつける。
佐藤の言ってたことは、本当なのだろうか。
あいつが、眼鏡とったら美少女系、ってやつ。
こうなると本格的に、一刻も早く素顔を拝みたいが、いかんせん連戦連敗中である。眼鏡のめの字でも言おうものなら、思いっきし距離を取られかねない。
なるだけ自然に、偶然を装い眼鏡を外す手だてがないものか。
路地から出ると、視界がオレンジに染まる。いつのまにか太陽が沈みつつある時間帯になっていた。
なんて1日だ。
幽霊見て、ストーカーと一悶着して、他人様の洗濯機を壊した。
目を細めて日が沈む方角を見ながら、とりあえず帰宅した後、親父になんて切り出そうと、倖は頭を悩ますのだった。
「何で意外なんだよ。……これ、洗濯機動くか?脱水する時、蓋でロックかからないとエラーになって動かなかった気がするけど。」
「蓋が外れたくらいで動かなくなるなんてあるかね。」
「最近のは安全性を重視してっから、たぶん。」
「安全ねぇ、……ま、いいよ、とりあえず明日朝洗濯してみりゃわかるさ。」
それに倖は頷いて、床に落ちていた洗濯ばさみやハンガーを片づける。
「明日また寄るから、店に。もし動かなかったら直せないか見てみるよ。」
その言葉に再度ばあさんは驚いた顔をして、意外だねぇ、と呟く。
「……だから、何で意外なんだよ。」
しつこく繰り返される質問に倖は脱力する。ばあさんは決まり悪そうにそっぽを向いた。
「……あんたみたいな髪の子に、あんまりいい思い出、なくてね。」
そう、ばあさんは苦しそうに俯いて言った。
「せっかく買いに来てくれてるのに、嫌な態度とって、悪かったね。わかっちゃいるのに、なかなか難しいよ。……あんたは何にも悪くないのは、わかってるんだがねぇ。」
洗濯機は気にしなくてもいいよ、とため息を一つこぼしてばあさんは後ろ手に手を振って勝手口から店へと戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら、チラリともう一度洗濯機へと目をやる。今、脱水だけしてみたら動くかどうかはすぐに分かると思うのだが、ばあさんの態度が気になってやめた。
それに、話をするいい口実になる。あの匍匐前進する幽霊のことが、わかるかもしれないし。
しかし洗濯機、本気で壊れてたらどうするか。
弁償するとなったら、安くても5万近くはするかもしれない。
……親父に相談してみるか。
怒られんだろうなぁ、と肩を落とす。本当だったら、あの佐藤と料金折半したいくらいなのだが。
倖は佐藤の顔を思い出すと、むかつく気持ちを押さえきれずブロック塀を思わず蹴りつける。
佐藤の言ってたことは、本当なのだろうか。
あいつが、眼鏡とったら美少女系、ってやつ。
こうなると本格的に、一刻も早く素顔を拝みたいが、いかんせん連戦連敗中である。眼鏡のめの字でも言おうものなら、思いっきし距離を取られかねない。
なるだけ自然に、偶然を装い眼鏡を外す手だてがないものか。
路地から出ると、視界がオレンジに染まる。いつのまにか太陽が沈みつつある時間帯になっていた。
なんて1日だ。
幽霊見て、ストーカーと一悶着して、他人様の洗濯機を壊した。
目を細めて日が沈む方角を見ながら、とりあえず帰宅した後、親父になんて切り出そうと、倖は頭を悩ますのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
おもいでにかわるまで
名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。
高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。
第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。
主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。
失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる