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倖は勢いよく顔を真横にそむけてそこにあった柱に額を打ちつけた。そばにいた3人組みのお姉さん達が驚いて、大丈夫ですか、と声をかけてきていたが、全く耳に入ってこなかった。
柱に取りつけられた試着用の鏡に、耳まで真っ赤になった自分の顔が映っているのを目にすると、倖はたまらず両手で顔を覆った。
あの子だった。
あの子、だった!
あの、子、だった!!
嬉しい。
それはもう心臓が破裂しそうなほどに。
しかし、だからといって果たしてどんな態度でりんと顔を合わせればいいというのか。
いや、顔あわさずにいっそのこと帰るか。
え、どうしよう。
ボロボロと涙をこぼしながら慶に抗議しているりんをよそに、倖は1人柱の陰で身悶えしつづけた。
そんな倖にひいたのか、3人組みのお姉さん達が、かっこいいのにちょっと可哀想、とかひどく失礼なことを呟きながら離れていくのがチラリと見える。
あ、逃がした。
一瞬顔をあげて冷静にそう思ったが、あの子の前で3人のお姉さんをお持ち帰りすれば、きっと彼女との未来はないので、これで良かったのだと、また柱に寄り添った。
いやいや、彼女との未来って、あいつ林田りんだから。
未来もくそもない。
ん?林田りんはあの子だから、未来はないと困るわけで、でも林田りんだから、えっと……。
混乱の極地に至り再度洗面台の方へと視線をやれば慶がふんぞり返ってドヤ顔をしている。
……あいつ、最初から知ってやがったな。
なんて意地の悪いやつだ。
りんはその慶の前ですでに縁なしの眼鏡を装着してこぼれた涙を拭いていた。
それを見て倖は一気に脱力する。
……何で眼鏡かけただけで、あそこまで顔変わるんだ。
充血してしまった左目を鏡で確認しているりんは、打って変わってしょぼい目ん玉の下瞼を引っ張って眼球を確認していた。
引っ張ったところで先程の、あの大きくて可愛い瞳には欠片も及ばないが。
赤い目で振り返ったりんは、例えようもなくいつものりんだった。
へらりと笑って、終わりました、と口パクで伝えてくるりんに、ぎこちなく右手を少しだけあげる。
笑えばいいのか、いつもみたいにぶすくれていればいいのか、どうすればいいのか。
ただ今の自分の状況としては、この動揺を一切りんに知られたくなかったので、必死に無表情を装う。
無表情に、なっててほしい。
慶に何やら話しかけているりんを見ながら、倖はまた柱に頭をつけた。
『だって、もう可能性としてはそれくらいしかなくね?
眼鏡とったら、美少女系ってやつ。』
『君知らなかったの?
そこら辺のアイドルなんか目じゃないよ、あの子。』
柴田と佐藤の声が重なり、脳内で再生される。
同時に、ほらな!とふんぞり返るだろう柴田の姿も。きっと佐藤ですら得意気に倖を見下すに違いない。
あぁ、だけど、柴田にだけは、言いたくない。
りんと慶の話し声を遠くに聞きながら、倖は渋面で目をつぶったのだった。
柱に取りつけられた試着用の鏡に、耳まで真っ赤になった自分の顔が映っているのを目にすると、倖はたまらず両手で顔を覆った。
あの子だった。
あの子、だった!
あの、子、だった!!
嬉しい。
それはもう心臓が破裂しそうなほどに。
しかし、だからといって果たしてどんな態度でりんと顔を合わせればいいというのか。
いや、顔あわさずにいっそのこと帰るか。
え、どうしよう。
ボロボロと涙をこぼしながら慶に抗議しているりんをよそに、倖は1人柱の陰で身悶えしつづけた。
そんな倖にひいたのか、3人組みのお姉さん達が、かっこいいのにちょっと可哀想、とかひどく失礼なことを呟きながら離れていくのがチラリと見える。
あ、逃がした。
一瞬顔をあげて冷静にそう思ったが、あの子の前で3人のお姉さんをお持ち帰りすれば、きっと彼女との未来はないので、これで良かったのだと、また柱に寄り添った。
いやいや、彼女との未来って、あいつ林田りんだから。
未来もくそもない。
ん?林田りんはあの子だから、未来はないと困るわけで、でも林田りんだから、えっと……。
混乱の極地に至り再度洗面台の方へと視線をやれば慶がふんぞり返ってドヤ顔をしている。
……あいつ、最初から知ってやがったな。
なんて意地の悪いやつだ。
りんはその慶の前ですでに縁なしの眼鏡を装着してこぼれた涙を拭いていた。
それを見て倖は一気に脱力する。
……何で眼鏡かけただけで、あそこまで顔変わるんだ。
充血してしまった左目を鏡で確認しているりんは、打って変わってしょぼい目ん玉の下瞼を引っ張って眼球を確認していた。
引っ張ったところで先程の、あの大きくて可愛い瞳には欠片も及ばないが。
赤い目で振り返ったりんは、例えようもなくいつものりんだった。
へらりと笑って、終わりました、と口パクで伝えてくるりんに、ぎこちなく右手を少しだけあげる。
笑えばいいのか、いつもみたいにぶすくれていればいいのか、どうすればいいのか。
ただ今の自分の状況としては、この動揺を一切りんに知られたくなかったので、必死に無表情を装う。
無表情に、なっててほしい。
慶に何やら話しかけているりんを見ながら、倖はまた柱に頭をつけた。
『だって、もう可能性としてはそれくらいしかなくね?
眼鏡とったら、美少女系ってやつ。』
『君知らなかったの?
そこら辺のアイドルなんか目じゃないよ、あの子。』
柴田と佐藤の声が重なり、脳内で再生される。
同時に、ほらな!とふんぞり返るだろう柴田の姿も。きっと佐藤ですら得意気に倖を見下すに違いない。
あぁ、だけど、柴田にだけは、言いたくない。
りんと慶の話し声を遠くに聞きながら、倖は渋面で目をつぶったのだった。
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